~大企業でAIコードエージェントを浸透させるための「外から攻める」戦略~
はじめに
はじめまして、AIドリブン推進室のGünther Brunner(グンタ・ブルンナー)です。
AIエンジニア兼クリエーターとして、サイバーエージェントグループ全体のAI活用推進と、開発者生産性・品質向上に取り組んでいます。
本記事は CyberAgent Developers Advent Calendar 2025 の最終日の記事です。
今日お届けしたいのは「ツール導入」の話でありながら、実はそれ以上に組織を動かすための“届け方”の話です。
TL;DR(先に結論)
- 大企業では、良いツールを作る/紹介するだけでは広まりにくい(壁が多い)
- そこで私は、社内浸透を「社内プロダクトのGTM(Go-To-Market)」として捉え直し、外部に話題を作って内側へ回り込ませる戦略を取りました
- 具体的には、外部イベント「AI Code Agents 祭り ~ 2025 Winter ~」を起点に、7つのテクニックを組み合わせました
- 結果:現地200+・オンライン事前登録1,300+、YouTube 20,863回再生でCyberAgent Developers公式YouTube史上No.1(2025年12月時点)
- ポイント:良いツールほど「届け方」で差がつく。外部の熱量=社会的証明は、組織の壁を越えます
📑 この記事の構成
Part 1: 背景と課題 — なぜ「外から攻める」戦略に至ったのか
Part 2: 7つのテクニック — 具体的な実践方法と学び
Part 3: 結果と波及効果 — 数字で見る成果とその後の展開
Part 4: 本当に伝えたかったこと — 行動へのエール
Part 1: 背景と課題
孤独から始まった物語
2023年のある夜、私は一人でCursorというエディタを触っていました。
当時、日本語の情報はほとんどない。社内で使っている人もいない。
孤独でした。
でも、触った瞬間、確信しました。
「これは、開発の歴史を変える」
その直感は、今日まで一度も揺らいでいません。 当時のCursorは荒削りで、見た目もUIも今ほど洗練されていなかった。 それでも“質的に違う未来”が見えました。
そして2024年9月11日、私はCursor専用のSlackチャンネルを作りました。
最初のメンバーは、私一人。通知音は、自分の投稿だけ。
それでも、誰かがいつか見てくれると信じて、書き続けました。
なぜ、変革は起きなかったのか
素晴らしいツールがあれば、人は使う。――最初はそう信じていました。
社内イベントで登壇し、Cursorの可能性を語り、デモも見せました。
でも、反応は想像よりずっと小さかった。
「へー、便利そうですね」
それで終わり。
翌日、オフィスを見渡すと、みんな同じエディタを使っている。
何も変わっていない。
あの日、私はようやく気づきました。
「良いもの」は、「届く」を保証しない。
届ける設計をして、初めて価値は動き出す。
これはツール推進に限った話ではありません。
プロダクトも、社内施策も、キャリアも、すべて同じ。
「価値を作る力」と「価値を届ける力」は、まったく別のスキルなのです。
なぜ、声は組織の壁を越えなかったのか
答えは、サイバーエージェントという会社の規模にありました。
連結従業員8,000人以上。86の連結子会社(2025年9月末時点)。
異なるSlackワークスペースを使い、各チームが独自の技術選定をしている。
一つの部署で何かを始めても、隣の部署には届きにくい。ましてや、別の子会社にはなおさら。
そしてサイバーエージェントにはボトムアップ文化がある。 自ら主体性を持って決断し、挑戦を推奨する企業文化です。
この文化は強みである一方、こういう現実も生まれます。
トップダウンで「明日から全員このツールを使おう」が起きにくい。
では、どうするか。
転機:「内」ではなく「外」
2024年の秋、私は一つ決めました。
内側から変えきれないなら、外側から風を吹かせよう。
社内には、Slackワークスペースや組織の境界が無数にあります。
一つひとつの壁を越えるのは、途方もない労力がかかる。
でも、外部からの情報は違う。
