お疲れ様です。アドテクスタジオの西山・黒崎です。本記事をまさに今読んでいるみなさん、こちらの記事はご覧になったでしょうか?

[アドテクスタジオのインターン「アドテクコンペ」を開催しました]

 僕らの後輩にあたるアドテクスタジオの18新卒運営メンバーは、今年度のアドテクコンペを企画から運営までやりきり、見事大成功を納めました! 配属から数ヶ月で本コンペの企画をし、自プロダクトの業務と並行して準備や開発を頑張っていました。本コンペに類するものは過去何度か実施しているのですが、今回は総勢34人もの学生が集まった中での大成功です。配属されたばかりで忙しい中、非常に良い結果に終わったと思います。

 さて、18新卒運営メンバーが企画運営をしていた中、僕らは何をしていたかというと、彼らの企画運営のメンター、マネジメントに関わるようなことをしていました。本記事では、僕らがどのようにして彼らのメンタリングや管理をしたのかについて、現、あるいは将来のマネジメントレイヤーの方々に向けてお話ししたいと思います。

背景

 アドテクスタジオでは例年、ひとりDSPと呼ばれる新卒研修が行われています。ひとりDSPはアドテクコンペのもととなる研修であり、アドテクスタジオに配属された新卒が、1週間かけてDSPと呼ばれる広告枠入札システムの開発を行い、仮想の広告枠オークションを通して、その性能を競い合う研修になります。実はこの研修、僕らが配属された2015年から実施されている研修であり、僕らにとっては思い入れの深い研修となります。この研修での評判を機に、アドテクコンペというものが企画されるようになり、主にその年の新卒メンバーを中心として企画・運営をするようになりました。
 僕らもかつて、アドテクコンペの企画・運営をしており、同期メンバーとタスクに追われながら開発したり、あれこれ議論しながらレギュレーションを作ったりなど、大変良い経験をしました。アドテクコンペが終わった後に、競技者があげてくれたブログは運営メンバーの良い励みになりました。
 一方で、本取り組みの成果や個人の貢献をどうフィードバックするのかという問題がありました。現場社員が面白い採用イベントを企画して運用する取り組みはサイバーエージェントの文化でもあり、今後も継続されるものにするために評価やフィードバックの仕組みを考えるべきであると思いました。

 そこで僕らは、今回運営メンバーのメンターとして運営メンバーと関わり、彼らの取り組みを社内に、特に彼らの上長やメンターへフィードバックできるよう、いくつかの施策を打ちました。以降で、僕らの活動をOKR形式で紹介したいと思います。

目標(Objective)

 上記のような経緯から、まず僕らは以下のような目標を掲げました。

  • 運営メンバーの活動がきちんと社内で評価される
  • 運営メンバーの稼働を抑える

主要な結果の設定(Key Result)

 目標を実現するため、僕らは次のようなようなことを計画しました。

  1. 2人でマネジメントをする(初期から計画)
  2. 運営メンバーを選任する(初期から計画)
  3. キックオフ(選任後に計画)
  4. 運営の活動を公開する(初期から計画)
  5. 振り返りをする(選任後に計画)
  6. 上長及びメンターへのフィードバックをする(初期から計画)
  7. その他、状況のヒアリングなど(随時)

 何をやるかはだいたい初期から相談して決めていました。キックオフや振り返りはもともとやるつもりではなかったのですが、準備が始まってからその必要性を感じ、実施するに至りました。

結果

 ここからは、それぞれのKey Resultがどうだったかについて書いていきます。

1. 2人でマネジメントをする

 僕ら的にはちょっとした冒険でした。僕らの気持ち的には責任が分散し、あまり気負いすぎずに進めることができました。一方で、2人で言ってることが相反してしまうと、それを聞いた運営メンバーが困ってしまう危険があるので、ちょっとしたことでも裏でchatをして、合意をとってからメンバーに共有するなど、時間をかけていました。
 chatではお互いメンバーとやりとりしつつも、西山が主にメンバーの相談に乗り、黒崎が主に人事や上司とのやりとりをするなど、(意識していたわけではないですが)役割分担も比較的うまくいっていたのではないでしょうか。

2. 運営メンバーを選任する

 新卒の中で、一番協力してくれそうなメンバーに、はじめに声をかけました。他のメンバー選任については彼に一任しました。これは非常にうまくいって、その日のうちに5人のメンバーが決まりました。その後、新卒の中で話し合い、アドテクスタジオに配属された新卒全員の10人が運営をすることになりました。この話を最初聞いたとき、10人でやることに多少不安を覚えましたが、彼らの意志を尊重することにしました。このとき、データ生成にあたって、アドテクコンペ参加経験を持つ17卒のデータサイエンティストもメンターとして協力してくれました。

