「#あなたはどんなPM?」連載VOL,2
樋口 一裕 / Ameba シニアプロダクトマネージャー
Amebaのプロダクトマネージャーの樋口(@kzhrhgc)です。Ameba Ownd、REQUなどの新規プロダクトの立ち上げからグロースフェーズを数度経験して、Ameba全体のプロダクト責任者として2018年の10月からチームにジョイン。
連載 「#あなたはどんなPM?」 全5話で、サイバーエージェントの各事業のプロダクトを担うPMUリーダーに、 「サービスフェーズ×ドメイン」で変化するPMの役割や経験談を語っていただきます。
Amebaは2004年にリリースして今年で15年になり、長く運用されてきたプロダクトならではの様々な課題がありました。そのすべてを短期的に解消することは難しいですが、私がジョインしてから9ヶ月で取り組んだことをお話ししていきます。
自走できる組織をつくる
ーー Amebaに異動してどんな印象を最初は持ちましたか?
Amebaは国内No.1のブログサービスです。トラフィック規模は膨大で、長く運用してきたことでシステムは複雑化し、さらに、メディアの指標と広告を中心とした収益の指標が絡み合っています。これにより企画から実行、開発までに考慮しなければいけないことが膨大にあり、チームメンバーがやりたいことをスピード感を持って実行しにくい状況があると感じました。
私個人としても、これまでに関わってきた新規事業と同じ動き方では立ち回れないことは明らかでした。REQUのような新規事業では、MVPを実現し最速で尖ったプロダクトを市場に届けるために何でもやることを意識していましたが、今のAmebaのフェーズと規模のプロダクトをアップデートしていくためには一人のPMががむしゃらにやるだけでは限界があります。
そこで、自分が直接動かすプロダクトを持ちながら、自走できる組織を目指して組織づくりに取り組みました。
組織を常にアップデートしていく
ーー どのように組織づくりをしたのでしょうか?
組織開発で私が実施した大きな打ち手はチームを分割することです。
Amebaの約80名のプロダクトチームを機能やユーザー体験などの軸で13の小さなチームに分割することで、チームメンバーが解決する課題がシンプルになり解像度を高めることが狙いです。
ミッションがより明確になった上で、各チームに意思決定の権限を委譲し、チームがオーナーシップを持てるように組織のワークフローも同時に変えました。
各チームは数名〜十数名の構成で、ミッションの達成のために企画からリリースまで自走できる体制です。私やリードメンバーと適切なタイミングでコミュニケーションを図る会議体を設け、プロダクトの方向性をディレクションするようにしています。
この変化に大きな反発はありませんでしたが、うまく適応したチームと苦戦するチームが生まれました。私の経験不足もあります。そこに対しては組織を常にアップデートし続けることで改善していこうとしています。
ここ半年の間に一度アップデートを行い、現在ではSpotifyのSquad/Tribe制を採用しています。自律した組織を目指し今後も改善を続けていきたいと考えています。
ーー 組織づくりにメンバー巻き込む上で、気をつけていることはありますか?
チームづくりにおいては、成功している他社のノウハウを意識的に吸収しています。Spotifyの他にも、GoogleやSalesforceのTrailheadなどを参考に成功しているチームが実践していることを私のチームにローカライズしています。このような企業が自ら発信している自社のノウハウには実用性が高いものが多いと思います。
また、成功しているチームのノウハウの採用はチームメンバーの同意を得やすいと思います。あの会社のやり方がうまくいっているから試してみたいんだよね、というコミュニケーションで組織を常にアップデートしても怒られないチームの関係性も大事にしています。
データ、ドキュメント、コミュニケーションを民主化
ーー 他にも取り組んだことはありますか?
