こんにちは、伊藤はるかです。
2021年5月28日に、20代のエンジニア・クリエイターが自ら企画・登壇した、サイバーエージェント初の社外向け技術カンファレンス『CA BASE NEXT – CyberAgent Developer Conference by Next Generations』を開催しました。当日は学生から社会人まで5,834人(UU)の方にご参加いただき、総視聴回数27,703回と、サイバーエージェントの若手の活躍をより社外に知ってもらえる機会となりました。
このブログでは、本カンファレンスのクリエイティブの舞台裏をご紹介するとともに、アートディレクションを通しての学びなど、現場目線でお伝えしていきたいと思います。
INDEX
- 企画から実行まで全て若手主導のカンファレンス
- 「会社の次世代を担っていく」覚悟と想いを込めたテーマ設定
- 統一された世界観実現のための制作物ひとつひとつへのこだわり
- 大規模カンファレンスのアートディレクションを通して学んだこと
- 最後に
企画から実行まで全て若手主導のカンファレンス
サイバーエージェントには「YMCA」という若手活性化の横断組織があり、今回のカンファレンスは、こちらの取り組みの一つとして「若手の登壇機会を増やしたい」という意向から、企画が発足しました。
運営メンバーは20代の若手エンジニア・クリエイターが主体。クリエイティブチームは全社から抜擢された18〜20新卒の若手7名で構成されました。
その中で私は、クリエイティブチーム全体の統括を行うアートディレクターのポジションに抜擢していただきました。
「会社の次世代を担っていく」覚悟と想いを込めたテーマ設定
まず最初に18新卒で同期である全体責任者の江頭を中心に、カンファレンスの意義やターゲット、それに伴ったカンファレンスの名称を決めていきました。
江頭からコメント: クリエイター・エンジニアを含む運営関係者全員で、カンファレンスの意義を考える時間を設けました。 参加者、登壇者、運営メンバーの3方にとって、それぞれがどのようなイベントにしたいのか。 ブレストの結果、多くのメンバーが「日々の仕事に誇りを持ち、それを社外に発信する場所にしたい」と思っていたこと。また「最先端の技術を駆使し、他イベントが真似したくなるようなものを創り上げたい」という共通点が見えてきました。 初めに理想状態をすり合わせ言語化し、運営メンバーのテーマとして掲げたことで、その後の一人ひとりの意思決定の質を上げられたと思っています。
イベント名は「サイバーエージェントの次世代を担っている」という意識で創りあげようとみんなで話し合い、会社の未来を担っていく覚悟と想いを込めて『CA BASE NEXT』に決定しました。
この時期にタイムテーブルのたたきが作成され、運営みんなの目指している規模感を把握できたので、私はクリエイティブ統括として目に触れるものは全部デザインしようと決め、このプロジェクトに取り組みました。
統一された世界観実現のための制作物ひとつひとつへのこだわり
テーマが確定し、ここから実際のアウトプットへの落とし込みを行いました。
キービジュアル、ロゴ、コピー、サムネイル、特設サイト、映像、選曲、バーチャルアリーナのデザイン・演出、配信テロップ、スライドデザイン、グッズなど…カンファレンス開催にまつわるほぼ全てのクリエイティブを、グループ会社の協力も得ながら内製しました。
その一部をご紹介します。
キービジュアル完成までのプロセス
カンファレンスの世界観を体現させるキービジュアルは、コンセプトをしっかり伝えていくうえで特に重要です。決まったテーマやターゲットをもとに、クリエイティブチームでコンペを行いました。
コンペではビジュアルのアイデアだけでなく、会場や演出のアイデアまで、カンファレンス全体をパッケージとしてどう見せていくのかを募り、クリエイティブ執行役員や、運営のエンジニアにヒアリングして、どのような見せ方が最適か方向性を皆で探っていきました。
最終的に
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- 「サイバーエージェント」という象徴的に確立しているものを、次世代の勢いや創造性で新しくするイメージ。動的で変わっていくイメージ。
- あくまでもサイバーエージェントオフィシャルの技術カンファレンス
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という2点に絞りこむことができ、「次世代の勢いと創造性でサイバーエージェントを再構築する」というコンセプトを決めました。
そして全体の軸を「技術」×「次世代」と設定しました。
