先日、hey×BANK×CyberAgentの3社で「経営者との共通言語の作り方」という勉強会を実施しました。

デザイナーにとって、経営者の性格やチーム体制、自分の立場など様々な環境要因で求められるコミュニケーションは変わってきます。そのテーマに対して各社のスタープレイヤーたちはどのようなノウハウやマインドで仕事しているのかをお話していただきました。

 

今回登壇していただいたのはhey 松本隆応さん / BANK 河原香奈子さん / AWA 室橋秀俊さん、パネルディスカッションのモデレーターにはCyberAgent クリエイティブ統括室 室長の佐藤洋介さんに務めていただきました。

 

それでは早速今回の内容をレポートします!

 

デザイナーのためのビジョン・クライミング入門

コイニー株式会社 ヘイ株式会社 リードデザイナー 松本隆応さん

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松本さんには、heyのCIデザインプロセスで経験したことを元に、その学びや気づきを整理されたことをお話しいただきました。

その経験は、まさに山登りのようだったと語る松本さん。詳細に振り返っていく中で、ビジョンを「つくる」みたいなものはよくあるけれども、そのビジョンという山を「登る」ための方法論はあまり言語化されてないのではないか?と考えたきっかけから「ビジョン・クライミング」と称して、その方法論をまとめたそうです。

 

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この「山」には、

  1. 準備(共通言語)
  2. 登山(対話)
  3. 下山(ストーリー)

というポイントがあります。

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第1ポイントの「準備」では「クエスティングによってビジョンの解像度をあげる」がテーマでした。

「クエスティング」の定義や、その具体的な実践方法については、3つのキーワードで整理されていました。

まず、フレームワークで全体像を構造化して把握する「コンテクストマップ」。次に、ビジョンの意味を歴史と未来の時間軸で把握する「意味の地層」。そして、複数の考え方のルートを見つけておくことで、すぐに軌道修正できるようにする「思考のルート」。これらの実践を積み重ねることが、次のポイントにおいて重要な対話のベースになるということでした。

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第2ポイントの「登山」では「対話のベースキャンプをつくる」というテーマでした。

デザインのゼロイチのプロセスでは「プレゼンの崖」が存在する、と話す松本さん。

認識が合わず「思ってたのと違う…!」という、崖から落ちるような経験、デザイナーなら一度は体験していますよね。

ここでは、未完成であることを恐れずポイントを明確にオープンに対話し、デザイナーの思考だけではたどり着けないようなデザインを生み出すことが大事だということでした。

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第3ポイントの「下山」では「ストーリーのトレイルをつくる」というテーマでした。

つくり出されたビジョンやビジュアルは、みんなの“自分ごと化”へとたどり着けない意味がないということ。そのため、ビジュアルを見た先にイメージできる世界観をつくり、その中で語り続けることで、だれもがビジョンの視座にたどり着けるストーリーの道を整えていくことが大事だということでした。

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「リーダーシップよりもフォロワーシップ」

最後に松本さんはこうお話されました。

ビジョンの良き理解者を目指すことが対話的デザインプロセスにつながっていくということ。それらを言語化し、登山という形になぞらえてわかりやすく表現された松本さんに、共感と感動の声があがっていました。

 

 

事業の可能性を可視化するためのデザイン

BANK 河原香奈子さん

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河原さんには、経営者とどう対話しながらCASHをかたちにしてきたかをお話ししていただきました。

BANKで新規事業を作るときは、以下のような流れで進めることが多いそうです

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ここで大切にしているのは、これは「経営者の仮説を全力で検証するためのプロダクト開発」とのことです。

 

そしてBANKの経営者は「感覚派」だと語る河原さん。

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そんな経営者とデザイナーのやり取りの中で、以下のような出来事があったそうです。

 

CASHのデザインの世界観について一旦FIXしたが、どうも腑に落ちない日々が続く河原さん。

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せっかく新しい価値観のプロダクトを作っているのでビジュアルもそれを体現したほうがいいんじゃないか?ということで、2017年当時のフィンテックのかっちりしたイメージとは真逆の方向性で考えてみようと思い至ったそうです。

 

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印象的だったのは、このように自分たちが作りながら「作っているもの」を理解するフェーズがある。というお話でした。

経営者のGOサイン=OKというスタンスではなく、ギリギリまで最適な切り口を追求する大切さを体現したような出来事でした。

 

また、それらを進める際に素早くモックにすることでイメージを共有できるようにしており、時には開発より先にコンセプト動画を作ってしまうことさえあるそうです。

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最後にデザイナーの強みは「可視化」できることだと河原さんはおっしゃっていました。

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heyの松本さんと同じく、経営者との対話の中で経営者orデザイナーだけでは生み出せないようなデザインを生み出すことが大切なのだと深く考えさせられました。

 

 

 

リブランディングではない設計思想からのUIデザイン

AWA 室橋秀俊さん

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室橋さんからは、AWAが今年1月に行った初のメジャーアップデートに対して、デザイナーがどのように動いて実現したかについてお話いただきました。

 

今回の大型アップデート(ver 2.0)は、主に情報の整理と適切なUI変更を目的に行ったそう。

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それを推進して実行していくために大事なことは一つで、「デザイナーから経営陣を巻き込む」とのこと。

そのためには、経営陣とデザイナー間で信頼関係を築かなければいけません。

室橋さんは、デザイナーがアウトプットの良し悪しだけではなく、日頃から事業について考えてるか?またそれが経営陣に伝わってるか?を大事にすることで信頼関係を築くようにしているそうです。

 

ただ「デザインを変えたいです!」だけではなく、経営陣が求めていることを見極め、それに対する解答としてデザインに落とし込むことができれば実現に向けて大きく前進できる、とおっしゃっていました。

 

また、後半はAWAのアップデートの事例を詳しく紹介していただきました。

元々きっかけとなった課題としては、プロダクトとして機能や画面を追加するにあたり「余白」が足りないこと。長く運営しているプロダクトにとってはかなり身に覚えのある現象かと思います。

 

このアップデートを仕込むなら今だ!というタイミングがあったそうで、それをふとした時に経営陣に伝えられたのは、やはり普段から信頼関係を築いていたからに違いありません。

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実際に情報整理をする際は、デザインのラフスケッチを紙に書き、本質的なところに集中するため具体的なデザインをしないことを意識していたそうです。

 

 

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ただ、サービスリリース時のver 1.0はその逆で、具体的なデザインから進めて尖ったプロダクトを作ろうとしていたようで、臨機応変にデザインプロセスを変えるのは素晴らしい判断だな、と強く印象に残りました。

 

 

最後に

パネルディスカッションも和気あいあいとした雰囲気で進み、登壇者の方々のデザイナーとしての特性も垣間見え大盛況の中終えることができました。

松本さん、 河原さん、室橋さんそれぞれの経営者との関わり方があり、大変学びの多い会となりました。

手法やプロセスは違えど、経営者とデザイナーから生み出すものをいかに最大化するか、また世の中と繋ぐためにデザイナーがどんな役割を担えるか、これらは共通してそれぞれの志として感じられたように思います。

 

デザイナーとしてどのように組織に関わっていくか、今後も思考し取り組んでいくためのいい機会となりました!

 

shunsuke
2015年新卒入社。同年7月に株式会社AbemaTVに出向しiOS/AndroidアプリのUIデザイナーとしてAbemaTV(現ABEMA)の立ち上げを担当。 2016年4月にリリースのち、プロダクトデザインオーナーとして引き続き機能開発、グロース、各デバイス対応などの運用を担当中。