チームの自律の促進のためにナレッジマネジメントやコミュニケーションの透明化も推し進めました。具体的には、データ、ドキュメント、コミュニケーションの三軸で取り組んでいます。
例えばコミュニケーションで言うと、SlackのPrefixルールを定めリネームをすることと、プライベートチャネルを非推奨とすることの二点を実施しました。
データ軸でも、アナリストやデーターマネージャーが中心になり、組織のデータ利活用の成熟度の目標を定め動いています。直近で着手していることはログフォーマットのリデザインとTableauのレポートのビジュアライズの強化です。ちょっとした工夫から、ナレッジベースのWikiの引っ越しまで大小様々な施策を実施し情報の透明性や検索性をこの9ヶ月で大きく改善することができました。
この取り組みの実行は、有志のワーキンググループが中心になって推進されています。結果、各メンバーがチームへの貢献に取り組める機会が生まれ、現場からの声により非常に高く実用的な改善が図れています。
また15年の負債に苦しんできた当事者なので、今の状況を打開することへの熱量も高く良い取り組みになっています。
お客様が本当に必要としているものや解決したい課題に応える
ーー利用者が多いサービスでの新たなチャレンジは難易度が高いものと想像しますが、進める上での障壁の向き合い方として心がけていることはありますか?
大事だと考えていることは2つあります。
1つは、課題を小さくしてクリアにすることです。
利用者数やシステム全体を見てしまうとどこから手を出して良いかわからなくなるので、誰のどの課題を解消するかを明らかにできるレベルまで細分化して解像度を高めるようにしています。大きな問題をいくつかの小さな問題に分解する、あるいは対応する順番を決めてステップを刻む、集中する部分を決める、前述のようにチームを小さくするなど、それぞれの課題を大事にしないようにしています。
2つ目は、お客様を理解することです。
アンケート、インタビューなどを通していただいた声を分析して、定性的な理解を深めることを継続しています。当たり前の話ですが、愛されるプロダクトを提供し続けるためにはお客様の課題を理解し共感する必要があります。ここを意識して、継続するようにしています。
この二点を意識して、お客様が本当に必要としているものや解決したい課題に応えるようなサービスづくりを心がけています。
ーーPMとしてAmebaでどのような経験ができますか?
私は、Amebaに参画してはじめて0→1フェーズ以外のステージのサービスに携わっています。生みの苦しみやその成功を体験していないチームメンバーが中心のチームで、自身も創業メンバーではない場合に、チームをリードして成功に導くのは、相当なタフさが求められると感じています。Amebaのように世界的に見ても成功しているブログサービスを担当するプレッシャーも大きいです。
市場環境の変化、ブログ市場、自サービスの状況、月間2500万人に利用していただいている社会のインフラとしての存在。
これらを踏まえて、勇気を持って変化を生み出す意思決定をするのがAmebaのプロダクトマネージャーとしての私の大きな経験と財産になると思って、日々戦っています。
今まで身につけてきた能力や経験では太刀打ちできない困難を愉しみ、足掻いていく体験をできる環境は他では替わりがきかないものだと思っています。
定番サービスとして、進化を続けていく
市場環境は変化を続けていて、SNS市場もまだまだ成長すると予測されています。動画や音声などテキスト以外のCGMコンテンツも増えてきていきます。Amebaも成長市場のSNSの1サービスとして、また15年の歴史を持つ定番サービスとして、市場と同じスピード感で進化を続けていく必要があると考えています。そのために市場トレンドや新技術への追従は常に続けていきたいと考えています。
その取り組みの1つとして、今私が取り組んでいるのが消費体験のアップデートです。ブログ記事は1つ1つの記事にボリュームがあり、他SNSに対して相対的にコンテンツ消費のスピードに時間がかかります。ブログ記事でありながら、消費速度を上げるために、眺め読みができるようなUIを現在テストしています。本屋で立ち読みをするように、記事やブログのさわりの部分に触れてもらうことを繰り返す中で、本当に必要な記事に出会ってもらいたいと考えています。
私たちは、アメブロのコアバリューを “誰でも書ける、見られる、満たされる” と定義しています。書いた記事がその記事を必要としている人に届き、記事をハブとして書き手と読み手がつながり、そのつながりが自己実現に何かしら寄与できることがブログの本懐だと私は考えています。
>連載Vol,1「社会的ムーブメントを起こす、PMを育成するPM」
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