Xのトレンド、YouTubeの話題、技術コミュニティでの評判――
それらは壁を飛び越えて、全員に同時に届く。
「社内の話を外に出すのは不安」という感覚は私にもありました。
でも、ポジティブな取り組みを発信することは、会社のブランディングにもなり、
そして何より社内浸透の“ショートカット”になる。
だから私は、イベントを作ることに決めました。
ガイドライン整備、研修プログラム、トップダウンの方針策定……有効な手段は他にもある。
でも、私たちの組織文化と自分のスキルセットを考えたとき、
外部イベントが最もレバレッジが効くと判断しました。
誰もが無視できないほど大きく、話題になるイベント。
名前は「AI Code Agents 祭り ~ 2025 Winter ~」。
2025年2月26日、渋谷スクランブルスクエア21階。
企画から開催まで約3ヶ月。主なタイムラインは以下です:
- 11月:企画立案、登壇者へのDM開始
- 12月:登壇者確定、LP制作開始、会場確保
- 1月:connpass公開、集客、配信・翻訳準備
- 2月:最終調整、リハーサル、本番
🔗 イベントLP:https://events.code-agents.com/2025-winter
Part 2: 7つのテクニック
ここからは、私が実際に効いたと感じた「7つのテクニック」を、
狙い → やったこと → 再現のコツの順で整理して共有します。
テクニック① 人を動かす最短ルート:まず「一通」を送る
狙い:イベントの“信頼”と“集客”の起点を作る(影響力のある人の参加=社会的証明)。
時間もエネルギーも使うイベントは、集客できなければ意味がありません。 そこで最初に決めたのは、影響力のある人を巻き込むことでした。
ただ、私には人脈がありませんでした。
面識ゼロ。紹介なし。コネなし。
私がしたことは、シンプルです。
DMを送る。それだけ。
やったこと:相手にとっての価値を、先に言語化して伝える。
- ① 相手の発信を“具体的に”引用する(テンプレ感を消す)
- ② 届けられる価値を数で示す(例:参加者規模、アーカイブ、コミュニティ)
- ③ 依頼を小さく・答えやすくする(時間、形式、負担、締切を明確に)
DMはこんな構成で書きました:
📋 そのまま使えるDMテンプレート案
〇〇さん
突然のDM失礼いたします。サイバーエージェントの△△と申します。
〇〇さんの□□に関する発信を拝見しており、特に「××」という視点に深く共感しました。
現在、AIコードエージェントをテーマにした技術イベントを企画しています。
参加者(現地+オンライン)に向けて、〇〇さんの知見を届ける機会をご一緒できないかと思いご連絡しました。
ご多忙のところ恐縮ですが、ご検討いただけますと幸いです。
送信ボタンを押す瞬間、手が震えます。今でもそうです。
「無視されたらどうしよう」「迷惑だと思われたら」
そんな声が頭をよぎる。
でも、ここで学んだことがあります。
送らなければ、可能性は永遠にゼロ。
送った瞬間、ゼロではなくなる。
結果として、お声がけした方々から快諾をいただきました。
そこから紹介が紹介を呼び、登壇者のラインナップが一気に強くなっていきました。
最初の一通が、すべてを動かしたのです。
テクニック② 「誰のため」を先に決める:ペルソナを広げて“波及経路”を作る
狙い:「一部の好きな人だけ」のイベントにせず、社内外へ波及する経路を最初から埋め込む。
普通なら「エンジニア向けイベント」で終わりです。
でも、私は“波及を起こす設計”を優先しました。
| カテゴリ | なぜ必要か(波及の役割) |
|---|---|
| CA経営層 | 社内への影響力(意思決定・優先順位に効く) |
| 技術インフルエンサー | 外部からの集客・信頼性(社会的証明) |
| 社外実践者 | 現場での具体(再現性の核) |
| グローバル視点 | 未来の解像度を上げる(視野が広がる) |
| 社内実践者 | “うちでもできる”の証拠(社内の納得感) |
| 非エンジニア | ターゲット拡大(民主化の体現) |
| 若手エンジニア | 次世代の声(変化のエネルギー) |
| 海外CEOs | 話題性+一次情報(熱量が伝播する) |
