はじめまして。株式会社アプリボットで「BLADE XLORD―ブレイドエクスロード―」のメインイラストレーターを担当した松尾です。

今回のブログは、サイバーエージェントでのこれまで経験を内定者時代から振り返り、僕が今大切にしている事についてお話させていただきます。

※この記事は、これからイラストレーターとして会社で頑張ろうと思っている学生のみなさまや、入社されてまだ間もない若手の方に向けて伝えたい内容となっています!

想いを伝える大切さを学んだ学生時代

僕は2017年に新卒としてサイバーエージェントに入社しました。内定は入社の1年程前から頂いており、その少し前から社内のアートスタジオでアルバイトをしていました。

当時配属されたアートスタジオと開発オフィスの間には物理的な距離があり、イラストレーターが目の前の作業に集中できるような環境が整えられていました。

業務内容としては、キャラクターデザインやカードイラストの制作を担当させて頂きました。

 

何もかもが新鮮で、始めの頃は作業が出来るだけで嬉しかったのですが、次第に「開発チームが本当はどんなものを求めていて、どんな物を作ったら喜ぶんだろう。もっと開発チームの方々と話し合いながら作業がしたい!」と思うようになりました。

それまでとても居心地の良い環境で作業をさせて頂いていたため、このような想いを伝える事には正直抵抗がありました。

ですが、このままではダメだと思い、意を決して開発チームにもっと近づきたいという気持ちを当時のトレーナーに相談したところ、シナリオライターやプランナーをはじめ、開発チームの様々な職種の方とお話しする機会を頂き、次第に開発側が求めている物が理解できるようになりました。

僕はその時まで、イラストの作業は受け身の姿勢で臨むものだと思っていたのですが、そこでようやくチームで一つの物を作り上げるには、自分の想いを伝える事やコミュニケーションが大切である事を学びました。

▲内定者アルバイト中に制作したイラストの一部

新卒でメインイラストレーターに

アルバイト時代に、開発チームの方々と話し合いながら働く事を強く希望していた事もあり、入社後は、当時開発中だった「BLADE XLORD―ブレイドエクスロード―」のメインイラストレーターを担当させて頂く事になりました。その要因として、当時メインイラストレーターを担当されていた方が、僕の入社と同時期に退社されたという事もありましたが、自分の想いを伝える事やコミュニケーションの大切さを伝えていた事から、「一緒にいい物作りが出来そうだ」と思って頂けたのだと感じています。

 

このように若いうちから重要なポジションを任され、活躍をしているクリエイターは、サイバーエージェントでは珍しい事ではありませんでした。

ですがこのミッションは、当然入社したばかりで右も左もわからず、スキルも未熟な状態でこなせるような甘い仕事ではありませんでした。タイトなスケジュールの中、何度も描いてはボツにされ、「成果物もないのにスケジュールも遅れている」という事実が、自分自身本当に耐え難く、頂いたフィードバックに対して反発した事さえありました。

▲何度も直した主人公のライド

 

自分なりに、開発チームやユーザーにどんなものが求められているかを考える努力はしていたのですが、これではどんどん悪い印象を与えてしまうなと思い、そもそもなぜ案が通らないのか、どうしたら自分の良いと思ったものを伝えることができるのかを考え、実践し始めました。

▲デザインの初期段階では、シルエットに差がないパターンをたくさん出しても、選ぶ側は一つに絞りづらい。他と比較した時に何故それが良いのかを分かりやすくするためにも、出来るだけシルエットでパターンに差をつけて提案する事を心掛けた。

▲自分の手掛けるデザインが、客観的に見てどう見えているのか、何故そのデザインでなければならないのかを言語化できるよう心掛けた。

 

その他にも「レイアウトを駆使して目立たせる」「密度の差で目立たせる」など様々な提案をしましたが、いずれも共通しているのは、受け手が客観的に見た時にどう思うかを心掛けるという事でした。

 

