こんにちは!サイバーエージェントグループ子会社 アプリボット所属 背景アーティストの大田です。
昨年末に2日間の学生向け3DCGインターンシップ【3DMaya塾】をオンライン開催しました。私はメンターリーダーとしてこのインターンシップを運営しました。
3DCGに関するインターンシップは過去にも開催していますが、今回のインターンシップはありがたいことに、特に熱量が高く夢中なってくれた学生がとても多かったのです。
コロナ禍、オンライン開催の壁があったにも関わらず、なぜ過去最大の熱量を発揮することができたのか。
それを施策内容も踏まえながら解説していきます。
1.対象にする学生を絞る
どのような学生にこのインターンシップを受けてほしいのかを考えたときに、「美大生が本気で3DCGと向き合ったら、凄いものが作れるのではないか」と思い企画を考えました。
現代では3DCGも一般化し、作品をSNSで見かけることも多くなりました。その中でグッと飛びぬけてクオリティを示す作品は必ず、美術素養の高さも兼ね備えています。
美術素養についてアドバンテージがあるのは、やはり美大生です。
ただ、美大の環境というのは「広く芸術やデザインについて学ぶ環境」なので、専門性の高い3DCGという分野については身近に感じにくい環境なのではないかと考えました。
美術素養に長けている美大生が本気で3DCGを学ぶべるよう、きっかけさえ与えることができたら、凄いものが生まれるのではないかと思い、3DCGに興味があるが、一歩を踏み出せていない美大・藝大生に向けて、彼らの一歩を踏み出すお手伝いをすることに全力を注ぐことを決めました。
2.学生に主体的になってもらうアプローチ
「自分に深くメリットのあることだ」と感じることで、人は本腰を入れます。
それを感じてもらうために、美大生向けに事前にオンラインセミナーを開催しました。
・学校で学んでいることが3DCGの現場でどう活かされていくのか
・現時点でみんなは大きなアドバンテージを持っているんだよ、というメッセージ
の2点を軸に発信し、業界や会社、3DCG制作における大切なことも共有しました。
美大生の中には就職活動に重きを置いていない方もいるので、自分事化していただき「仕事で美術やデザインと向き合っていく」ことをポジティブに捉えられるようなメッセージを届けることを大切にしました。
こうした取り組みの成果もあり、非常に多くの学生がインターンシップに応募してくださいました。
3.的を絞った内容にする
今回のインターンシップはモデリング(形を作る部分)にのみフォーカスしています。
3DCGは必要な知識が多く、全てを2日間でマスターするのはとても難しいです。
目的はあくまで「身近に感じてもらい、成功体験を持つこと」なので、細かな部分はそぎ落とし、「形を作り空間が出来ていく楽しさ」に絞った内容にしました。
上記をふまえ、課題制作のテーマを「古代遺跡のモデリング」にしました。
古代遺跡はとても包容力のあるモチーフだからです。
・四角い石を1つ作れば、それを複製して配置するだけで最低限遺跡を表現できる
・やりこみ要素として「朽ちた表現」をとことん追求できる
・ファンタジー要素を絡めやすく、独自の遺跡をデザインしやすい
このような要素を持っているので、初めての方にも、深く作り込みたい方にも楽しんでいただけるというメリットがあります。
使用するツールはMayaのみです。Mayaは代表的な3DCGツールであるためです。
また、ビネットという形で完成させるという制限も設けました。ビネットというのは最小限の要素がジオラマ作品のようにまとまっているものを指します。2日間で完成させることを考えたときに、広大な背景を作ってしまうと完成させるのが難しいためです。
4.事前課題を設ける
今回のインターンシップでは3DCG未経験の方が多数占めることを想定していました。また、その上で2日間のインターンシップを最大限濃密な時間にしたいと考えていたので、開催前にMayaを使った事前課題を設けました。
Mayaで「宝箱」「花」「岩」をモデリングする動画を作成し、それを見ながら学ぶという形式です。
・予習をすることで当日の学習濃度が上がる
・少しでも足並みを揃えた状態で当日を迎えられる
・当日は遺跡作りに没頭してほしかった
こうすることで、開催日にある程度学生の足並みを揃えることができました。
また、決められた課題以上の制作物を出してくれた参加生もいて、熱い思いが伝わりました。