キービジュアルは19新卒の小倉と、会場や演出への展開を想定したカンプを作成しながら、二人三脚で取り組みました。
初の社外向けカンファレンスで、参加者としては興味を持つ入り口となる部分なので、その分プレッシャーもありましたが、もともとグラフィックデザインを強みとしてきた彼の経験や好きなものが存分に活かされたものが完成したと思います。
小倉からコメント: 「技術」を「デジタル感、webの中の世界、技術者の玄人感」で表現し、「次世代」を「次世代の勢い・創造性でCAのシンボルロゴが再構築されていく様子」と「サイバーエージェントのベース(土台)として活躍・暗躍する次世代の技術者たちを分子レベルで可視化する」形として表現しました。 また、サブコンセプトとして、業界的トレンドがキャッチアップできる印象を与えるため、ノイズ感のあるアナログっぽい表現(ノイズ&カラーハーフトーン)とデジタル感の融合を、トレンド的表現の要素として取り入れています。 ロゴは、カンファレンスのイメージを意識しつつも仰々しくなりすぎないように、中間的な印象のスラブセリフ体をベースにしたデザインになっています。さらに「再構築」のイメージをピクセルっぽい表現でタイポグラフィに落とし込みました。
メッセージへの落とし込み
キービジュアル同様、コピーにも力を入れ、18新卒で同期であるコピーライターの桑原の協力のもと、特設サイトや映像に展開するコピーを進行しました。
桑原からコメント: 20代のエンジニア・クリエイターが登壇する今回のイベントが、視聴者のみなさんに「何を紹介する」イベントなのか。ここを掘り下げるところからコピーを考え始めました。 運営メンバーや登壇する方々にヒアリングする中で見えてきたのは、サイバーエージェントの若手が「これまでの技術やスキルを身につけようとする『半人前』」ではなく、「新しいつくり方から考え試す『挑戦者』」であること。 そこからイメージを膨らませていったのがこのコピー。既成概念に囚われず、恐れずにチャレンジしてみる。その試行錯誤の中からヒントを見つけ創作をする。がむしゃらな若者だからこそ持ち得る創造性が、社会を変えるようなきっかけになるかもしれない。そんな想いを込めました。
メインコピーは、サイバーエージェントのビジョンである「21世紀を代表する会社を創る」を、20代の技術者の視点から見た内容となっており、サブコピーも『CA BASE NEXT』にぴったりのものになったのではないでしょうか。
モーショングラフィックへの展開
オープニングは、KVの世界観をモーショングラフィックで表現することができました。一つ一つの分子は20代の技術者たちを表現しており、それらが様々な試行錯誤を通して、再構築をしていく様子を描いています。
映像全般はABEMAの映像ディレクターの中山からディレクションの協力をいただきつつ、19新卒の猪上と進行しました。
モーショングラフィックは、ティザーやコンテンツのイントロ/アウトロ、会場LED、開催中の幕間の映像にも展開しました。参加者がどこからコンテンツに触れても違和感なく『CA BASE NEXT』を体験できるよう、パッケージを通して世界観の統一を心がけました。
映像制作:NEW BRIDGE BROTHERS
各会場への展開
メイン会場
メイン会場はサイバーエージェントの子会社で、3DCG関連のコンテンツ・広告クリエイティブの企画制作を手掛ける株式会社CyberHuman Productions(以下CHP)協力のもと、KVの世界観を3DCGで表現することができました。
技術者の勢いと創造性を発信する場所にしたい、という想いを込め「暗躍する技術者たちの基地」として落とし込みました。
▼メイン会場でのコンテンツ
コメントで参加しよう!エンジニア・デザイナー両側から見る開発の裏側
VTuberセッション会場
VTuberとのパネルディスカッションを行った会場も、CHPの協力のもと、アートディレクションで関わらせていただきました。
キャラクター合成技術や現場の設計についてのブログはこちら。
▼VTuberセッション会場でのコンテンツ
不確実な時代の生存戦略を、3DCG化したバーチャル社員が聞いちゃうよ!
インタビューセッション会場
インタビューセッションの会場は、株式会社DEEP SIDE協力のもと、普段ABEMA MIXを放送している会場を『CA BASE NEXT』仕様に変えています。
▼インタビューセッション会場でのコンテンツ
常務執行役員 内藤 貴仁に直撃!広告事業におけるクリエイティブ
技術担当役員 長瀬 慶重に聞きたい!サイバーエージェントの技術の話
クリエイティブ執行役員、佐藤 洋介に若手デザイナーがインタビュー!