3. キックオフ

 2で少し触れた通り、10人で運営することは難しいと感じていました。なので、一度全員で集まって、アドテクコンペの趣旨や意義を説明するキックオフを行いました。かなり急でこの時間を作ったので資料などは用意できませんでしたが、ざっくりと以下のようなカンペを2人で擦り合わせてキックオフに臨みました(ちょっと恥ずかしいですね^^;)。

スクリーンショット 2018-10-26 午後6.56.35

 配属されてから間もない彼らに、業務タスクと並行してインターンの企画・運営のタスクをすることは難しいチャレンジであることを伝えた上で、僕らにとってもあえて2人でマネージャーをする1つのチャレンジであるとも言いました。ついでに、この直前に西山はmanagement3.0の研修を受けていたので、そのときに学んだマネージャーの位置付けの話もしてみました。
 どの程度、メンバーに伝わったかは測ることができませんが、たまにメンバーと話す際には、理解を示してくれていたような感触が得られました。

4. 運営の活動を公開する

 アドテクスタジオのエンジニアたちは、主にslackでコミュニケーションをとっています。僕らは、そこに運営の公開チャンネルを作り、運営や準備の会話をそこでとってみるよう提案しました。これにより、アドテクコンペの活動内容がアドテクスタジオ全体の目に触れることを期待しました。
 これは実際にやってみたところ、このチャンネルに参加してくれた人は少なく、あまり効果がありませんでした(残念)。頑張っている所に変なヤジを入れないほうがいいだろうという配慮をしてくれていたからかもしれません。

 一方で運営メンバーは、アドテクコンペで使うアプリケーションを、サーバ・インフラ班、データ生成班に分かれて作業をしていたため、このチャンネルをお互いの作業に関わる部分のコミュニケーションに利用していました。それぞれの作業については、さらに別チャンネルを作ってコミュニケーションをしていました。
 元々の狙いは果たせませんでしたが、彼らは上手に利用していたと思います。

5. 振り返りをする

 (準備期間に査定の期間が被ってしまったこともあり)彼らの活動の振り返りを2回実施しました。形式はスタンダードなKPTです。振り返り実施日の前に下画像のようなシートを共有しておき、このシートを元に当日振り返りを行いました。ここでの僕らのお仕事は、この振り返りのファシリテーションでした。

スクリーンショット 2018-11-01 午後6.34.43

 上記は第1回目の振り返りの様子です。Keepの数が多くて雰囲気が良いことが伺えます。サーバー班は主にモブプロで開発していたようですが、それが好評だったようです。
 一方で、Problemは少ないものの、1つ1つのTryが非常に長いことがわかります。これは、本Problemについてヒアリングしたことをメモがわりにまとめていて、それを踏まえてTryを決めようとしたからです。

図1

こちらは、インターンが終わった後に実施したものです。まず伺えるのは、Problemの多さです。インターン自体は非常に盛況だったと思います。それでもこれだけ改善点が出るというのは、それだけ真剣に取り組んだからなのでしょう。次回のインターンの主催で生かされ、さらに良いインターンが実施されることを願います。

フィードバックをする

 振り返りの後に僕らは、自己・他者評価用のGoogleフォームを配布し、評価をしてもらいました。こちらも、運営を通して2回行いました。

 第1回目の評価には以下のような項目を設定しました。

自己評価シート

  • 自身の担当した作業
  • 自身のアドテクコンペへの貢献内容
  • 自己評価(S, A, B, C, Dの5段階)

多面評価シート

  • 評価対象者
  • 対象者が担当した作業
  • 対象者のアドテクコンペへの貢献内容

 これを元に資料を作成し、上長へフィードバックしました。振り返りの後というタイミングにしたのは、自分らのした作業を思い出すきっかけにできると思ったからです。
 これはそれなりにうまくいきました。まずは他者評価に目をつけ、「誰が」「誰を」評価したのかを有向グラフによって表現しました。可視化してみると面白いのが、彼らがメンバーとどのような関わりを持って作業をしていたのかがわかります。

rank_directed_graph (2)

 このデータと、実際のslackでのやり取りや会話を踏まえて、下記のような主観的な考察を行うことができました。

  • ほぼ全員が「評価者」でありかつ「被評価者」であった
  • データ班(C, D, G)はお互いに作業を把握しており、うまく連携していた
  • サーバー・インフラ班(それ以外)は被評価者に偏りがあった

 この評価シートにおいて失敗だと感じたことは、「これだけでは何をもって自己評価をその評価としたのかがわからない」ことです。どのような目的意識を持っていたのかという部分は大事だとおもうので、この点をきちんと触れられなかったのは失敗でした。

