こんにちは。メディア事業部デザイナーのshunsukeです。
メディア事業部では様々なサービスを運営しており、80人を超えるクリエイターが在籍しています。
当社では多くのクリエイターの技術・育成・マネジメントなどのナレッジを、それぞれの部署に閉じることなく横軸で共有していく文化があります。
今回は、普段あまりクリエイターが着目することのない「思考力」にフォーカスし、一風変わったワークをしてみました。

 

目次

  • 背景
  • 第一回 思考力とは?の講義
  • 第二回 3分間プレゼンワーク
  • 第三回 例えツッコミワーク
  • 最後に大事なこと

 

 

背景

メディア事業部のマネジメント・育成を担う、「クリエイティブボード」という組織の中で「メディア事業部全体のサービス/プロダクトのクオリティをあげるための施策」として生まれました。
クオリティを上げるための施策は他にも色々あるのですが、今まで体系化されずにいた「思考力」に目を向けてみます。

ゴールとやること

ゴール

まずはクリエイティブボードのメンバー5名にインストールし、ジュニアデザイナーの育成に活用してもらうこと

やること

第一回 思考力とは?の講義
第二回 3分間プレゼンワーク
第三回 例えツッコミワーク

 

第一回 思考力とは?の講義

以前私がまとめたnoteがあり、こちらの記事をベースに講義をしました。
https://note.com/sksk/n/n39c3cdd7e479

具体と抽象を主軸にした構成で、現場のジュニアデザイナーを取り巻く出来事をケーススタディとして「その時何が起こっているのか?」を解析していきました。

かく言う私も少しの本と記事をかじっただけでにわか知識ではあるのですが、参加者のベテランクリエイターである皆さんも、普段はそれぞれの性格や経験の切り口で思考プロセスを捉えることが多かったようで、とても新鮮なインプットになったようです。
詳しくは上記のnoteをご覧ください。

 

第二回 3分間プレゼンワーク

講義でのインプットを終えて、ここからが実践式のワークです。
参加者の5名にあるお題に沿って3分間プレゼンしてもらい、そのプレゼンの論理構造(伝わりやすさ/的を得ているか)に対して審査員からフィードバックする内容となっています。
審査員にはクリエイティブ領域 執行役員の佐藤さんとABEMA開発本部PMの田所さんに協力してもらいました。

具体的なお題はこちらです。

あなたはメディア横軸のとある活動の懇親会で、
しゅがーさん(佐藤さん)と田所さんと一緒になりました。
仕事の話が盛り上がり、あなたは自分の携わっている仕事について相談してアドバイスをもらおうと思いました。
あなたの携わっている仕事(グロース施策でもいいし組織課題でもいいです)の「改善したいポイントとそのアイデア」を
背景や根拠も含めて事情を知らない他部署のしゅがーさんと田所さんに3分間でプレゼンしてください。

このお題は、仕事の目的・アウトプット・悩みを部署外の人に端的に説明し理解してもらう力(≒構造的に情報を整理し伝える力)を鍛える狙いで設計しています。

参加者の5名は仕事力の高い方々ですが、改まってプレゼンの構成を整理する機会は少ないようで緊張した面持ちで挑んでくれました。
ちなみに私もプレゼンは得意ではないですが、今回はファシリテーターとして参加しておりとてもお気楽な姿勢で取り組まさせていただきました。
参加者の皆さんには忙しい中、風変わりなプレッシャーをかけてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいです(そんなに思ってない)。

しかしそこはベテランのクリエイター…!持ち前のノリと機転の良さで「懇親会」というシチュエーションを再現した芝居つきのプレゼンをしてくださり、実に盛り上がりました。
担当事業の課題についてプレゼンする方、チームマネジメントの悩みについてプレゼンする方、自身の振る舞いについてプレゼンする方…とバリエーションに富んだ内容に。

審査員の2名は普段から頭が切れることで信頼されている方で、プレゼンを聞いた後すぐさま的確なフィードバックをしていきます。
ポイントとしては以下で、ファシリテーションを行う私も大変学びがありました。

  • 課題感は的確か
  • 話のわかりやすさはあるか
  • 「で、何を相談したいの?」が伝わっているか
  • 事情を知らない側にとって伝わりやすい説明になってるか
    • 相手に合わせて抽象度を合わせられているか
  • 相談を受ける側として知りたい情報や要点を簡潔に伝えられているか
    • 構造的に情報が整理されており理解しやすいか

 

 

第三回 例えツッコミワーク

最後のワークはなんと「例えツッコミ」です。
ふざけているわけではありません、大真面目です。

突然ですが、「翻訳」できるデザイナーって強いですよね。

『〇〇ってことは、
つまり▲▲ってことで合ってますか?』

『□□がしたいってことは、
✖︎✖︎でも良いってことですかね?』

 

翻訳できると以下のような利点があります。

  • 抽象度を揃えてあげられる
  • 認識を合わせてあげられる
  • 理解度を合わせて深い議論に持っていける

そして翻訳ということはつまり「例え話」です。
極論、例え話がうまいデザイナーは強い…(極論です)

そして「例え話」力を効率よく鍛える方法、
それが…例えツッコミなのです…(ここらへんでざわざわしてくる)。

 

 

ということで参加者の皆さんに「例えツッコミ大会」で闘ってもらいました。
私含めクリエイティブボードの方々の時間を「例えツッコミ大会」に費やすという英断、間違ってはいないと信じたい。

 

まず、うまい例えツッコミのポイントとは?

