開局から3年半が経った「AbemaTV」には、国内屈指の大規模なデータが存在します。その膨大なデータを活用し、事業の成長に貢献するための専門部隊「AbemaTVデータテクノロジーズ」が2019年6月に設立され、データサイエンティスト7名、データディレクター3名が在籍しています。
今日は、同組織のデータサイエンティストを務める阿部とデータディレクターの林が登壇した「メルペイ×サイバーエージェント 注目プロダクトをもつあの会社のデータ組織&データ職種大解剖」の様子をお届けします。
まず、冒頭にデータディレクターの林が「AbemaTVデータテクノロジーズ」の組織について簡単に紹介を行いました。
「AbemaTVデータテクノロジーズ」のミッションは、データを活用し、競争力を生み出すことで、主な業務は「サービスグロース」「データ活用設計」「運用リソース解放」の3つです。そして、それぞれの項目でデータサイエンティストとデータディレクターで以下のように役割分担をしています。
現在「AbemaTVデータテクノロジーズ」では「コンテンツ調達の最適化」「視聴時間の最大化」「広告価値の向上」「有料会員数の最大化」など、さまざまなテーマに取り組んでいますが、データディレクターの林は、成果を出すために”常に上流から参画する”ことを意識し、以下の2点を守っていると語りました。
(1)コンサルタントとして事業の設計段階から参画する
→業務のメインが振り返りになると、レバレッジを生み出せない
(2)手元にあるデータだけを頼りにしない
→理想を実現するために必要な、取得すべきデータを洗い出し、そのデータの活用設計を行う
設立間もないデータ組織というのは、データ抽出依頼に忙殺されることが珍しくなく、AbemaTVデータテクノロジーズも漏れなくその時期を経験しています。しかし、データ出し組織から脱却しなければ、上流の仕事は成し遂げられないと考えた林と阿部は、4ヶ月でレポート作成依頼を1/3に減らすことに成功しました。
データ出し組織から脱却するためのポイントは「対面ヒアリングを重視」「汎用レポートの作成」「クエリツールの展開」の3つである、とデータサイエンティストの阿部は振り返ります。
特に「汎用レポート作成」をtableauで実装し、ビジネス側が追いたい数字を全て満たした状態で管理できるようにしたことがターニングポイントとなったのですが、このレポートを作るうえで工夫したことが3つある、と阿部は語りました。
1つは目標値を反映させられるようにしたこと。目標値をビジネス側が入力してtableau上で管理できるようにしたことで、これが社内標準となり、全ての情報をtableau上に集めるための協力が得られやすくなりました。データ抽出依頼も、このレポートがベースになったことにより、無駄なものが削減されました。
2つ目は試行錯誤しやすい体制を整えたことです。この汎用レポートを作るにあたって初めから良いものが作れたかというと、そうではなくて、ビジネス側とやり取りを重ねてブラッシュアップしていきました。初期のタイミングでビジネス側のステークホルダーと議論を重ねて進められたことが成功の秘訣だと感じています。
3つ目は、クエリを1つにまとめるということです。
現場では、同じような項目でアウトプットだけ変えたいケースが多々あります。だからといって、クエリをそれぞれ分けてしまうと運用コストが膨らんでしまい、追加依頼も柔軟に対応することが難しくなります。そこで、クエリを1つにまとめて完結させるように工夫しました。
もう1つ工数削減に活用したツールとしては、Googleスプレッドシートがあります。やはり繰り返される依頼って多いんですね。例えば期間だけ変えたい、とかidだけ変えたい、とか。ただ、その依頼が継続的なものじゃないケースも多々あります。そういう時に取り急ぎ、使えるクエリを共有できるようにしたのです。
実際どんなものかというと、Googleスプレッドシートにあるデータコネクトという機能を使っています。これを使うと、BigQueryと連携することが可能になり、BigQueryで呼び出した結果がスプレッドシートに吐き出されます。
これらの取り組みによって、データ出し依頼を4ヶ月で1/3にまで縮小することができました。そして、データ出し作業から解放されたあと、AbemaTVデータテクノロジーズはどんなチャレンジをしているのか?について、阿部はこのように語りました。
データ活用というと手元にある既存のデータをいかに活用するか?という思考になりがちですが、AbemaTVデータテクノロジーズはそれだけではありません。
例えば「AbemaTV」はオリジナル番組に注力する一方で、コンテンツ買い付けも積極的に行っています。ROIに見合った買い付けをするためにも、ヒット番組の見立てをより正値に近づける必要があります。
そして、そのためには「AbemaTV」内に限らないデータも活用すべきだと考えています。出演者や番組がSNS上でどれだけ話題になっているか?原作があるならばその原作がどれだけ流行っていたか?など、どんなデータがあれば、ヒット番組の見立てをより精緻にしてコンテンツ調達の意思決定の精度を高めることができるのか、ビジネスを加速させられるのかを、意識しています。
メルペイ ・AbemaTVそれぞれの目玉プロジェクトって?
