こんにちは、株式会社サイバーエージェント 秋葉原ラボの高野です。2018年8月3日に行われた「WWW2018論文読み会」のレポートをお届けします。

WWWは情報系トップカンファレンスのうちの一つで、その名の通りWebに関する国際会議でシステム・検索・機械学習から社会問題まで幅広いトピックを扱っています。 発表された全ての論文は以下のサイトで公開されています。

この論文読み会は後述の弊社秋葉原ラボのエンジニアの5名がWWW2018の発表論文から各自のテーマに沿っていくつか選び、興味深いと感じた論文をいくつかご紹介するものです。Webの最前線を把握し、Web業界のエンジニア・研究者として目指すべき方向を参加者の皆様と議論することを目的としています。当日は42名の方にお越しいただき、懇親会では紹介論文や国際会議の動向などについて議論が行われました。
このレポートでは各発表の概要をスライドともにご紹介いたします。

ごあいさつ

Webと経済学

Webと経済学というテーマで、Web Economics, Monetisation, and Online Markets セッションの論文を數見が紹介しました。このセッションで報告された論文の多くは、オンラインの広告市場における広告商品や取引形態に注目をし、参加する経済主体の収益最大化問題を解くことを目的としていました。

発表では、本セッションで報告をされた論文のいくつかは、収益最大化のために(1)広告商品や取引形態の特徴、(2)予測アルゴリズム、(3)エージェントの行動という3つの側面のいずれかに注目をしていることを、他会議で発表された論文を交えて紹介をしました。

數見の発表の様子

Webとメディアと社会的分断

Webとメディアと社会的分断をテーマとして Web and Society セッションの中から7つの関連論文を高野がレビューしました。 発表では社会的分断や関連トピック(選択的接触、エコーチェンバー、コミュニティの対立、マスメディアの役割)について解説しつつ、それぞれに対応する論文をご紹介いたしました。

高野の発表の様子

WebにおけるHuman Dynamics

武内は、Social Network Analysis and Graph Algorithms for the Web セッションの中から、WebにおけるHuman Dynamicsをテーマに2つの論文をピックアップしてご紹介しました。

1つ目は、Webにおける情報拡散現象のモデル化の研究で、病気の感染現象や地震現象などのモデルを上手く取り入れることで、より汎用性の高いモデルを提案しています。2つ目は、社会ネットワーク上での意見形成についての研究で、意見形成ダイナミクスのモデル化やその制御効率の評価を実施している論文です。

武内の発表の様子

Web Search and Mining

Web Search and Miningというセッションについて角田が発表いたしました。このセッションでは表題の通り “Search” と “Mining” について扱っておりますが、その内容は多岐にわたります。例えば “Search” では、検索のためのより優れたハッシュ化手法の提案を行う論文から、人間の検索行動の分析といった論文までと様々な報告がありました。

本発表では、前半ではセッションの論文を細分類しながら俯瞰し、後半では2つの論文を取り上げて要点を紹介しました。1つ目の論文は EC サイト等を対象としたレーティング予測を目的とした研究です。また、2つ目の論文は EC サイト等で「お気に入りに追加」することでランキング上昇を企む新しいタイプのスパムを対象とし、分析と検出を試みる研究です。

角田の発表の様子

User Modeling, Interaction and Experience on the Web

User Modeling, Interaction and Experience on the Web セッションは山本が担当いたしました。このセッションは推薦システムを中心として手広く機械学習・統計解析を扱うものとなっています。本発表では発表論文のうちで推薦システム、分類・回帰モデルのトピックに絞り概要を紹介しました。

山本の発表の様子

おわりに

この読み会では上記のように発表者が自身の興味のあるテーマを設定して、それに沿って論文をご紹介いたしました。WWWはアイデア・切り口が興味深い論文が多く、読んでいて/紹介を聞いていてワクワクする研究が多くありました。

WWWは非常に幅広いトピックを扱う国際会議ですので、自分の業務・研究とは少しズレた、普段読まないような論文も読むことになりました。これによって自身の業務・研究の幅を広げることができそうです。ご参加いただいた皆さまや上記の資料を御覧頂いた皆様の幅を広げるきっかけにもなれば幸いです。

参考

秋葉原ラボ 発表論文一覧