5.寄り添うこと、おもてなしの心
オンライン開催によってコミュニケーション密度が減り、学生のインプットが減ってしまうことは絶対に避けなければいけません。
その懸念を取り払うために「積極的に寄り添い、おもてなしの心でいつも以上に学生にコミットする」ということを軸にいくつか運営の施策を練り、運営メンバー全員でコミットしていきました。
以下に3つの施策をご紹介します。
5-1.常に声をかけられる環境づくり
学生の方が常にメンターに声をかけられる環境をつくりました。
開催初日は平日だったのでメンター社員は通常業務との平行でしたが、丸1日Zoomを接続し、いつでも声を掛け合える環境づくりを徹底しました。そのため会話がスムーズになりました。また、できるだけカメラはON。顔が見えることも大切です。
会話を生みやすくするために、小まめなフィードバックタイムをスケジュールに組み込みました。
5-2.オンライン懇親会・ラジオ配信
初日はラジオを、2日目はオンライン懇親会を設定しました。(ラジオというのは、参加生が作業する傍ら、社員同士がラジオのようにおしゃべりする企画です。)ここでは広く質問を取り、会社について、社員が大切にしていること、ゲーム業界のこと、本当にただの雑談など、広く意見を交わせる場を作りました。作ること以外にもたくさんある、大切なことを温かい空気で伝えることができました。
5-3.オンラインオフィス見学
学生の方に働く環境を知ってもらうことも大切です。自社ビルの中を、スマホを片手に実況しながら解説して回りました。
もちろん、情報機密に関わる部分はお見せできませんでしたが、社内にあるカフェや会議室、開発室など様々な設備をリアリティを持って紹介することができました。時に冗談も交えつつ和やかなムードでオフィスを紹介しました。
このような施策を用意し、たくさんのことを学べるよう、おもてなしを尽くしていきました。
学生の眼の色は変えられたのだろうか
無事2日間のオンラインインターンシップを終えることができました。学生の皆さんが本当に楽しそうに、かつ真剣に取り組む様子をみて、感慨深い2日間となりました。
3Dモデルを作るのが初めてという方も多かったのですが、「本当に初めてなのか」と疑うくらい完成度の高い作品も生まれました。また、初日が終わった後、悔しくて夜な夜な作り直してきてくれた学生の方もいたりと、参加生のとても高い熱量が届き、むしろメンター陣が胸を打たれることもありました。
※初めてMayaを触った学生の作品
無事に終わったインターンシップ。私は学生の皆さんの眼の色を変え、意識を変えることができたのでしょうか。その答えは、終了後のアンケート結果が教えてくれました。
このインターンシップに対して、8割近くが大変満足を、そして全員が満足してくれる結果となりました。参加生皆の笑顔を作ることができて、とても嬉しくありがたい気持ちでした。
嬉しい言葉として「ゲーム業界で働くことに決めました!」「3Dを本格的に始めます!すぐ専用のPCを買おうと思います!」「とても良い会社、環境だと知り、未来がクリアになりました!」といった、沢山の感想をいただきました。
※参加生からの温かいコメント
モデル制作にとどまらないコミット
今回学生の方に伝えたかったことは、3Dモデルの作り方だけではありません。クリエイティブという仕事と向き合う姿勢について、ゲーム作りの楽しさについて、就活・人生についてなど、広くたくさんの言葉を届けることに運営陣全員が注力しました。ツールの使い方ももちろん大切ですが、その人の姿勢が変わることが何より大きなプレゼントになると考えたからです。
学生の皆さんからもたくさんの質問をもらいました。
これもきっと、私たち運営メンバーの熱意が伝わり、オンラインの壁を超えて距離感を縮めることができた結果なのだと思います。
参加された学生の皆さんの一人ひとりの、今後のご活躍を本当に楽しみにしています。
※最後に撮った集合写真の一部
サイバーエージェントではこれからも3DCGに関する様々なインターンシップを開催予定です。次回開催するのは「3D道場~Character Design編~」です。3DCGにおけるキャラクターデザインで大切なことをお伝えする内容です。
https://www.cyberagent.co.jp/careers/students/event/detail/id=25702
今回の記事を読んで興味を持った方は、ぜひ一歩を踏み出していただけると嬉しいです。