AIコードエージェントは、もはや「エンジニアだけの道具」ではありません。
経営者がプロトタイプを作り、デザイナーがコードを書き、マーケターが分析ツールを自作する。
技術の民主化が、すでに始まっています。
特に経営層の登壇は、イベントのメッセージを一段上に引き上げました。
「現場の熱量」と「経営の視座」を同じ舞台に置くことで、
社内への伝わり方が変わります。
テクニック③ 「見た目」は思想を伝える:デザインに“本気”を込める
狙い:内容を“ちゃんと聴いてもらう”ための信頼を先に作る。
デザインは、言葉を超えた言語。
私は日本工学院のグラフィックデザイン科を卒業しています。
デザインが人の心を動かす力を、身をもって知っています。
イベントのLPはCanvaで一から作り、ビジュアルはAI画像生成を活用。
会場には3メートルのポスターを制作し、Illustratorでレイアウト、
Topaz Labsで画像をアップスケールしました。
なぜここまでやるのか。
LPは「情報の置き場」ではなく、信頼と熱量を伝えるメディアだからです。
クオリティは、沈黙のメッセージ。
“本気で作られたもの”は、見た瞬間に伝わる。
実際、このLPをシリコンバレーのフロントエンド領域で著名なプラットフォーム企業のCEOに見てもらう機会があり、
「素晴らしい」と言ってもらえた瞬間は、個人的にも大きな手応えでした。
テクニック④ 壁を取り払う:言語・環境の障壁をAIで溶かす
狙い:“分からないから離脱する”をゼロに近づける(参加者の認知負荷を下げる)。
海外登壇者を招く上で最大の課題は、言語の壁でした。
解決策として、CuckooというAIリアルタイム翻訳サービスを導入しました。
🔗 Cuckoo(公式サイト)
- 英語→日本語、日本語→英語の同時通訳
- 話者が途中で言語を切り替えても追従
- 参加ハードルを大幅に下げる
アンケートでも「まずリアルタイムAI翻訳がすごかった」という声が多数でした。
ここで伝えたいのは、翻訳ツールの話だけではありません。
私たちは日常的に、どれだけの“壁”を放置しているでしょうか。
「仕方ない」「こういうものだ」と諦めている障壁は、AIの進化で“設計可能”になっています。
問題は技術ではありません。取り払うと決めるかどうかです。
📍 ここまでのポイント(テクニック①〜④)
- ① DMを送る:社会的証明の起点を作る(人脈は“後から”できる)
- ② ペルソナを広げる:波及経路を設計する(届く範囲が変わる)
- ③ デザインに本気を出す:信頼を先に作る(内容を聴いてもらうためのUX)
- ④ 壁を取り払う:離脱要因を潰す(認知負荷を下げる)
後半では、体験設計・チームビルディング・継続を深掘りします。
テクニック⑤ 「体験」をデザインする:オンライン参加者も“主役”にする
狙い:オンラインを「おまけ」にせず、最大の到達点にする。
事前登録の段階で、オンライン参加が1,300人以上を占めていました。
つまり、イベントの価値の大半はオンライン側で決まる。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| プラットフォーム | YouTube Live同時配信 |
| 司会 | プロフェッショナルな進行 |
| 会場演出 | ライティング、雰囲気作り |
| 音響 | クリアな音声品質 |
結果として、配信品質の評価は4.6/5という高スコア。 驚いたのは、オンライン参加者の満足度(4.5)が、オフライン参加者(4.3)をわずかに上回ったことです。
「そこにいる」ことが、最高の体験とは限らない。
体験は、距離を超えてデザインできる。
テクニック⑥ 一人では何もできない:ビジョンで共感者を巻き込む
狙い:“推進担当の頑張り”を、チームの運動量に変える。
私一人では、何もできませんでした。
登壇者・運営チームの皆さんは、自分の時間を使ってこのイベントを支えてくれました。 報酬があったわけでも、強制されたわけでもありません。 動いてくれた理由は、ただ一つ。
ビジョンに共感してくれたからです。
人が動くのは、命令ではなく、共感。
「一緒に作りたい」と思ってもらえるかどうか。
私にできたのは、ビジョンを語り、熱量を見せ、意思決定を速くし、