第2回フィードバック

 第1回の反省を生かし、自己評価の評価項目に以下のような項目を追加しました。

自己評価シート

  • アドテクコンペを運営するにあたっての狙い
  • アドテクコンペの反省点

 加えて、多面評価の人数に制限をかけない旨を追記しました。結果として、第1回よりもリッチなフィードバックができました。「アドテクコンペを運営するにあたっての狙い」は、本来あらかじめ決めておくのがよいかと思われますが、ないよりはましということでこの問いを加えました。

 第2回では、「多面評価の人数に制限をかけない旨を追記」したことで、第1会よりもグラフがフルメッシュに近くなってしまい、一目見てもわからないことでした。そこで、各リンクについて、「多面評価における対象者の貢献内容」と「自己の貢献内容」の文章の類似度を計算し、類似度に応じて矢印に濃淡をつけるアレンジを加えました。これによって、可視性が高くなりました。実際のグラフは以下になります。

rank_directed_graph (1)

 矢印の色が比較的濃い矢印をたくさん受けているメンバーというのは、「自身の貢献をよく理解していて、かつ周りからも理解されている」ことになります。また、矢印の色が比較的濃い矢印がたくさん外に出ているメンバーというのは、「他のメンバーの貢献内容をよく理解している」ことになります。一方で、薄い矢印の場合、本人が認識していない貢献内容があり得ることがわかります。
 このように可視化することで各メンバー間の暗黙的な役割を把握し、評価に結びつけやすくなったと感じています。

メンバーのステータスを把握するため、データを集めることは重要であり、それを解釈可能な形で可視化することに意味があると感じました。

7. その他、状況のヒアリングなど

 彼らからの質問や相談は、基本slackで随時受け付けていました。「作業時間が取れない」という問題に対して、集中して開発してもらうための会議室を借りるなどの雑務も行なっていました。

 この運営作業において、1回目の振り返りの後からインターン実施までの間に、1度だけサーバー・インフラ開発の進め方についてもめたことがありました。最終的に彼らはこの問題を自分らの力で解決しましたが、少しだけ相談に乗りました。主な原因は「一部のメンバーに負荷が偏ってしまった」ことでした。僕らが関わった内容として、メンバーにヒアリングをし、各人の担当作業やその進捗を聞いていきました。結果として、「遅れてはいつつも、完成には近づいてい」たことが分かり、偏っていたタスクは他のメンバーに担当してもらえることになりました。このとき、メンバー中で一番実装力のあるメンバーが責任をもって引き継いでくれて、とても頼もしく感じたことを覚えています。

 (実はこの問題の裏で僕らは、完成しなかった場合に備えて古いSSPを引っ張り出して動かす準備をしていたりしましたが、きちんと完成させてくれて本当に良かったです?。)

失敗したこと

もちろん、失敗したことも多かったです。特に、稼働の管理をメンバーに丸投げしてしまったのは、「稼働を抑える」という目標に反する大きな失態でした。稼働の管理をメンバーに任せるにしても、振り返りの頻度を高めるなどして、メンバーの稼働状態を把握できる予防線を用意しておくべきだったと反省しています。

まとめ

 僕らは、アドテクコンペにおいて、運営メンバーがきちんと評価されること、稼働を抑えることを目標に、マネージャーのような役回りをさせてもらいました。

そもそも、OKRのもとで本プロジェクトをスタートさせたわけではないので、Key Resultが定量的ではないのですが、体感としての達成度をあげておくと次のようになります。

  1. 2人でマネジメントをする 50%
  2. 運営メンバーを選任する 100%
  3. キックオフ 40%
  4. 運営の活動を公開する 30%
  5. 振り返りをする 70%
  6. 上長及びメンターへのフィードバックをする 85%
  7. その他、状況のヒアリングなど 70%

Key Resultの達成率は65%と行ったところでしょうか? 運営メンバーが評価されるよう、様々な施策を打てたことは非常に満足です。エンジニア的な工夫により、かれらの貢献を可視化したことは、大変でしたけれども良い経験になりました。稼働を抑えられなかった点については、今後、同じような立ち回りが必要になった際にうまくやれるよう改善したいところです。

 ちなみに当日、僕らはアドテクコンペ参加者の成果物プレゼンの審査員をさせてもらいました。優秀な学生たちと接点が持てて嬉しい限りです。これも、彼らが時間をかけて書類選考をした成果だと思いますし、楽しいイベントのおこぼれに預かれて良かったです?

2015年新卒入社のサーバーサイドエンジニアです。広告運用ツールの開発をしています。Ubongo3Dが得意です。