各社のプレゼンテーションの後は、メルペイの竹原さんを交えた、トークセッションに参加させていただきましたので、その様子についてもお届けします。
(モデレータ)
データ組織の目標や成果はどのように決めていますか?
(林)
AbemaTVデータテクノロジーズの場合は、データ出しを何件やったかというより、事業設計や分析設計でどれくらいインパクトを出せたかを評価ポイントに置いています。とはいえ、データ出しも大事な業務の1つではあるので、それをtableauやBIツールによってどれくらいリソースを解放できたか?についても評価しています。
(モデレータ)
データ組織には、各部門から多数のオーダーがくると思うのですが、やる・やらないの判断基準はどうしていますか?
(メルペイ竹原氏)
私の場合、一旦要望は全て聞いてストックしておきます。次の大きな案件になるかどうかの見立ては、MLエンジニアでなければ判断できないと思っています。クオーターに1回、ストックした案件の優先度を見直して、次のクオーターで取り組む内容を決めています。
(モデレーター)
なるほど、それはROIが高いものをMLチームで特定しにいく、といった動き方のイメージでしょうか?
(メルペイ竹原氏 )
ROIというとちょっと堅苦しすぎるかもしれませんが、コツはあると思っています。
例えば1コンバージョンあたりの価値など、計測可能なものはROIで良いのですが、不正対策など、ROIでは追えないけれど、重要な項目もあります。このようなものに対しては、リスクの大きさを経営層・現場と擦り合わせたうえで、ROI度外視で優先的に取り組みます。
(モデレーター)
参加者から色んな質問を頂いているので、みなさんいかがでしょうか?
・今1番目玉のプロジェクト
・今仕込んでいるプロジェクト
・やりたいけれど出来ていないプロジェクトってありますか?
(メルペイ竹原氏)
現在のメルペイ での1番の目玉プロジェクトは「メルペイスマート払い(旧:メルペイあと払い)の進化」と「不正対策」の2つです。
仕込んでいるという意味だと、高めたお金の流動性を活用するための推薦や検索の仕組みに力を入れていくこと、やりたいけれど出来ていないプロジェクトはカスタマーサポートセンターへの問い合わせの自動化などですね。
(阿部)
AbemaTVにおける目玉プロジェクトは「コンテンツの質上げ」です。
というのも、我々はメディアなので、いかに良いコンテンツを用意して視聴者に来てもらうか?が非常に重要になります。
そこで「ヒットの再現性を高める」ためのデータ活用にチャレンジしています。ヒット番組のヒット要素がどこにあるのか?を膨大なデータの中から導き出し、番組制作チームに提案する機会があることはAbemaTVだからこそ出来るチャレンジですね。
(モデレータ)
ヒット要素をデータを使って分解するということですが、例えばどんな要素に分けて行くのでしょうか?お話しできる範囲で構わないので教えてください。
(阿部)
例えば、AbemaTVでは恋愛リアリティーショーが人気のコンテンツですが、様々な切り口で番組が構成されています。
一部の例ですが、出演者はカリスマ性があるパターンと等身大タイプ、どちらが良いのか。ロケ地は非日常的なシーンか日常の延長か。あるいは恋愛への誘導パターンを「作品を特徴づける要素」として分解することができます。その際に、制作側が意図した要素だけでなく、コメントデータを用いることで発見できる要素があったりします。
また、番組の最初に盛り上がりを持ってくることで視聴離脱を防げるという示唆も得ています。このようなデータを基にプロデューサーと対話し、実際の番組に反映できるあたりがAbemaTVデータテクノロジーズならではの醍醐味だと思います。
AbemaTVデータテクノロジーズでは「データディレクター」「データサイエンティスト」大募集中です!
AbemaTVデータテクノロジーズに少しでも興味を持って頂きましたら、是非お話しさせてください。
まずはカジュアル面談からでも大丈夫です。
コチラより応募お待ちしております。