「#あなたはどんなPM?」連載VOL,4
上野 千紘
Lulucos by.S プロダクトマネージャー
2011年サイバーエージェント新卒入社。アラサー向け・大学生向けのコミュニティサービスや、生放送配信サービスの「FRESH LIVE」など、幅広いドメインに渡り複数のメディア立ち上げを経験。
2017年6月〜 社内新規事業会議にて自ら提案したコスメのクチコミサービス「Lulucos by.S 」のプロダクトマネージャーを担当。最近、化粧品にかけている金額は数えないようにしています。Twitter : @chihi_u (読書が趣味なのでとっきどきおすすめの本を紹介していますが、それ以外はゆるめのアカウントです。)
連載 「#あなたはどんなPM?」 全5話で、サイバーエージェントの各事業のプロダクトを担うPMUリーダーに、 「サービスフェーズ×ドメイン」で変化するPMの役割や経験談を語っていただきます。
カメレオンになれるPMって?
はじめまして、サイバーエージェントのメディア事業でプロダクトマネージャーをやっている上野です。
PMという職種は一緒にやるメンバーや事業フェーズなどによって自分のあり方や動き方を変え、いつでも誰とでも成果を出せる再現性自体がスキルだと思います。そしてそのスキルは、自身の色を変えてどんな環境でも溶け込むカメレオンに似ているなと思っています。
このブログでは「PMの再現性」をテーマに、どうして私がPMはカメレオンになれることが大事だと思ったのか、よりできるカメレオンになるためにどんなことを意識しているかをお話します。
若手のPMや、これからPMというキャリアに興味がある、という方に読んでいただければ幸いです。
「どんな手段を使っても成果を出す」ことがPMの責任
ーーカメレオンになれることが大事だと思うようになったきっかけを教えてください
新卒3年目で、大学生向けのクローズドなコミュニティサービス「QJ(キュージェイ)」を担当していた頃の失敗が大きなきっかけとなりました。(このブログではQJのサービス詳細については割愛しますが、イケてる大学生が集うコミュニティサービスを立ち上げていました。)
社会人3年目という時期は、多くの人がそろそろ一人前になりたいと意気込むと思うのですが、私も例に漏れずその一人で「自分で考えることに価値がある。その自分のアイデアで勝負したい」と自分が何を成し遂げるかばかりを考えていました。
ですが、新規事業はそんな3年目の若手1人でどうにかなるほど簡単ではないし、私の脆弱なアイデアでは求められる成果には遠く及びませんでした。自分の力だけでプロダクトの打開策を見つけようとしたのですが、そのためのスキルや知識も持たない私はチームもユーザーも自分自身も幸せにできずに失敗しました。
このときの失敗の原因は、「PMの存在意義」をはき違えていたことだと思います。PMは必ずしも自分で考えたアイデアで勝負する必要はなく、どんな手段を使っても良いから決断の精度を高め、成果を出すことを求められているのだとようやく気づけました。
「誰とでも」「どんなフェーズの事業でも」やれるのか
ーーその失敗後、上野さんはどのように変わったのですか?
決断の精度を高め成果を出すために、プロダクトの未来を描き、決断し、チームを前に進めるための手法や知識をしっかりと見につけ、それを状況によって使いこなすスキルが必要だと強く意識するようになりました。
分析する、自分でアイデアをだす、チームでアイデアをだす、それを繰り返して磨き上げる、チーム力を高めるなど、いろんなアプローチがあります。
そのアプローチをまずは知り、それを使うべきタイミングで扱えるようになるためにどうすれば良いかという方向に、自分のスキルアップを考えました。このように考えてトライアンドエラーを繰り返すうちに、周りからの信頼を感じることが多くなった気がします。
またそのような動きは、気心の知れたメンバーと行えるだけでは不安定で「誰とでも」「どんなフェーズの事業でも」できるようになることが必要です。そうでないと、限られた特殊な環境でしか成果を出せないことになってしまいます。
なかなか可視化されないですが、世の中のPMのみなさんも無意識にこれを体現している方がたくさんいると思います。これは成果を出すためのスキルとして見に付けるべきものだと思うのですが、なかなか言語化しづらいので「カメレオン力」と呼ぶことにしました。
プロダクト成果のために自分はどうあるべきか、自分の立ち位置を常に見つめ直す
ーー実際にカメレオン力を意識した具体例を教えてください
いま携わっている「Lulucos by.S」とその前に担当していた生放送のプラットフォームサービス「FRESH LIVE」を例にお話したいと思います。簡単に2サービスの特徴を説明すると、
- Lulucos by.Sは、最小構成の10名弱の開発チームで、明確なPOが不在な状況
- FRESH LIVEは開発メンバーも30名強と多く、PO的立ち位置の人が複数名いた(!)状況
です。関わっているメンバーのスキルセットや人数構成などから、私自身がどうふるまえば、また、どういう仕組を取り入れればそれぞれのチームが最も成果を出せるのかを考えました。
FRESH LIVEでは、PO的立ち位置の人が明確にいたため、大きな開発チームを経営層とシンクロさせながら、いかに効率よく速く前に進めるかに注力して動きました。プロジェクトマネジメント(PjM)に重心を置いた形です。
Lulucos by.Sではプロダクトマネジメント(PdM)の割合を増やし、プロダクトの未来や方向性・戦略を考えるほうに重心を置いています。実行部分は小回りのきく開発チームに委ねて頼る割合を意識して増やしています。
このFRESH LIVEからLulucos by.Sへの異動は、私自身のカメレオン力(PMとしての再現性)を試す現在進行系のチャレンジです。
プロダクトマネージャー(PdM)とプロジェクトマネージャー(PjM)は本来別のスキルセットなのは承知していますが、実際にプロダクトに関わっていると綺麗に切り離せないなと思う部分も多く(現実的にPdMとPjMをそれぞれおけない事業も多いのではないでしょうか)、チームやフェーズによって自分の重心を変える方法を模索しています。
毎回同じ方法が通用するわけでなく、今の状況にはどういったアプローチが最適かを常に考え続け、自分自身もアップデートしていけるところにPMの面白さがあると感じています。
変わらない軸があるから、ピボットができる
ーーチームやフェーズによって自分の重心を変えられる力が「カメレオン力」と定義されていると思いますが、変わらない部分もありますか?
