こんにちは。
CIU(CyberAgent group Infrastructure Unit)所属、
KubeCon + CloudNativeCon Japan 2025 Co-Chairの1人の青山真也(@amsy810)です。
みなさん、KubeCon + CloudNativeCon Japan 2025 は楽しめましたか?
このブログでは、サイバーエージェント、そして私自身がどのようにCloud Native技術やOSSコミュニティと向き合ってきたのかをご紹介させていただきます。
Cloud Native 領域とサイバーエージェントと私
サイバーエージェントでは、早い段階からKubernetesやCloud Native技術を事業の成長に重要な柱と位置づけ、技術を採択してきています。
社内では2016年頃からオンプレミスのコンテナ基盤の開発を始め、翌2017年4月にはリリース。Mesosなどさまざまなオーケストレーターが乱立していた当時、私たちもKubernetesとDocker Swarm modeを並行してオーケストレーターとしてサポートしていました。特に「ABEMA」では、2015年という非常に早いタイミングでKubernetesを採用し、大規模かつ最注力事業の基盤として活用してきました。
技術コミュニティへの本格的な参加は、2018年の「Japan Container Days」から始まりました。実行委員として関わると同時に、基調講演でマネージド事例を紹介。その後も「CloudNative Days Japan」のCo-Chairや、「Kubernetes Meetup Tokyo」のCo-Organizerとして、Cloud Nativeの普及とコミュニティ形成に尽力してきました。
Cloud Nativeという領域は、CNCFが公開している CNCF Cloud Native Definitionにもある通り「OSSと標準化によって、誰もがイノベーションの恩恵を受けられる世界を目指す」といったことが書かれています。私たちもその思想に共鳴し、さまざまなかたちで貢献してきました。
2024年からはCNCF Japan Chapterとして「Cloud Native Community Japan」が結束し、日立の中村さんや太田さんをはじめとした皆さんの活動が実を結び、ついに念願だったKubeCon + CloudNativeCon Japan 2025が開催されることとなりました。私がCo-Chairとして任命されたことについては、CNCFからの指名制ということもあり詳細は不明ですが、これまでの活動を評価いただけたのではないかと思っています。
サイバーエージェントは「技術のサイバーエージェント」を掲げ、技術投資やOSSへの貢献も支援しています。Developer Expert制度なども整備され、技術に特化したキャリアの後押しも行っています。サイバーエージェントグループでは累計ちょうど100回国際カンファレンスのKubeCon + CloudNativeConに参加しており、最新技術動向のキャッチアップ・キャリアやモチベーションの向上・OSSコミュニティとの交流機会などを実現しています。
今後は生成AIの進化により、実装にかかる工数が減っていく中で、組織やプロダクトの状況や特性をふまえた上での技術選定力・設計力、技術動向の洞察力がこれまで以上に重要になる時代が訪れます。サイバーエージェントは、こうした変化にも柔軟に対応し、優れた技術と向き合いながら事業を進化させていく力を持っています。
競争優位性を保つための Cloud Native 技術と Platform の進化
今回のKubeConでは、「Cloud Native Darwinism: Continuous Evolution of Platforms for Competitive Edge」というテーマで基調講演を担当しました。ここでは、その内容の一部を共有します。
現代の事業競争力を語る上で、アプリケーションの開発力は欠かせません。新機能やパフォーマンス、UI/UXなど、ユーザーに価値を届けるための迅速かつ質の高い開発力が求められています。また開発したものを素早くリリースし提供する力も重要となってきます。
Cloud Native技術の進化により、開発環境や実行環境は年々良くなってきています。こうした変化に対応し、より優れた技術を選定・採用し続けることが、競争力維持のカギです。特に大規模化・複雑化の波に対応するため、「Platform Engineering」という概念が注目されています。複数の環境を統合して、安定性やセキュリティのガバナンスを実現させたり、事業リスクを回避するためにスケーラビリティや可用性の改善に取り組んだり、複雑化した実行環境やアプリケーションの配置を最適化したり、やることは多岐にわたってきています。たとえば、サイバーエージェントでは、マルチクラスタ・マルチリージョン構成のサービスメッシュが大型事業部で一般化しつつあります。これにより、安定性・セキュリティ・スケーラビリティを統合的に担保しています。