  1. 例えるモチーフがわかりやすいか
    (その言葉や概念を聞く側も知っているか)
  2. 例え元と例え先の話の共通点が抽象化され、過不足なく表現できているか
  3. 例え元と例え先に距離(ギャップ)があるか

 

これを意識して鍛えることで、以下の力が育まれると信じています。

  • わかりやすく伝える力
  • 物事の共通点や距離の大きさを構造的に捉える力
  • 一言で空気を掴む力

 

まずはプロの例えツッコミを分析してみます。
フットボールアワー後藤さんのツッコミ

スベった共演者に対して
「お前、ようそんなギャグだせたな、陶芸家やったら割ってるやつやで」

 

これは「スベったギャグ」を抽象化し、再び「陶芸家の駄作」へと具体化し直しています。
その中で前述のうまいポイントの1~3が満たされていることが「うまさ」に繋がっています。

 

 

そしてここから実際にやってみようのコーナーです。

 

 

一つ目のお題「ほぼ同じデザインの眼鏡を何個も持ってる人に対してなんと言う?」

最初はやはり参加者の皆さんから答えがなかなか出てきませんでした。

 

ツッコミの正解例としては
『新卒のパターン出しか』
となります。異論反論は受け付けません。面白いかどうかは二の次なので!!

これはターゲットがデザイナーに限られてしまいますが、そのターゲット内ではポイントを満たしています。

 

 

二つ目のお題「小さいミスを見逃さない人に対してなんと言う?」

 

こちらの正解例は
『このスイングでストライク取られたら敵わんわ』
です。はい。…はい。ええ、ですので異論反論は受け付けないと言ったじゃないですか。

 

 

 

このようなお題を複数繰り返し、終盤には色とりどりの例えツッコミが舞い遊ぶエレガンスな空間が確かにそこに在りました。

 

実際に使ったお題を載せますので、ぜひ考えてみてください。

「色んな人が色んな意見を言ってぐちゃぐちゃになった場に対してなんと言う?」

「提案をあしらわれた時なんと言う?」

 

 

また、例えツッコミを先に見せて、そこから現象を逆算するワークも行いました。

『Helveticaか』←何が起こってる?

『セブンでファミチキ頼む奴か』←何が起こってる?

 

改めて、このワークのゴールはジュニアデザイナーの育成に活用してもらうことです。
例えツッコミの仕組みを抽象的に捉えて日々に活かしてほしいのであって、例えツッコミを極めてほしいわけではありません。
例えツッコミを試行錯誤して逆にわかりづらいコミュニケーションになっている人を見かけたら『本末転倒だな!訴求モリモリにしすぎて結局見てもらえないバナーくらい本末転倒だな!』と目をギラギラさせながらツッコんでおきましょう。

 

最後に大事なこと

大事なことを言います。
冒頭に紹介したnoteにも書いているのですが、
このワークを通して、常に論理的な思考や構造的なプロセスが重要だと伝えたいわけではありません。

直感や感覚はとても重要です。

アイデアの発想は感覚的でいいし、ロジックを超越した息を呑むクリエイティブを目指すのも良しです。
ただ、構造化はそれを人に伝える時や実現するために必要なステップで、ロジックが求められる制作過程に効果があります。使いどころに注意ということです。

表層部分を普段から手がけるデザイナーは特に、「カタチ、色、動きのイメージ」など視覚や触覚から着想を得る場合が多いですし、そもそも発想の種類は他にもたくさんあります。

  • ランダムに物事を組み合わせて発想する
  • もし〇〇にしたらどうだろう?〇〇かもしれない、と妄想から始める
  • 常識に逆張りして考えてみる

そこで得られたアイデアに論理が後付けされるのでもいいと思っています。
「後付け」と言ってしまうと罪悪感を伴うかもしれませんが、具体と抽象の行き来が思考に備わっていれば、カタチを作り出す過程で同時に論理構造もうっすらと見えてくるのではないでしょうか。

ただ、どのアイデアの発散方法にしても、自分の脳内をそのまま表現したところで他人は理解できないこともあります。
理解してもらえるとしたら、同じ目線で同じ抽象度、同じような理解度を持つ信頼関係の元で成り立つくらいでしょう(または、そもそも理解してもらう必要のない稀な環境もあるかもしれない…)。

結局多くの環境では、「人に伝えるため」の構造化が求められることが多いです。

 

繰り返しになりますが、思考プロセスを固めてしまうとものづくりの視野が狭まることもあります。直感は大事です。論理も大事です。

むしろ五感から着想を得るタイプのクリエイターは「直感を活かすための論理思考/構造化思考」と捉えてもらってもいいかもしれません。

結局は熱量やこだわりが成果の源だったりしますし、そこに芯を通すプロセスの引き出しとしてこのワークを思い出してもらえれば幸いです。