はじめに
はじめまして、2025年1月から約半年間、AI Labの AI Strategy&Planningでインターンをしました梅村颯生と申します。26年4月にはビジネス職としてサイバーエージェントに入社予定です。
本記事の概要
インターンで取り組んだ業務のご紹介と、サイバーエージェントで成し遂げたい今後の目標を記載しています。AI Strategy&Planningでは知財に関する業務に着手しました。
- 特許出願に向けた先行文献の調査
- クリアランスと侵害回避設計
- 発明を特許出願に向けて具体化
(なお、特許出願といった知財業務の特性上、扱った技術やプロダクトの詳細まで本記事内で言及出来ない点もありますが、ご容赦頂けますと幸いです。)
AI Strategy&Planningとは
AI Strategy & PlanningはAI技術の事業活用と知財戦略を推進する専門組織として創設されました。主な取り組みには事業企画・技術検証・知財戦略があります。詳しくはこちら。
インターンのきっかけ
私はモノづくりの現場に携わりたいと思い、知財に関する国家資格である弁理士の勉強を以前よりしていました。その中で、知財業務の実務経験を積めるだけでなく、最先端のAI技術を扱う現場で知財戦略に携われるというAI Strategy & Planningのインターンは、私にとって非常に魅力的でした。また私は京都の学生なので、京都拠点から働ける点も魅力でした。(AI Labには京都拠点もあります!)
取り組んだ知財業務について
特許出願に向けた先行文献の調査
特許や出願に関する詳細な説明は省きますが、特許を取得するには「新規性・進歩性」という二つの要件を満たすことが重要であり、その判断には既に世の中に公表されている文献、すなわち先行文献を調査する必要があります。先行文献の調査は①調査対象の把握、②調査方法の組み立て、③検出した文献を確認するという3ステップで進めるため、技術理解と調査スキルが求められます。
AI Strategy & Planningの特徴は、調査結果に基づいて「この発明は特許の取得が可能or不可能」という見通しを立てるだけでなく、調査結果から世の中の技術動向を把握した上で、発明者、事業部、特許事務所の方々と一緒に出願内容をアップデートしたり、新たな出願について提案及び議論をしたりすることで、ビジネスインパクトのある特許取得を目指す点です。私もインターン期間中にはこの点を意識して取り組んでいました。
クリアランスと侵害回避設計
知財業務におけるクリアランスとは、既に認められている他社の特許を自社の開発内容が侵害していないか確認することです。前述の先行文献の調査と基本的なフローは似ていますが、侵害しているか否かの判断は、たった一つの文言や言い回し次第で結論が異なる場合もあり、より細かい点にまで注意を払わねばならない業務です。また、侵害回避設計とは、仮に実施すれば侵害の可能性があるといった場合に、他社の特許を侵害しないようにしながら、自社のビジネスへの支障が最小限となるような実施形態を新たに提案することです。
実際、クリアランス調査によって検知した先行文献に対して、侵害のリスクを0%にするための侵害回避の設計を、特許事務所の先生を交えて行いました。これらは技術理解並びに法的知識が求められるという知財ならではの業務であり、非常に勉強になりました。
発明を特許出願に向けて具体化
発明を特許出願に向けて具体化するというのは、発明(アイデア)の「効果・構成」から、なぜこの発明は「新規性・進歩性」を有するのかを言語化することであると私は考えています。この言語化作業は一見、アイデアを出した本人である発明者が担当すればベストなように思えます。しかし、特許出願ではただ発明の説明をするだけでなく、権利範囲の設計と「新規性・進歩性」を有していることを論理立てて主張するために一定の知財業務の専門性が求められ、発明者だけで担うことはベストとは言えません。
AI Strategy & Planningでは知財のバックグラウンドを有している点を活かして、発明者の方と並走してこの言語化作業をしました。具体的には、発明者や事業部の方々へのヒアリングを基に、出願の効果、先行文献、発明の構成を論理的かつ簡潔にまとめ、必要に応じて検討しきれていない内容を補充しながら、特許出願が可能な状態まで発明を具体化しました。
AI Labで知財業務をやるということ
どの企業も知財業務に取り組んでいると予想しますが、AI Labで知財業務を行うからこそ感じられたことがあります。例えば、AI Labは多くの学術論文を執筆して権威ある学会に採択されていますが、論文が採択された時点でビジネスへの導入方針が固まっているとは限りません。このような不確実性の高い状況で、将来に備えてどのように特許出願していくのか戦略を練るのは、AI Labにおける特徴的な知財戦略だと感じました。
また、AI Labだけでなく、サイバーエージェントは多種多様な事業・プロダクトを扱っており、広告からロボットまで多岐にわたる分野でイノベーションが生まれているため、知財業務を担うには刺激的な環境でした。
学びと感想
仕事の取り組み方やキャリア設計も含め、多くのことを学ばせていただきました。今回は知財に焦点を当てて二つお話させていただきます。
一つ目は知財実務に関する専門性です。インターンという立場でありながら、上記に記載したような知財実務に携わらせて頂いたことで、弁理士の資格勉強のみでは獲得できない経験を得られました。勉強した法的観点が、実務上では用いられないといった場面もあり、驚きと発見が多かったです。
二つ目は知財分野におけるAIの急速な発展です。AIに関する特許出願が爆発的に増加して競争が激化する中で、その競争の当事者として一定期間を過ごしたことは、今後のキャリアにおいても貴重な経験でした。また実際に自身が担当した知財業務の一部が、AIの利用によって時間短縮されたり、あり方が変わったりと、意外な所でAIの発展を肌で感じられて、AIによって今後の知財業務が変わる可能性を強く感じました。
今後の目標
私の一つの目標はサイバーエージェントの知財体制を強化することです。現状の知財体制を、より強化するための仮説をインターン期間中に立てられたので、その実行に取り掛かりたいと考えています。そのためにも引き続き知財のスキルを磨いていきます。
またサイバーエージェントは新しい事業やプロダクトがどんどん誕生する企業なので、知財スキルを一つの武器として新たな機会に柔軟に飛び込める人材になりたいと思います。
最後に
インターン期間中、AI Strategy&Planningのリーダーである岡本大和さんに多大なご支援を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。知財業務やAIの知見だけでなく、仕事の向き合い方など多くのことを学ばせていただきました。加えて、AI Lab京都拠点の皆様や、担当人事である村中さんと林さんにも、仕事やキャリアに加え、将来の目標についてまでご相談に乗っていただきました。重ねて感謝申し上げます。
今後ともよろしくお願いいたします。
以上、ご拝読いただきありがとうございました。