さらに今後は、生成AIエージェントの進化により、開発力そのものが大きく飛躍することが予想されます。サイバーエージェントも「年間約4億円の投資」でエンジニアのAI活用を促進しており、全社員がClaude Max 20x Proなどをフルで活用できるようになった未来でおこる変化に対応していくことが重要です。
こうした変化に対応するためには、Platformのさらなる進化が不可欠です。今後注目すべき技術領域としては:
- マルチクラスタ・マルチリージョンの高度なオーケストレーション(例:kcp, multicluster-runtime)
- AIOps(根本原因分析、インシデント予測、自動リソース最適化など)
などが挙げられます。
書きたいことはまだ山ほどありますが、詳細についてはぜひセッション動画をご覧ください。
サイバーエージェントと OSS コミュニティへの貢献
サイバーエージェントは多くの組織の集合で成り立っているため、横軸の技術プロダクトを開発した際にはOSSとしての公開も積極的に行っています。
Developer Productivity室が開発している「PipeCD」は、社内のContinuous Deliveryを統合して利用するために開発がスタートしたプロダクトですが、現在はCNCF Sandboxプロジェクトとして開発が進められています。
Kubernetes・Terraform・Amazon ECS・Fargate・Cloud Runなど様々なリソースに対するデリバリの統合管理ができるようにすることで、組織全体のデリバリーに貢献しています。
他にも、Developer Productivity室が開発しているフィーチャーフラグとA/B Testingのプラットフォーム機能を持つ「Bucketeer」、全社のセキュリティを担うシステムセキュリティ推進グループが開発しているクラウドアカウント全体のセキュリティチェックを行う「RISKEN」、CIUが開発しているGitHub ActionsのSelf-hosted runnerの「myshoes」などがあります。
また、社内には多くのOSSコントリビューターが在籍しており、たとえばカイン・岩井・阿久津などが継続的に貢献を行っています。
さらに、関連領域のAWS・Google Cloud・SREなどの領域のDeveloper Expertも多く、広い範囲での技術的なカバレッジがあります。
- 永岡 克利
- Google Cloud領域のDeveloper Expert
- 株式会社AbemaTV / Development Headquarters Platform Division / Principal Platform Engineer
- 柘植 翔太
- SRE領域のDeveloper Expert
- メディア統括本部サービスリライアビリティグループのゼネラルマネージャー
- 小西 宏樹
- AWS領域のDeveloper Expert
- AIオペ室 CTO
各エンジニア組織が取り組んでいるCloud Nativeの取り組みについては、今回「Cloud Native Tehnology Map」としてまとめていますので、ご興味のある方はご覧ください。全 52ページに 25のプロダクトで使われている100の技術について紹介しています。来年以降も、私たちの技術的な進化を改めてお伝えさせていただければと思います。
Recap(振り返り会)を開催します!
今回、CyberAgentでは32名がKubeConに参加しており、様々な事業部のメンバーが様々なセッションを聴講してきました。そのメンバー主導で、Recapイベントを開催します。
- イベントで特によかったセッションの情報をまとめて知りたい方
- オフラインでサイバーエージェントの技術について知りたい方
など、現地に参加できなかった方も、現地参加していた方もぜひご参加ください。
▶️ 参加申し込み: https://cyberagent.connpass.com/event/358095/
これからに向けて
来年、KubeCon + CloudNativeCon Japan 2026 の開催も決定しています。
技術の進化とともに歩みを止めないサイバーエージェントに、どうぞご期待ください!
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