“やりやすい形”に整えることだけでした。
それでも、共感してくれる人が一人、また一人と増えていきました。
テクニック⑦ 種を蒔き続ける:反応がなくても発信を継続する
狙い:一過性のイベントで終わらせず、コミュニティと習慣を作る。
最後は、最もシンプルで、最も難しいもの。継続です。
2024年9月11日、私はCursor専用のSlackチャンネルを作りました。
最初は私一人。
1週間経っても、反応はほとんどない。
1ヶ月経っても、同じ。
心が折れそうになる夜もありました。
「誰も見てないんじゃないか」「意味があるのか」
そんな声が頭をよぎる。
それでも、私は投稿を続けました。
新機能のアップデート。使い方のTips。海外の事例。
誰かが読んでくれると、信じて。
種を蒔かなければ、芽は出ない。
いつ芽が出るかは、誰にも分からない。
でも、蒔かなければ永遠にゼロのまま。
現在の状況
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| Slackチャンネルメンバー | 500人以上 |
| CA全体のCursorアクティブユーザー | 約1,000人 |
| AIコードエージェントのEnterprise導入 | Claude Code・Codex導入済み、Cursor検討中 |
一人だったチャンネルが、500人を超えるコミュニティになりました。
継続は、最も地味で、最も強い力です。
7つのテクニック まとめ
振り返ると、7つは独立したテクニックではなく、全部つながっていました。
- DMを送る(①)には、相手にとっての価値(②)が必要
- デザイン(③)と体験設計(⑤)が“内容”を届かせる
- 壁を取り払う(④)ことで、母集団が広がる
- そして最後に、仲間(⑥)と継続(⑦)が“運動”を続けさせる
どれか一つだけでも前進します。でも、組み合わせた瞬間に“うねり”が生まれました。
Part 3: 結果と波及効果
結果:数字が語る真実
イベント参加者数
- 現地参加:200人以上
- オンライン参加(事前登録):1,300人以上
- 合計:1,500人以上
YouTube実績
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 再生回数 | 20,863回 |
| 順位 | CyberAgent Developers公式YouTube史上No.1(2025年12月時点) |
CADC(CyberAgent Developers Conference)などの大型カンファレンスは、クリエイティブチームが本気で作り込んだ素晴らしいイベントです。 その動画と並ぶ数字をこのイベントで出せたことは、正直驚きでした。
でも、偶然ではないとも感じています。
「内容だけでは届かない」――届け方、見せ方、体験のデザインが揃って初めて、人の心に届く。
その“当たり前”を、今回は実証できた気がしています。
アンケート評価
| 項目 | スコア | 詳細 |
|---|---|---|
| イベント全体満足度 | 4.4 / 5 | 59%が最高評価「5」 |
| LT発表満足度 | 4.2 / 5 | 43%が最高評価「5」 |
| 会場・配信品質 | 4.6 / 5 | 特に問題なし |
「有料イベントにしても良いと感じた」
「最先端の情報が得られた」
「AIシフトが目前に迫っていることをリアルに感じられた」
— 参加者アンケートより
ビジョンは、現場から生まれる(そして繋がる)
今年10月、専務執行役員 技術担当の長瀬が「CA BASE VISION 2025」で、 「2028年までに開発プロセスの完全自動化(AI成熟度Level 4)を目指す」というビジョンを発表しました。
「AIエージェントとエンジニアが協働し、開発のあり方そのものを再発明する挑戦です」
— 長瀬慶重『2028年「開発プロセス完全自動化」を見据えた、エンジニア組織の構造改革』より
このビジョンを読んだとき、胸が熱くなりました。
なぜなら、私はずっとこれを目指して動いてきたからです。
AI Code Agents祭り(2月)を開催し、コミュニティを育て続けてきた。
そして10月、それが会社のビジョンとして言語化された。
