こんにちは。技術本部 プライベートクラウドグループの中西 (@whywaita) です。

本記事はScalaMatsuri 2019にWi-Fi提供を行ったレポートとなります。1

今回サイバーエージェントからは6人がWi-Fiスタッフとして参加させていただきました

下見 @ 5月

我々Wi-Fi提供チームはScalaMatsuri初参加!ということもあり、事前に会場の下見をさせていただきました。

会場を下見しています。

どこにどのような部屋があるのか、その部屋にはどのぐらいの人が来場される予定なのか、などを確認しました。 おおむね等間隔にアクセスポイントを設置するのですが、多くの方が利用されることが事前に分かっている場所については出来るだけ多めにアクセスポイントを配置するためです。

今回は1日目(ワークショップDAY)の朝から会場入りして準備を開始し、午後にはワークショップが開始するという状況で現地での準備時間が多く割けないという事情もありました。 日目に必要な部屋はどこなのか、どこから優先的に配線を行うかなどの確認作業も行っていました。

アクセスポイントの配置決め

下見を終えたあとは、頂いた会場の資料、そして予想される参加者数からアクセスポイントをどのように配置するかを決定していきました。 今回はCyberAgentよりCisco Aironet 3702iを18台、Cisco Meraki MR32を9台用意しました。(ご協力いただいた社内の皆さまありがとうございます!)

1つのアクセスポイントに対して約40人、1人2端末を利用する想定で配置しました。アクセスポイント毎に性能差もあったため、想定収容人数には若干偏りがあるように設計しています。 かなり余裕をもった計算になっているかとは思いますが、この想定のおかげで当日も余裕のある運用を行う事ができ、1台あたりのアクセスポイントに収容される人数もほぼ均等になっていました。

残念ながらとある1箇所のアクセスポイントのみは接続端末が偏ってしまい、最大で約200端末が接続されたこともありましたが、その状態でも十分に速度が出ていることを確認し安心した場面もありました。

アクセスポイントの配置を決定する際には、以下の点を考慮する必要があります。

  • 人がいるところに電波をカバーすることができるのか
    • 電波状況が弱いクライアントがあるとそのアクセスポイントに接続する全てのクライアントに影響があるためです
  • 電源を取る事はできるのか
    • 今回はアクセスポイントの電源は全てスイッチからの給電としました
    • コンセントとスイッチの位置はできる限り近くさせていました
  • 長いLANケーブルが偏って配置されていたりしないのか
    • 出来るだけ1本あたりの長さを短くすることでオペレーションを手軽にするためです

これらの条件が揃う中でLANケーブルの配線を地図上に引いていき、LANケーブルの長さを決定していきます。

条件を正確に把握していればほぼ配線は自明なのですが、階を跨ぐ部分など平面の地図だけでは考慮しにくい部分があったりするなど中々骨が折れる作業でした。 この作業を自動化するソフトウェアなどあればぜひほしいですね……!

必要なLANケーブルの長さと本数が分かった後は、ひたすらLANケーブルを作っていきます。 今回のScalaMatsuriでは総長770m、合計51本のケーブルを作成しました。

チームメンバーでLANケーブルを作成しました。

300mのより線LANケーブル樽を3つ購入し、8の字にまき直しつつかしめ作業を行っていきます。 今回の運営メンバーにはLANケーブルを作るのが初めてというメンバーも居たので、工程を確認しながら作成していきました。 画像ではかしめ工具と呼ばれる工具を用いてLANケーブルの先端端子を固定しています。

もっとも長いケーブルは約55mにも及び、30mを超えるケーブルが多くあったためにケーブルの作成やケーブルに巻き跡がつかないように8の字に巻いていく作業はとても大変でした。

ネットワークについて

今回は Home NOC Operators’ Group 様にインターネットへの疎通性(トランジットと呼びます)をご提供いただき、参加者の皆さまがインターネットにアクセスする際にはHomeNOC様経由で通信を行っていました。

某所にあるデータセンターとScalaMatsuriの会場をNGN経由で繋ぎ、データセンターに配置したルータなどを経由してHomeNOC様のルータに接続していました。

HomeNOC様のご協力もあり、非常に高速なWi-Fiが提供できたのではないかと考えています。

また、弊社黒崎が開発したCaptive Portalもデータセンター上にデプロイしていました。Captive Portalの詳細については以下のスライドへどうぞ。

