はじめまして!サイバーエージェントの子会社として設立しました株式会社トルテにてデザイナーを担当していますスワンこと白鳥(@shiratoriyurie)です。今回は、サイバーエージェントのメディア管轄において、新しい取り組みとして始まった読書を推進する「しらとり文庫」についてお話したいと思います。
さて技術者のみなさま、普段から読書をしていますか?
普段はペーパーレス派の方も多い業界ではありますが、意外にも技術者は読書が好きな人が多いように思います。新しい情報はどこよりも早くネットで流れてくる世の中になりましたが、どれだけ時代が変わろうとふとしたとき私たちに気づきや教訓を与えてくれるのはやはり本です。
そんな私自身ももちろん読書が大好きなのですが、そのきっかけは大学時代にフロントやデザイン、マーケティングの齧りの本などで独学で勉強をし始めたことでした。当時、本を買って読めば世の中大抵のことは何でもわかるし、それを活かせば人生なんでも出来ると思っていました(笑)
そんな中で、以前自分のブログでも紹介しましたが「夢をかなえるゾウ」という本に出てくるお気に入りのフレーズがこちら。
「仕事、お金、人間関係、幸せ・・・・ 人間の悩みなんちゅうのはいつの時代も同じや。そんで本ちゅうのは、これまで地球で生きてきた何億、何十億ちゅう数の人間の悩みを解決するためにずっと昔から作られてきてんねんで。その『本』でも解決できへん悩みちゅうのは何なん?自分の悩みは地球初の、新種の悩みなん?自分は悩みのガラパゴス諸島なん?」
初めてこのフレーズを読んだ時、単純ですがあまりの衝撃に「一生本の虫になろう!!!」と自分の中で何か変な熱が生まれたのをいまでも覚えています(笑)今となっては紙だけでなく電子書籍の復旧もあり形式は変わりつつありますが、本を読む機会自体は増えるばかりの日々を過ごしています。
しらとり文庫の導入のきっかけ
さて話が少しそれましたが、もともとサイバーエージェントでは技術書を勉強のための経費として自由に購入する支援制度がありました。しかし、今回さらにそれを活性化するために新しい仕組みとして「しらとり文庫」という図書委員会を発足しました。
参考図書を経費で落とせるのはインターネットに関わる会社としてはそこまで珍しくないかもしれませんが、やはり現場からするとわがままな話ではありますがやはりネックになるのは経費精算を通す手間でした。
この本が読みたい、という衝動は突発的なことが多いです。誰かのブログに触発されたり、何か新しい技術を身につけたくなったり、話題の書籍だったりと理由は様々ですがどれもこれも心に思うのはいますぐ読みたいということです。
しかしいくら参考書籍代が出るとはいえ、会社の経費精算フローが介入することによって一歩気後れすることはどうしても否めません。実は私自身もついつい面倒くさくて「まあこれくらいなら良いか」と思ってぽちぽち買った参考書が月に3万円を超えたりして、初めて制度を利用しようと考え出したくらいです(笑)
そこでしらとり文庫では個人の稟議や経費精算というフローすらふっ飛ばし、書籍を共有資産とする代わりとしてとにかく簡単な書籍購入フローを導入する決議しました。ちなみにこれは事業部全体で現場の声からあらゆる組織改善を行うために行われた「キリン会議」という取り組みにてエンジニアから発案され、採決されたものです。
それではどのようなフローで書籍の購入ができるかというと、今年全社的にも導入されたSlackの活用でした。 まず専用チャンネル参加してもらい、そこで購入したい書籍のAmazonのリンクを送るだけで図書委員が代理で購入を行い、自動的に共有資産として購入処理されます。なので社員はAmazonのリンクを送る、たったそれだけです。そして入荷された本はオフィス内に新設されたリラクゼーションスペースの本棚へ追加され、社員であれば誰でも自由に本を読めるという流れです。
しらとり文庫を作ってよかったこと
「あ、今あの本が読まれてるんだ」
「あの人が読んでるなら私も読もうかな」
本に対するアンテナの張り方は、本当に人それぞれです。 自分の分野に特化して読み漁る人もいれば、手広くいろんなジャンルを読んだり、はたまたチームビルディングなどより開発を大きく捉えるような実用書が好きな方もいます。一人の趣向だとどうしても同じような本を買いがちですが、それが他人のものと混ざり合うことによって思いがけない発見や新しい扉を開くきっかけにもなります。
またリラクゼーションスペースに本棚を設置していることもあり、コーヒーを飲みながら本を選んでいると「あ、いま何読んでるんですか?」なんて自然な気軽なコミュニケーションが生まれることも増えました。
献本制度でコストも削減
図書館を作る上で、ひとつの懸念点は本の質と量の確保でした。
いきなり数千冊の本を買うのは選出も大変だし、なによりどんな本をみんなが求めているかは実際に運用してみないとわからない点も多くあったからです。
