株式会社QualiArtsのテクニカルアーティスト室に所属している塩塚勇気(@saltk2tfam)です。
テクニカルアーティストとはエンジニアとアーティストの橋渡しとなる職種です。
本記事ではモバイルゲーム開発における役割の一例をご紹介します。

TechnicalArtistとは

「TA」という職種に馴染みが無い方もいらっしゃるかと思いますので、CGWORLDさんより、説明を引用させていただきます。

テクニカル(技術)関連の仕事を担うプログラマやエンジニアと、
アート(芸術)関連の仕事を担うアーティストとの橋渡しを担当する役割のこと。(略)
[CGWORLD Entry.jp](https://entry.cgworld.jp/terms/テクニカルアーティスト.html)

TAと言ってもゲームや映像業界でない方だとピンと来ない場合もあるかと思いますので、弊社の例ではありますが橋渡しとなる例をご紹介したいと思います。

TAの仕事内容(弊社の例)

ゲーム開発において、 各職種がすり合わせを行いながら開発を進めることが一般的です。
このとき、お互いの領域が遠かったり使用している言葉が違うなどしてすり合わせが難しくなることが考えられます。
そこでTAが橋渡しを行い、クリエイター、エンジニアが作業に集中できる環境作りを行います。
例えば、効率的にクリエイティブ制作が行えるように補助ツールを提供したり、素早く実装を進められるようにサンプルを用意することもあります。

TAの橋渡し業務例

またTAの仕事は多岐に渡り、会社によっても定義は異なると思いますが、いくつかのタイプに分けられると私は考えています。
テクニカル(エンジニア)寄りなのかアーティスト(クリエイター)寄りなのか、ランタイム(実機)よりなのかパイプライン(開発環境)よりなのかの2軸で表した場合、
私はエンジニア視点で開発効率化を行うことが多く、具体的にはMayaでプラグイン開発を、Unityでエディタ拡張を行うことが多いです。

TAのタイプ分類例

TAの必要性

こちらは弊社から配信しているIDOLY PRIDEの3Dライブ映像になります。
3Dのモデルやモーション、エフェクトはもちろん、ライトによってアイドル照らされる仕組み、観客のペンライトなど、様々な要素が盛り込まれていることがわかります。

昨今のモバイルゲーム開発においては、スマホの進化に合わせた高クオリティ化、及び低コスト化が必須となっています。
更に仕様の複雑化、業務の細分化が進んだことにより、エンジニアとクリエイターの橋渡しとなるTAの需要も増加していると考えています。

スマホの進化に合わせた高クオリティ化、及び低コスト化

ここからは橋渡し役としてのTAが必要となる部分や、高クオリティ化、低コスト化に貢献しやすい部分を3つご紹介します

アセットワークフローの構築

画像左のように3Dモデルやモーションなど複数種類のアセットを集約してゲームに組み込むための仕組みを構築します。
またUnityでは時系列に沿ってアセットを制御するタイムラインという仕組みがあり、プロジェクト独自の表現が行うために画像右のように拡張を行います。

これらはエンジニア、クリエイター双方にとって使いやすい仕組みであることが求められ、TAがそれぞれの要望を取り入れ、順次ブラッシュアップしていくことが必要になります。

アセットワークフローの構築例

3Dアセット制作効率化

例えばキャラクタをゲームに組み込む際に、専用の設定が必要になることがあります。
画像左は、髪やスカートなどの揺れものの設定画面です。
揺れやすさなどの設定はキャラや衣装によって調整が必要なのですが、これらを毎回手動で行うのは大変ですので、組み込みを自動化したり調整を補助するツールの開発を行うことが考えられます。
またいわゆるモブキャラを大量に配置する必要がある際に、1体1体設定するのは大変です。
そこで画像右のように配置情報の一括設定などを行う効率化ツールを開発することもあります。
効率化においては、ボトルネックとなる部分を地道に解消することが大切だと考えています。

3Dアセット制作効率化例

不具合防止

膨大な数のアセットが仕様を満たしているのかを確認するには非常に労力がかかり、仕様が複雑な場合はチェックの抜け漏れが起こってしまう懸念もあります。
そこで各工程ごとの各アセットの状態をチェックするツールを開発したり、必要であれば自動チェック及びメッセージツールに定期的に通知する仕組みを用意することで不具合防止に貢献する事ができます。
弊社の例ですが、画像左がMayaでのチェックツール、画像中央がUnityでのチェックツールであり、それぞれ各工程に合わせたチェックを行う環境を整えています。
画像右はjenkinsにて自動で定期的にチェックを行い、通知をしているものです。
各作業者はもちろん、他セクションからもアセットの状態を順次確認できるため、放置されている不具合なのか、ブラッシュアップの最中に一時的に発生しているものなのかも把握する事ができます。
開発途中で仕様が変更された際には、その都度チェックツールの更新を行う必要があることを忘れてはいけません。

不具合防止例

専任で集中

簡単ではありますが、私の考えるTAが注力すべきフェーズを図で表します。
ここまでご紹介した仕事内容をクリエイティブに詳しいエンジニアの方や、プログラムがかけるクリエイターの方が兼任することもあるかと思います。
しかしTAのタイプ次第ではありますがプロジェクトのフェーズによってやることも変化していくため、量産前から運用まで、可能であれば専任でTA業務を集中して行うことが大事だと私は考えています。
特にはやい段階からプロジェクトに関わり、技術検証や量産体制の整備を先回りして行うことは非常に重要です。
後の開発をスムーズに行うためにも、ここでいかに準備を行えるかが鍵になると考えています。
また、仕様変更へのいち早い対応は、スムーズな移行作業を手助けし、不要な手戻りを抑制することにも繋がります。
重ねてではありますが、特に効率化に関わるTAは専任で、集中して開発に関わることが大切だと私は考えています。

TAが注力すべきフェーズ図

まとめ

モバイルゲーム開発におけるTechnicalArtistの必要性 について書かせていただきました。

TAはエンジニアとクリエイターの橋渡しとなる職種であり、モバイルゲーム開発のスマホの進化に合わせた高クオリティ化、低コスト化の実現のために必要不可欠であると考えています。
さらにゲーム内容やプロジェクトフェーズ、得意領域次第で業務内容は変わるため、より柔軟に、より堅実、より集中して専任でTA業務を行うことが重要だと考えています。

この記事が、高品質で低コストなモバイルゲーム開発の一助になれば幸いです。