こんにちは。サイバーエージェント メディア統括本部 Data Science Center の武内です。

先日開催された CA DATA NIGHT #4 の様子についてご紹介いたします。

 

イベント概要

https://cyberagent.connpass.com/event/319045/

CA DATA NIGHTとは、サイバーエージェントが主催するデータサイエンスに特化した技術者向けの勉強会です。機械学習、統計学、自然言語処理、コンピュータビジョン、情報推薦、検索、経済学など様々な専門分野のエンジニアやデータサイエンティストから技術・取り組みなどを紹介しています。

4回目の開催となる今回は、「映像メディア技術による新たなデータサイエンスの可能性」をテーマとして、サイバーエージェントの数ある事業の中でも、ABEMAやWINTICKETといった当社の看板サービスや小売DXなどの成長事業における「映像メディア技術」にフォーカスしました。

発表ラインナップ

 

以下、各事業の発表をお伝えします。

 

発表内容

クリエイティブ制作領域のデータ活用を0から推進した話

株式会社AbemaTV DX Promotion Team所属のデータサイエンティスト/PM 上岡将也より、クリエイティブ制作領域でデータ活用を推進した事例が発表されました。

上岡の発表の様子
上岡の発表の様子

 

本発表では、ABEMAにおける「クリエイティブ制作」と「データ活用」との間にあった距離感をどう把握し、それをどう埋めていったかの過程に特に焦点が当てられていました。ここで、ABEMAにおける「クリエイティブ」とは具体的には、ユーザーが動画を選ぶ際に目にするサムネイル画像のことであり、そのコンテンツの魅力を視聴前のユーザーに伝えるという役割を担っています。

そもそもABEMAのクリエイティブ制作は誰がどのような利害関係でどう作成しているのか?のヒアリングから始まり、限られた機会の中でA/Bテストをうまく設計し、再現性のある結果を示すことで、Data Scienceが市民権を獲得していく様子が紹介されていました。私も、別のメディアサービスを担当する同じような立場のデータサイエンティストとして、Data Scienceを活かせそうな未開拓の領域を探してみたくなりました。

発表の最後には、本事例において「クリエイティブ制作領域」と「データ活用」の間をなぜ埋めることができたのか?の考察がなされ、インパクトと再現性の高いA/B検証の重要性や、ステークホルダー全員で共通の目標を持つことの必要性、(手前味噌で恐縮ですが)弊社の企業文化による環境の良さについての言及がありました。

 

上岡の発表資料

 

opt-in camera:カメラによる行動計測におけるオプトインの仕組みの実現

AI Lab 行動理解チーム所属のリサーチエンジニア 石毛真修からは、小売DXなどで活用されるカメラの行動計測に、オプトインの仕組みを付与するための研究開発の紹介がありました。

石毛の発表の様子
石毛の発表の様子

 

小売DXなどの文脈において、人の行動計測ツールとして店頭などに設置されたカメラが活用されていますが、既存のカメラ撮影にはオプトインの仕組みはありません。本発表では、このカメラによる計測にオプトインの仕組みを付与するため、屋内測位技術とコンピュータービジョン技術を組み合わせて用いる研究が紹介されました。

ここで提案されたオプトインの仕組みは、具体的には、超広帯域(UWB)無線デバイスを身につけてもらうことでオプトインの意思表示を行ってもらい、映像中からデバイス保持者を特定することで、その人だけを映像に残すというものです。これを実現するためには、UWBで室内測位したオプトイン対象者を、カメラの撮影動画中の人物オブジェクトと対応付ける必要があります。

発表の中では、UWBによる屋内測位の精度をカルマンフィルタによって向上させる工夫や、カメラの撮影動画の奥行き推定を人の頭部の大きさを利用して計算する工夫などの紹介がされ、これらを適用した結果、実際に高い精度でオプトインした人だけが映像に反映される様子が紹介されていました。

 

石毛の発表資料

 

競輪選手の体力を視覚化するための物体認識とデータサイエンスの融合

メディア統括本部 Data Science Center所属のデータサイエンティスト 松田和己からは、2024年4月にリリースされたWINTICKETのオリジナルレース映像「WINLIVE」で選手の体力を視覚化する取り組みの紹介がありました。

松田の発表の様子
松田の発表の様子

競輪には、ラインと呼ばれるチームの概念や良い位置の取り合いなど、レースの状況を理解するために必要な知識があります。「WINLIVE」では、これらを視聴者にわかりやすく伝えるために、複数のデータ処理技術を活用しています。

動画像内の選手位置を推定するタスクには、2Dと3Dでそれぞれ異なる物体認識の問題設定があり、競輪ならではの課題とそれに対する工夫が紹介されていました。また、別のタスクとして選手の体力の定量化があり、選手に働く抵抗力を映像からうまく算出する取り組みの紹介がありました。発表の最後に、効果検証に関しても言及されていました。

「WINLIVE」映像の提供の裏側では、複雑に見える問題を複数の解ける問題に分解し、それぞれの問題に対してデータサイエンスとドメイン知識を組み合わせたアプローチがなされていました。

 

松田の発表資料

 

おわりに

発表終了後に開催した懇親会はとても盛り上がり、多くの方に最後まで残っていただきました。おかげさまで大変有意義な時間となりました。

今回も多くの方々にご参加いただき、誠にありがとうございました。今後も事例紹介イベントを開催していく予定ですので、ご興味をお持ちになった方は、ぜひともconnpassのCyberAgentグループをチェックしてみてください。