そこでしらとり文庫ではまず最初にベースとなる一定の本を委員会で選出/購入しつつも社内で溢れていた放置されている技術本を回収。且つ個人寄贈による献本制度を導入しました。個人で所有している技術書などを、文庫コーナーに置かれている献本BOXに入れてもらうだけで共有資産として寄贈され活用するというものです。献本は委員会で定期的に回収・チェックしよほど古くて役に立たないであろうものはしっかり除外し、随時本棚へ追加されています。
いくら自分で買った本とはいえ「1回読めば十分な初見本」や「新卒時代に1度は見て欲しい本」などずっと持たなくて良いもの、時間が経つと不要になる本はどの分野にも存在します。もちろん中にはずっと手元に置いておきたい本もあることもありますが、手元に増えるとそれだけで重くて大変だったり宝の持ち腐れになることも多いです。
実際に募集を始めてみると思ったよりも定期的に量が集まり、「みなさん最近はこんな本や分野に興味があるんだなあ〜」と気づかされることもあります。みなさんの興味の傾向を知りつつ、コストも削減できてまさに一石二鳥でした。
UIデザイナーが選ぶおすすめ図書3選
さてここまでしらとり文庫についてのお話をさせて頂きましたが、最後に私から独断と偏見でオススメの本をご紹介したいと思います(笑)
1.誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論
デザイン業界では言わずと知れた超鉄板の良書。にも関わらず初版がかなり古いので意外と読んだことない人もいるのが「勿体無い!!!」と思ってしまうので改めてオススメさせていただきます。 認知心理学をベースとし、「デザインとは何か」「なぜデザインなのか」「そもそも人はデザインをどのように知覚し反応/行動しているのか」その根幹をひとつひとつ紐解いていく一冊です。
25年の月日を経ても愛され続けた濃厚な内容に加え、2015年に増補・改訂された版が出たことにより若手にも読みやすい、時代遅れだった内容の部分も綺麗に現代に置き換えられたり、当時との比較もすごく面白い。 デザイナーに関わらずものづくりに関わる人なら一度は読んでほしい1冊です。
2.WEB制作者のためのGITHUBの教科書 チームの効率を最大化する共同開発ツール
「黒い画面とか怖くて触れない!」
「エンジニアさんがよく使ってるけどプッシュとかプルリクって実際なんなの…?」
そんな非エンジニアの「怖い!」を払拭してくれるオススメのGithub入門書がこちら。
SVN(Subversion)をはじめとしてGithubの活用などデザイナーの間でもバージョン管理が浸透しつつもありますが、どうにもとっつきにくい…と頭を悩める人も少なくないのではないのでしょうか? 私自身も仕事で導入する際にちんぷんかん過ぎて何度もエンジニアさんに助けを求めたことか分かりません…(笑)
そんな中、最低限の「こことここを押せばいいんだ」と付け焼き刃の知識で使っているとある日、原因不明のエラーが出た瞬間にどうしようもなくなることが何度もあり、改めてきちんと仕組みを理解しようとお世話になったのがきっかけの1冊でした。
とにかく非エンジニア目線でどこまでも優しく解説してくれているのが嬉しく、黒い画面をちょっと触ってみようかなと思うきっかけを与えてくれます。Githubを使ってみたいけどためらっている、なんとなく使っているけどもっと活用したい!というデザイナーやプロデューサー、ディレクターの方にオススメです。
3.デザイニング・マルチデバイス・エクスペリエン ―デバイスの枠を超えるUXデザインの探求
一人が複数のデバイス(PC、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス)を持つに当たってサービスはどのような体系に在るべきか、また今後にいかに広い可能性とデザインする余地があるかをずば抜けて気持ち良く解説してくれた、なんとなくデザイナーが認識つつも言語化できていない部分をすっきりさせてくれる目から鱗の一冊。昨今では当たり前となっているクロスデバイスによるサービスにおいても明確な考察と分類がされており、自分たちのサービスのあり方についてもっとも気づかされることが多い内容ばかりです。
昨今では、サービスを作る際に「スマートフォンはPCの全てを提供せずに一部のみに絞る」というのが当たり前の風潮になっている。が、「何故そうすべきなのか?」という問いに対して多くの人が考えるのは「画面サイズ的に小さくて使いずらいから」か「そもそもスマートフォンではその機能は使わないだろう」という2点ではないだろうか。もちろんどちらも正解ではあるが、これは複数のデバイスにおいてサービスを提供する上でのほんの一部の選択肢にすぎないことを知りました。
さいごに
いかがだったでしょうか?
本を読むことは個人だけでなく、チームや会社にとっても非常に大きな効果があります。且つそれを促し合える様な環境づくりはとても大切で、今回しらとり文庫が導入できたことは大きな変化へとつながるひとつのきっかけとなったように思います。
これからもインプットを大切に、楽しい読書ライフを送るきっかけになればと思います!
それではまた!