現場の地道な積み重ねと、会社の未来が一本の線で繋がった。
あの孤独な夜から、ここまで来られた。そう実感した瞬間でした。
最初の1週間でできること(再現用ミニプレイブック)
- Day 1:推したいツールのSlackチャンネルを作る
- Day 2-3:自分が「効いた」Tipsを短文で投稿する(まずは小さく)
- Day 4-5:興味を持ちそうな同僚に直接声をかける(1on1が最強)
- Day 6-7:15分のミニ勉強会を企画する(ライトに、回数で勝つ)
長瀬の記事では、エンジニアの「リアルな不安」についても触れられていました。
- キャリア喪失への不安
- スキル劣化への不安
- 公平な評価への不安
- エンジニアの価値が変わることへの不安
- AI活用の組織的な格差への不安
これらの不安に対し、AIドリブン推進室が設立されました。
「この課題に対し、今年8月に専門組織『AIドリブン推進室』を新設しました。現場の自助努力だけに頼るのではなく、エンジニアとAIエージェントが協働する『自律型開発体制』の構築を全社横断で支援します」
AI Code Agents祭りは、その活動の先駆けでした。
外部イベントとコミュニティこそが、最強の社内外営業ツールになった まさにそう実感しています。
波紋は広がり続ける
イベントは終わってからが本番でした。
1. AI Agent User Group (AIAU) の爆誕
懇親会の熱気の中で、コーディングエージェントのユーザー会が自然発生的に生まれました。
🔗 https://aiau.group/
“推進担当が作ったコミュニティ”ではなく、参加者が自走して立ち上げた。
これが一番強い形だと思っています。
このコミュニティは今も活発に活動しており、日本のAIコードエージェント普及に大きく貢献しています。
2. Cursor Meetup #2 の開催
AIAUが主催し、私たちが会場を提供する形でCursor Meetup #2を開催しました。
光栄なことに、Cursor社のRyo Lu氏をゲストに迎えることができました。
このイベントは、エンジニアだけでなくデザイナー・クリエイターにもフォーカスしました。
“AIコードエージェントは、コードを書く人だけのものではない” その思想を形にできた瞬間でした。
3. 継続する影響
- 登壇依頼が来る
- 導入について声がかかる
- 社内での認知度が大幅に向上
- 他社からの問い合わせも増加
「外に出す」ことの効果は、想像以上でした。
そしてもう一つ強く感じたのは、
外に出すと決めた瞬間、アウトプットの品質が自動的に上がるということです。
外部の目があると、自然とメッセージを研ぎ澄まし、体験を磨き、「本当に伝わるか?」を問い直せる。
結果的に、社内向けのアウトプットも引き上げてくれました。
変わり続けることの覚悟
「まず使ってみる」より「使い続ける」が大事
AIツールは、触った瞬間の印象で判断すると損をします。
なぜなら、進化のスピードが異常に速いからです。
だから私は、月1回は再評価することをおすすめします。
「前に微妙だった」=「今も微妙」とは限りません。
固定観念という敵
人間には、一つの性質があります。
一度「NG」と認識したものには、心理的な距離を置きやすい。
「あのツール、前に使ったけど微妙だった」
その記憶が、半年後、1年後も残り続ける。でも、ツールは進化している。人間の記憶は、過去のまま。
最初の印象で切り捨てると、未来の自分の武器を逃す。
だから、意識的に「見に行く姿勢」が大切だと感じています。
一つのツール、一つの技術に固定されると、置いていかれるかもしれません。
私自身、複数のAIコードエージェントツールをフルタイムで使い分けています。
状況やタイミングによって最適解が変わるからです。
マルチベンダー、マルチエージェント戦略。
一つに賭けるのではなく、常に再評価し続ける。
それが、この変化の時代を乗りこなす一つの方法だと考えています。
うまくいかなかったことも正直に
成功談だけだと再現性が落ちるので、うまくいかなかったことも共有します。
- 最初の社内登壇は、ほぼ響かなかった:技術説明に寄り、ストーリー(なぜ今・なぜ自分たち)が弱かった
