はじめに
サイバーエージェント FANTECH本部 編集部です。
「技術でエンターテイメント産業の障壁を取り払う」ことを目的に、ファンの皆さまとタレント・アーティストの双方にとって利便性の高い、多様な機能を提供しているFanTech事業本部では育成施策に注力しています。今回は配信プラットフォーム運営者側を担う私たちが、「演者、裏方、ファン」の三つの視点を体験することを目的とした施策「FANTECH INSIGHT」についてご紹介します。
三位一体の視点を育む FANTECH INSIGHT誕生の背景
FanTech事業本部では、ファンダムを中心としたエンターテイメント事業を幅広く展開しています。日々、演者とファンの双方が望むイベントや機能の企画・開発・運用を行っており、配信現場スタッフとの緊密な連携も欠かせません。
このような環境下で、新入社員が早期に事業への理解を深め、多角的な視点を養うことを目的として、FANTECH INSIGHTは誕生しました。単なる座学ではなく、実際に生放送番組を企画・制作し、配信まで行う実践的なプログラムとなっています。
この過程で、映像配信の専門的な技術に加えて、企画立案の難しさ、チーム内での役割理解、他メンバーとの協調性、さらには先輩社員を巻き込む力など、実務で必要となる多様なスキルの習得を目指しています。
実践的な3つの取り組み
具体的には3つの施策を実施しました。
1. 配信技術を教えるワークショップの開催
新卒1年目社員を対象に、実践的な配信技術の習得を目的としたワークショップを開催しています。実際のサービス開発環境を使用し、生配信の基本操作から、映像・音声・画像の統合技術まで、体系的に学習します。カメラ、マイク、ミキサー、スイッチャーといった専門機材は、実機を使用したハンズオン形式で習得。さらに、BGMや効果音の活用、映像の場面転換など、配信演出の基礎まで幅広く学びます。これらの技術は後続のオリジナル番組制作の土台となっていきます。
2. オリジナル番組の制作と配信
新卒1年目と2年目による対抗戦形式で、オリジナル番組の制作に挑戦。
すでに業務で配信技術を習得済みの2年目と、ワークショップで基礎を学んだばかりの1年目が、それぞれ独自の番組を企画・制作し、実際に配信を行いました。
評価は集客点・投票点・技術点の3項目で行われ、視聴者数やコメント数も得点として加算されます。そのため、配信コンテンツの質だけでなく、視聴者獲得のための戦略立案も重要な要素となります。
番組制作にあたっては、企画のディレクション、出演者との調整、技術面での準備、クリエイティブ制作など、様々な役割が必要となる他、映像の撮影や音声の録音、テロップやBGMの追加、宣伝用素材の作成など、多岐にわたる業務を分担して進めていきます。
また、一度きりの経験で終わらせず、研修での配信は計2回実施。1回目の反省を活かし、より良い配信を目指して改善を重ねる機会を設けています。
3. プロフェッショナルの現場訪問
2回の配信の間に、プロレス団体NOAHの大会現場を訪問し、実際のプロフェッショナルの配信現場を見学。興行開始前に配信チームの体制や使用機材について詳しい説明を受け、各参加者がプロの配信チームメンバーへのインタビューを実施しました。
自身の配信経験を踏まえた質問を通じて、プロの技術や工夫を学び取ります。その後、一般観客として興行を体験することで、ファンの立場からもエンターテインメントを捉える機会を得ています。この現場体験を通じて、配信者・裏方・ファンという三位一体の視点をより実践的に理解することができます。
この段階的な学習プロセスを通じて、参加者たちはエンタメ事業の運営に必要な多角的な視点と実践的なスキルを習得しています。特に生配信ならではの緊張感や、想定外の事態への対応力、チーム内でのコミュニケーションの重要性など、座学だけでは得られない貴重な経験を積むことができました。
研修を終えた参加者からは、「企画立案から配信までの一連の流れの複雑さを実感できた」「年齢や性別による観客の楽しみ方の違いに気づけた」「チームメンバーの個性を活かした役割分担の重要性を学んだ」など、具体的な気づきの声が寄せられています。
研修の目的である配信者・裏方・ファンの三つの視点を体験するきっかけとなることはもちろん、チームで成果を上げるために重要な役割分担や他のメンバーへのフォローの必要性を学ぶ機会としても機能しており、実践的なスキル習得と共に、将来のFanTechを支える人材としての基礎を築く場となっています。
FanTechが描く人材育成の未来像
FanTech事業本部では、次世代を担う人材の育成に注力しています。FANTECH INSIGHTは事業部が異なる新卒同士が一つの課題に取り組むので、部署の垣根を越えた協働の機会を提供します。この経験を通じて、同期との信頼関係を築きながら、自身の成長課題も明確になっていきます。
プログラムには、スケジュール管理からステークホルダーとのコミュニケーション、緊急時の対応力まで、実務で必要となる基本的なスキルが凝縮され、特にコンテンツホルダーの準備の大変さを知ることや、ライブ配信時の緊張感を体験することは、ビジネスパートナーへのリスペクトを育む貴重な機会となっています。
さらに当施策以外にもナナメン制度を通じたベテランエンジニアとの交流や、トレーナー間の定例での目標レビューなど、重層的な育成の仕組みも整えています。これらの施策は、専門性の向上と、組織横断的な成長を支援することを目的としています。
FanTech事業本部の発足により、これまで個別に展開していた事業が一つの傘下に集まりました。この統合を真に意味のあるものとするためには、部門を越えた一体感の醸成が不可欠です。私たちは、これらの育成施策を通じて成長した新卒社員たちが、FanTech全体の結束を強める架け橋となることを期待しています。