チームやフェーズによって自分の振る舞い方が最適かを常に見直していますが、目指すPM像としてベースになっている考え方もあります。これはどんなチームだとしてもぶれない指針です。これを軸としてバスケットボールでいうピボットのように、自分の重心の置き方を変えられるよう意識しています。
- 伝書鳩ではなく 翻訳家になる
・同じ内容を伝えるにしても、相手によって言葉えらびや伝え方を変える
・自分がしっかり理解した内容で語る
- 経営層の指示は、必ずしも正解ではない
・指示の裏にある「意向」を意識しないと思考停止になりPMの存在意義はない
・意向を理解することでその指示より、より良い解決策を考えることができる
- 理想と現実のバランス
・スタートアップであれば、今日を生き延びる策も大事
・プロダクトの未来の方向を示し「こうなったらすごい!」をイメージすることも大事
- オープンコミュニケーション
・チームの納得を優先するためのオープンコミュニケーション
・詰まってないアイデアや、検討中の可能性も見せたほうがトータルの
コミュニケーションがスムーズになることが多い
・PMは抱え込みやすい職種だからこそ、クローズドにやりとりしない。
オープンにしていると誰か助けてくれたりもする。
- メンバーの人となりを知る
・一緒に仕事をしているのは人
・何が好きで、何が嫌いかを知っていたほうがチームの総合力を引き出しやすい
- 「ヒト」ではなく「コト」に向き合う
・人となりを知るのは大事だが、人はなかなか変わらないし、変えられない
・何かを変えなくてはと思ったとき、仕組みややり方を変えることを考える
サイバーエージェントという”チーム”としてもカメレオン力を高めていきたい
ーー上野さんはこれから、カメレオン力を武器にどんなPMになっていきたいと考えていますか?
再現性をつねに出せるPMであるために、できていないことがまだまだたくさんあります。
個人としては、もっと多くの人に使ってもらうプロダクトにするために、戦略を磨く力やプロダクトをユーザーに届けるスキルを高めたいと思っています。Lulucos by.S でちょうど向き合う機会をもらい、かなり成長痛を感じている部分です。
PMUという組織のメンバーとしては、PMの採用、育成をより組織立てていきたいです。個人に依存した形ではなく、サイバーエージェントというチームとして、プロダクト成果の再現性を高めたいと思います。カメレオン力は大事ですが、正直個人でやれる再現性には限界があるので、得意な人同士が補う「チーム・組織」という形でカメレオンになることも必要だと思います。実際に今回ブログを連載しているPMメンバー5人でも、バックグラウンドやキャラクターが多種多様で、得意なことが違います。会社としてのプロダクト作りのレベルをもう一段あげるためにPMUに貢献していきたいです。
ーーPMに興味を持ち始めた人向けに、最後にメッセージをお願いします
私自身は、元々「PMになりたい」と具体的にイメージして目指したわけではありません。
学生の頃はインターネットにも詳しくなく、どうやってアプリやwebサイトができているかも知りませんでした(体育会でラクロスをしていました)。ただ、「自分でサービスを作りたい」と思って入社し、右も左もわからないままサービスを作るチャンスをもらいました。複数の新規サービスを立ち上げながら、実際楽しくてつきつめたいと思ったことが、エンジニアやデザイナーと一緒にプロダクトに向き合うことでした。そして今PMという職種にたどりつき、PM Unionでリーダー陣の1人として育成体制の構築や盛り上げを頑張っています。
今、PMという職種に少しでも興味を持っている人がいるのであれば、今現在のスキルやバックグラウンドに関わらずチャレンジできると思います。とても向き合いがいのある仕事です。一緒に、PM界を盛り上げましょう!
>連載Vol,1「社会的ムーブメントを起こす、PMを育成するPM」
サイバーエージェントはプロダクトマネージャーを募集しています 。
今回の記事でサイバーエージェントに興味を持った方は以下のURLよりエントリーをお待ち しております!
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