現地での配置作業

1日目の朝運営スタッフの皆さんと同時に会場入りし、元々決めてあった段取りにそって機材を配置していきます。

弊社Wi-Fi提供チームと運営スタッフの方々の協力も得ながら、配線とアクセスポイントの設置を行います。事前に用意しておいた配置図を印刷したものを実際に作業するメンバーに配布し、その通りに設置しました。

アクセスポイントは電波を発する性質上、高さを確保するために譜面台を使うなどの取り組みをしており、養生テープなどで固定した上で配置していきました。

アクセスポイントを譜面台に養生テープを使って固定しています。

一番大きい部屋であった国際会議場には合計7台のアクセスポイントを配置し、多くの参加者の方が座る3F部分だけではなく4Fにも2台アクセスポイントを配置しました。 今回のアクセスポイントでは電波が放射状に出力されるため、アクセスポイントの向きも考慮すべきポイントです。4Fに配置したものに関しては、若干下を向くように配置されているのが分かるかと思います。

アクセスポイントは4Fにも配置しました。

1日目の午後からワークショップが開催されるため、アクセスポイントの配置と同時にインターネットへの疎通性を確保する作業も進めていきます。 今回はNEC UNIVERGE IX2105でネットワーク的な終端を行い、DNSやDHCPなどのサーバはIntel NUC上で運用していました。

ネットワーク機器とサーバは1箇所に集めておきました。

何とか開場時間までにはインターネット疎通を確保できたため2、引き続きワークショップ以外の部屋の配線も続けていき、1日目の夕方には想定していたほぼ全ての配線作業が完了しました。

印象的だったこととして、通信を収容していたNAT用のサーバにおけるネットワーク的なチューニングは最後まで特に行わずに終了しました。 セッション制限やTCPタイムアウト時間などの部分はモニタリングした上で足りなさそうなら設定を変更しないと、と思っていたまま開場してしまったため後回しになったのですが、結果として接続不調などは報告されませんでした。 3

今回はほぼ全てのサーバをUbuntu 18.04で構築したのですが、この規模の会であればモニタリングしておくだけでとりあえずは問題ないのかもしれません。

懇親会に向けて配置換え

会中ほぼ設定していたモニタリングツールからのアラートに対応するだけの運用だったのですが、懇親会のときのみ運用中の物理作業を行いました。

1Fのカフェエリアは性能の低いアクセスポイント3台、受付部分に1台で対応していたのですが、懇親会の料理が置いてあった関係で利用者が増えた影響かスピードテストの結果が悪くなってしまっていました。 のため、急遽セッションで利用されている部屋から性能の高いアクセスポイントを回収し1Fに配置しました。 これによりスピードテストも想定していた速度まで復帰したため、最高の懇親会中にも最高のインターネットをお届けできたのではないかなと思います。

撤収

撤収作業では、終わり次第LANケーブルをどんどん捨てていきます。 LANケーブルは相当な長さがあるため、運営チームに事前にお願いしておき全て廃棄としました。

床に置いたLANケーブルは全て破棄します。

沢山あるように見えますが1部屋分です。

LANケーブル以外の弊社提供機材やScalaMatsuri運営の皆さまに用意していただいたものは丁寧に梱包しつつ、 完全撤収のリミットがあったため手が空いた運営スタッフの方々にご協力いただいてひたすら片付けていました。 セミナーが終わった部屋から徐々に片付けていき、なんとか撤収時間に間に合いました。

まとめ

ScalaMatsuri 2019 にてWi-Fiを提供してきた裏側について書いてみました。

個人的な感想ですが、カンファレンスWi-Fiは主に事前準備と利用する物品の調整が一番大変だと思います。 今回も5月ごろからプロジェクトを開始し準備を進めていましたが、それでも準備期間がもう少しあればなと思うタイミングもありました。

もし今後カンファレンスWi-Fiを構築する機会があれば、もう少し準備期間を持っておければなと思います。


  1. 諸事情により随分期間が空いてしまいました。↩︎
  2. 11:16に開通、ギリギリでしたね… https://twitter.com/whywaita/status/1144066856967258112↩︎
  3. 報告されたなかっただけで実際にはあったのかもしれませんが↩︎