- ドキュメント整備だけでは広まらなかった:読む人は限られる。体験の導線が必要
- 全員に刺さるメッセージは存在しない:層ごとに価値が違う(経営=生産性、ベテラン=開発体験、若手=武器、非エンジニア=プロトタイピング)
これらの失敗があったからこそ、「外部イベントで大きな波を作る」という選択に行き着きました。
内側から一人ずつ説得するより、外から回り込む方が結果的に効率が良かったのです。
Part 4: 本当に伝えたかったこと
私が本当に伝えたかったこと
この記事は「7つのテクニック」と銘打ちました。
でも正直に言うと、本当に伝えたいのはテクニックではありません。
行動すること。
DMを送る。イベントを企画する。チャンネルを作る。登壇する。
怖い。恥ずかしい。断られたら凹む。
私も今でもそうです。毎回、心臓がバクバクする。
でも、行動しなければ、何も始まらない。
世界は、動いた人の味方をする。
諦めないこと。
最初は誰も来なかったSlackチャンネル。
反応の薄かった社内登壇。
「また空振りか」と思った夜も、数え切れない。
それでも続けた。
なぜなら、正しいと信じていたから。
信じる力だけが、諦めない力になる。
人を巻き込むこと。
一人でできることには限界があります。
でも、ビジョンを語れば、共感してくれる人が現れる。
一人が二人になり、二人が十人になる。
その瞬間、不可能だったことが可能になる。
外に出ること。
組織の中だけで完結しない。
外部のコミュニティと繋がる。発信する。
その波紋が、回り回って内側に届く。
良いプロダクトを作るにも、大きな仕事を成し遂げるにも、
外のコミュニティとの繋がりが不可欠だと、今は確信しています。
おわりに
2023年、私は一人でCursorを触っていました。
2025年末。サイバーエージェントでは職種問わず、約1,000人がCursorをアクティブに使っています。
Claude CodeやCodexはEnterprise導入済み。CursorもEnterprise検討が進んでいます。
孤独な時期もありました。
反応がなくて心が折れそうな時もありました。
「意味あるのかな」と自問した夜も、何度もありました。
でも、続けてきて良かった。
これからもAIコードエージェントを推進し、環境整備を進めていきます。
何かあれば、お気軽にご連絡ください。
一緒に、未来を作りましょう。
イベント情報・リンク
🎯 AI Code Agents 祭り ~ 2025 Winter ~
- 公式LP:https://events.code-agents.com/2025-winter
- connpass:https://code-agents.connpass.com/event/342240/
- YouTubeアーカイブ:CyberAgent Developers公式チャンネル
- Xハッシュタグ:#AICodeAgents祭り
🔗 関連リンク
- AI Agent User Group (AIAU):https://aiau.group/
- 長瀬のアドベントカレンダー記事(初日):2028年「開発プロセス完全自動化」を見据えた、エンジニア組織の構造改革
筆者について
Gunther Brunner(グンタ・ブルンナー)
株式会社サイバーエージェント AIドリブン推進室
- 🐦 Twitter/X:@gunta85
OpenSTFの生みの親として、GitHubスター1.3万以上を獲得。
現在はAIを活用した開発生産性の革新に取り組み、次世代の開発環境の在り方を探求している。
良いお年を。🎄
2025年のアドベントカレンダー、最後までお読みいただきありがとうございました。
来年も、変化を恐れず、挑戦を続けます。
皆さんも、今日から始めてください。
DMを送るのに、許可は要りません。
チャンネルを作るのに、承認は要りません。
始めるのに、完璧な準備は要りません。
必要なのは、最初の一歩だけ。
この記事が心に響いたら、ぜひシェアをお願いします。
あなたの「始める」が、誰かの「始める」に繋がるかもしれません。
そうやって、世界は少しずつ変わっていく。
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