こんにちは、サイバーエージェントゲーム子会社の株式会社アプリボットに所属する3Dアニメーターの岡田です。
今回は2018年~2019年にかけて計3回行われた、3Dアニメーター向け勉強会イベント「CyberAgent 3D Academy」について、開催経緯を振り返りつつレポートしていこうと思います。

イベント開催のきっかけ

以前私は、若杉 遼さんが主催する「AnimationAid」というオンラインスクールを受講していました。若杉さんはスパイダーバースなど海外のCGアニメーション映画でアニメーターとして活躍されている方で、「AnimationAid」はそんな第一線で活躍するプロのクリエイターから、10週かけて直接CGを教わることのできる貴重なスクールです。
講座を通してプロの考え方、アニメーションの作り方のとても良い学びを得て、実務にも生かすことができました。「AnimationAid」に興味を持たれた方はこちら
AnimationAid
サイバーエージェントのゲーム・エンターテインメント事業部(※通称SGE)では、職種問わず様々な社内向けの勉強会を開催してきた経緯があり、「学ぶこと」に対してとても開かれた組織です。

初心者向けのMAYA講座などは、年単位で何度も開催されてきました。ただ講座の多くは基礎的な内容で、より専門的な内容を「その道のプロに教わる」講座はまだありませんでした。
若杉さんのアニメーションの講座をきっかけに、SGEの3Dクリエイターがスキルアップできるような機会を社内にも作りたいと思い、開催の準備を進めました。

また、SGEを含むスマートフォンゲーム業界は、他のCG業界と比べてまだまだCG制作年数が浅く、会社を超えたクリエイター同士の交流はあまりありませんでした。
他の3Dモーションデザイナーとの交流を持つためにもイベント形式にし、社内外から参加者を募り、講義のあとは懇親会も設けました。

若杉さんは、海外を目指す日本のアニメーターを応援すべく、「AnimationAid」以外でも自分のアニメーション技術を、Twitterやブログで広める活動を行っており、イベントの参加も快く引き受けていただけました。

vol.1 アニメーション講座 観客に”伝わる”動きを作るコツ / 若杉 遼

当時のイベントページ

第一回は、若杉さんに中級者向けのアニメーションの講義を依頼しました。実際に手を動かしてアニメーションをつけていただくデモも行っていただきました。
はじめての試みでしたが、参加応募者の定員85名もすぐに埋まり、実施後のアンケートでも好評でした。

講義内容引用
アニメーションにおいて何より大事なのは、きちんと見ている人に伝わる動きを作ることだと思います。今回の講義では、しっかりと”伝わる”動きを作る為にはどうすればいいのか?わかりやすい動きを作るコツは? という部分に重点をおいて講義します。 アニメーションの基本的な事は分かっているけど、自分のアニメーションを人間の動きとしてみた時に何かしっくり来ない、 体の重さが感じられない、自分の意図したようにアニメーションが作れない、と言った問題にヒントを出せればと思います。
講義内容については、人の動きを自然に見せるときに必要な大きなポイント、”フィジクス(物理)”と見ているひとに わかりやすく伝える時に重要な”デザイン”という2つの側面から、具体的な例やこれまでのアニメーションも交えながら 手法やルールの説明をしていきます。

 

 

vol.2 魅せるキャラクターの表情を作るコツ / ~若杉遼~

当時のイベントページ

第二回は前回よりも更に踏み込んだ内容、フェイシャルアニメーションに特化した講義をしていただきました。スマートフォン向けのゲームのCGでは、フェイシャルの制限がある場合も多く、知見をもったアニメーターが少ないので、より刺激になりました。

今回は新しい試みとして、懇親会をより充実させるために、第三回目の講師を予定しているストーリーボードアーティストの栗田 唯さんとの対談のコンテンツも盛り込みました。ちょうど公開直後で話題になっていた映画「スパイダーバース」の制作に関してアニメーターと、ストーリーボードアーティストの観点から面白い話がたくさん広がり、とても有意義な時間となりました。

講義内容引用
この講座は特にキャラクターの一番の魅力に繋がる、表情のポーズの作り方についてお教えするレクチャー形式の講座です。 ひとえに表情とは言え、キャラクターのデザインや種類によって目指すべきゴールが変わってきます。 そこでポーズを作る際の本質が分からないと、それぞれのキャラクターの特色を生かした 魅力的なポーズを作る事は難しいと思います。 例えば、悪役のキャラクターとヒーローやプリンセスでは魅力の定義が変わって来るので、 同じ表情だとしても目指すものが違います。
今回の講座では、「何を見せるのか?」と「どうやって見せるのか?」という視点から 表情のポーズを作る時のアプローチをお話ししようと思っています。

vol.3 ストーリーアーティストから学ぶ! 「らくがきアイディア生み出し法」/ 栗田唯

当時のイベントページ

第三回目はストーリーボードアーティストの栗田 唯さんに講義をして頂きました。栗田さんはサンフランシスコの美術大学を卒業後、「Blizzard Entertainment」にてストーリーアーティストとして活動され、現在は国内で映画制作に関わりながら、「AnimationAid」で講師を勤めています。
海外のスタジオでの仕事風景や、アイデアの出し方、日本にまだあまりなじみがないストーリーボードという物をエンターテイメント性あふれる講義で解説してくれました。
また講義の後半では、映画を見ながら構図を書き写す「フィルムスタディ」という勉強法を、栗田さんと一緒に受講者も参加できる、ワークショップ形式で行いました。懇親会では描いたものを皆で持ち寄ることで大いに盛り上がり、一体感のあるイベントとなりました。

講義内容引用
みなさん落書きしてますか? 落書きというと、時間を無駄につぶす意味のないものと思われているかもしれませんが、 僕たちストーリーアーティストにとっては、落書きほど「キラッと光るアイディア生みだし」が できるクリエイティブなもの、時間だったりします。たかが落書き、されど落書き。 僕たちストーリーアーティストがどんなふうにアイディアをだしてきたのか、 というお話を、皆さんにも今日からやってもらえる内容も含めてお話させていただきます。

 

イベントを通して

「CyberAgent 3D Academy」という3DCGクリエイター向けのイベントの開催を通し、多くのクリエイターと交流しながら、アニメーションに関して学ぶことができました。
また、80名を超えるイベントを定期的に開催することで、イベント運営に関する様々なノウハウも得ることができました。
今後は新型コロナウィルスの影響でこのような大規模なイベントを開催できる機会はあまり多くは無いと思いますが、サイバーエージェントのクリエイターが「学ぶ意欲」を刺激できるような施策を今後も考えていきたいと思います。