念願のキービジュアル完成

こうしたコミュニケーションを重ねていくうちに、仕事にも手応えを感じるようになり、信頼して業務を任せてもらえるようになりました。そんな中、チームのアートディレクターから「キービュアルやらない?」とお話を頂きました。

 

キービュアルは、ゲームの顔。「是非やらせてください!」と即答しましたが、これまでの経験から、「今の実力で完成のイメージを齟齬なく伝えるためには、ある程度完成の状態まで仕上げない事にはイメージのすり合わせが難しいのではないだろうか。」と感じたため、「制作にあたり、完成のイメージが見えるまではフィードバックをしないで欲しい。」と打診しました。

完成が近づくにつれ、今まで何度も描き直し、考え抜いてきた主人公像との葛藤が蘇り、「ようやくライドになった…。」と、嬉しくて描きながら涙を流していました。(笑)

アートディレクターからも「特に何かを直す必要はないからそのまま完成まで進めてほしい。」とだけフィードバックを頂き、自分の考えた完成のイメージをうまく伝えることが出来たのだと、安堵しました。

今でも、完成を信じて任せて頂いたアートディレクターの方に、本当に感謝しています。

当時のゲームショーや、チーム内での評判も良く、本当に思い入れのあるイラストが残せたと思っています。

▲アートディレクターとすり合わせたフィードバックの過程。改めて見ても、通常では考えられない程、終盤になってから進捗を共有している事がわかる。

 

成長実感と学び

こうした経験を経て、改めて今の自分の視点から、これまでの経験を振り返ろうと思います。まず、大切なのは絵でもコミュニケーションでも、意見や意図をしっかり人に伝える事です。そもそも絵描きは内弁慶な人が多く、コミュニケーション手段として絵を描いている側面があるのだろうと感じています。内心色々な事を感じていても、人に話す時にはおすまししてしまう。だから他者と繋がる手段の一つとして、自分が最も親しみやすい絵を用いてコミュニケーションを図ろうとするのだろうなと。

自分自身もその1人ですし、とてもよく分かります。

 

ただ、会社に入ると、一つの物作りに対し、自分とは異なる経験を積んだ様々な人間と関わる事が増え、自分の持つイメージが上手く伝えられない事が多々あります。そのため、自分のイメージを伝えるためには、相手が受け取りやすい言葉に変換する事どこまで伝えればイメージを共有できるのかを考える事が大切なのだと思っています。会社なら会社に、プロジェクトならプロジェクトに、友達なら友達に伝わりやすいコミュニケーションをとらないと、自分の意見を伝えても、それはただの我が儘になりかねません。

絵を通して何かを伝える事も、それと同様だと考えています。ただ、絵の難しいところは、絵自体のクオリティも求められる部分にあります。極端にいえば、指が6本あったり、プロポーションが崩れていたりしたら、いくらその絵が魅力的でも、マイナスイメージから自分の伝えたいことが上手く伝えられません。ですので、上手く伝えるためにはデッサンや構図、色等の絵に関わる事ならなんでも、貪欲に学ぶことをオススメします。

とはいえ、イラストは人を魅了するような、エモーショナルな部分に良さがあるとも思っているので、自分の感覚に頼りつつ、常に伝えるための努力を惜しまない事が大切なんでしょうね。

最後に

メインイラストレーターっていうと、「センスもスキルもあってこの人にしか頼めない!」という人がなっているイメージがあります。実際そういった面もあるのですが、決して絵だけが優れているだけでは無いのだろうと感じています。

特にこの組織でリーダーとして先頭に立つ人は、経験の無さや実力の無さを自覚して、それでもがむしゃらに良いかどうかを模索し続け、苦しみながらも伝えるための努力を惜しまない方ばかりです。

最後に改めて、サイバーエージェントで何か大きな役職を任せて頂く事は、そこまで珍しい事ではありません。それは、大きい責任を信頼して任せることで、成長を促すような育成方針をとっているからです。

そこに最初の実力は関係ありません。

僕から言えるのは、とにかく相手の気持ちを考えて伝える努力をする事

 

まだまだ未熟な僕ですが、これだけは本当に大切な事だと思っています。