配信テロップへの展開
拡散が予想されるカンファレンスだったので、スクリーンショットでどこを切りとられても『CA BASE NEXT』とわかるようなテロップを作成しました。1コンテンツずつ登壇者の名前が入っており、全体の世界観統一に大きく貢献しています。
特設サイトへの展開
特設サイトでは、開催中に多くのコンテンツを見て回ってもらうため、特設サイト上で視聴が完結する体験を実現させることができました。
20新卒の加藤が体験設計からデザイン、エンジニアとの対話まで担ってくれました。
特設サイトの設計についてのブログはこちら。
▼特設サイト
https://ca-base-next.cyberagent.co.jp/
他にも
登壇スライド、コンテンツサムネイル、グッズやイベントの選曲まで、自分たちで主体的に考え、目に見える部分だけに収まらずイベント自体をデザインすることができました。
まだ『CA BASE NEXT』を体験していない方はぜひ一度ご覧ください。
大規模カンファレンスのアートディレクションを通して学んだこと
私は普段、ABEMA Creative Center という部署でアートディレクター兼デザイナーとして、番組のグラフィックデザインやプロモーションに従事しています。今回の『CA BASE NEXT』は、今まで私が担当したものの中では最も裁量の規模が大きく、未熟さを痛感させられることが多々ありました。ただ結果としてこのカンファレンスから得られたものは多く、今の業務に活きています。
各所に展開していくにあたり、大きく2つの学びがありました。
①各所の責任を明確にする
クリエイティブチームは、各々主務があるなか「CA BASE NEXT」でも事業部を越えて、力を発揮してくれていました。
しかし、ほとんどを内製していたため、タスクが肥大化するにつれ各々の責任範囲が曖昧になり、動きづらい状態になってしまっていました。
そこで19新卒の猪上の働きかけがあり、各セクションのリーダーを決めて責任範囲を明確にした体制を組みました。そして定期的に朝会を設定して、他のメンバーの動きや相談事項をスピード感を持ってキャッチアップできるようにしました。
そこから景色が変わったように各々がワークし始め、組織をデザインするとはこういうことなのかと学びました。初期段階でしっかり体制をひいたことで、各担当のリーダーがオーナーシップを発揮しながら展開物ひとつひとつまでクオリティを上げることができたのだなと思います。
猪上からコメント: 最初は各々がやりたいことや、今割ける時間を軸に分担していました。私は色んなものに関わりすぎた結果、一つ一つの精度が落ちてきてしまい、周りにも疲弊していたり本領発揮できていないように見えるメンバーがいて、イベント本番を想像した時に「全員が走りきれているのか?本当に高いクオリティに仕上がっているのか?」ということに不安を感じていました。 また、クリエイティブは運営の中で横断的に発生するので、関係者が多いCA BASE NEXTチーム全体としても「これはどのデザイナーに声をかければいいのか?」などがわからず、必要以上に連絡が行ってカオスな状況に。これでは本番に向けてより密になっていく運営全体の連携にも影響していくと危機感を持ち、主務でマネジメントをしている上司を巻き込んで提案しました。 体制変更後は、運営全体としてボールを渡したり巻き込む相手が明確になり、コミュニケーションが円滑になったように思います。また、クリエイティブチーム内でも「この人が進めてくれている」「このチームは今この状況である」という共通認識・安心感を軸に、各コンテンツで ”よりクオリティを上げるためにはどうすればいいか?” にチーム全員で向き合えるようになった結果、評判の声をいただけるクオリティに繋がってよかったです。
②自分の未熟さを自覚し、プロに頼る
各所とのコミュニケーションも大きな学びになりました。
今回、実際に動くものや音響、知見のない3DCGへのクリエイティブ展開など、今までの社会人生活3年間のキャリアで関わったことのない、職種の違う大勢の人への説明が必要になりました。とにかくカンプやコンテを作って、どうにか伝わるように努力を続けました。
説明不足のせいで「気に入らないから修正してほしい」のような受け取り方をされることもあり、ミーティングやテクニカルリハ終わりに反省することもありました。
ここで学んだことは、ひとりで抱え込まず、判断できないことはチームメンバーやエンジニア、上司、専門職の方を巻き込んで頼る、ということです。
自分が未熟だということを自覚し、相談する相手に自らの頭の中身をさらけ出しました。
皆さん親身になって相談に乗って下さり、ひとりで考えていては出てこないようなより良いアイデアがもらえたり、より高いクオリティのリファレンスが出てきて、本当に仲間に恵まれている組織だなと感じました。
きっと、サイバーエージェントがそういった姿勢で取り組む様子を喜んで許容する組織だからこそ、裁量のある現場だったにもかかわらず、失敗を恐れずチャレンジさせてもらえたのだと思います。
最後に
もともと私は人に任せるのが苦手で、一人で作業することを好んでいました。今回『CA BASE NEXT』に参加してから多くの人と関わっていくうち、クオリティの高いカンファレンスにするにはたくさんの人手や知識、技術が必要で、想像していた何倍も時間がかかることがわかりました。しかしそれと同時に、一人では到達できない表現が作れる面白さがありました。
クオリティを担保するために、自らも手を動かしつつ、チームとしてシナジーを生み出すためにはどうすればいいのか、組織をデザインすることも学びました。
今回の経験を活かし、クリエイティブを担うディレクターとして、ビジネス目線も含め高い視座から物事を考え、チームでより大きな成果を導き出せるように今後も精進していきたいです。