こんにちは。サイバーエージェントが運営する公営競技サービス「WINTICKET」のクリエイティブ責任者 兼 マネージャーをしている武田です。
この記事では、事業デザイナーのキャリアについて触れています。
対象は、5年目くらいまでの事業デザイナーを想定していました。
※尚、記事の内容はサイバーエージェント主催の技術カンファレンスで登壇した内容を抜粋して執筆しています。
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1.まえがき
ここ5年で「デザイン」という言葉が、広く、自由に扱われるようになり、同時に「デザイナーへの期待や要件」も、5年前と大きく変化しています。
そんな中、経験豊富なベテランデザイナーが、専門外であったはずのビジネスや経営に踏み込んでいたり、デザインファームやデザインエージェンシーの買収や合併が相次いでおり、「デザイン×ビジネス」にも注目が集まっています。
その中で若手である我々が、大きい仕事をするにはどうすれば良いのか、同世代は何を考えているのか、仕事が一息つくタイミングでよく考えていました。
そして、冒頭に書いた「デザイナーへの期待や要件」が、ごく直近では一定落ち着いてきた感覚もあります。そこで、このタイミングで自分の現在地や取り巻く環境を一度整理しようと思い、今回の登壇に至っています。
2. デザイン×ビジネスのキャリア型
早速ですが、「デザイン×ビジネス」のキャリアとはなんなのか、どのような種類があるのか、下図にまとめています。これらは、「経済産業省 高度デザイン人材育成研究会」によって5つの型として紹介されているもので、以降の内容はすべてこの型がベースになっています。
出典: 経済産業省 高度デザイン人材育成研究会
これらの型それぞれについて、簡単に補足をします。
サービスデザイナーについて
サービスデザイナーはサービスやUXデザインのリーダーとして、人間中心設計やプロトタイプ、ストーリーテリング、リサーチ等のスキルを必要とします。5つの中だと、事業かつ顧客に一番近い位置で仕事をするイメージとなっています。
ビジネスデザイナーについて
ビジネスデザイナーは商業的なブランディングやサービスのコンセプト開発など、実務においてビジネス戦略全体をリードします。そのためのマーケティング実践スキルやKPIマネジメント等、ビジネス現場で求められるスキル全般に目を向ける必要があります。(取捨選択は必要ですが)
ビジョンデザイナーについて
ビジョンデザイナーは私の中でもまだ曖昧ですが、ほぼ起業家や経営者のイメージを持っている感覚です。テック理解、社会課題/トレンド、サスティナビリティー等のスキルや知識を必要とし、常に先見的な立ち振る舞いをします。
デザインストラテジストについて
デザインストラテジストは組織ビジョンの構想や継続改善から、それを実行するプロジェクトの遂行までを設計します。企業戦略に対して、デザイン戦略をアジャストさせて支援する必要があるため経営の一定理解が必要です。
デザインマネージャーについて
デザインマネージャーはデザイン組織全体をつくり、動かしていく役割です。いわゆる「マネージャー」の業務に加え、プロフェッショナル同士の協業環境や、持続可能な組織を構築するために、リーダーシップをはじめとした広いスキルや知識を必要とします。
5つの型それぞれの詳細についてこれ以上は割愛してしまうため、気になる方は経産省が公開している資料をご覧ください。かなり詳細に書かれています。
また、今回はもう少し全体感で捉えるために、下図の3つにグルーピングしてみました。
- サービスデザイナー、ビジネスデザイナーは、「事業を立ち上げたり、拡大する」
- ビジョンデザイナーは、「次を作る」
- デザインマネージャー、デザインストラテジストは、「事業企業戦略に組織やデザインをアジャストさせる」
ものすごく粗い解釈ですが、ここまでくると、キャリアのベクトルはふんわりと見えてくるのではないでしょうか。
さらに、実際自分や周りの人に当てはめていくと、もう少し具体的にイメージできるかもしれません。
例えば、
サイバーエージェントのメディア事業部の場合、新卒入社後まずはサービスに配属され、UI/UX開発や基礎デザインスキルに触れています。つまり、スタートはサービスデザイナーとしてのレールにいます。
そしてその後、
- メンバーを持つようになり、マネジメントに興味を持ち、本格的に極める道へ
- 個の影響力で事業を動かしたい/大きくしたいと思い、事業企画戦略領域の道へ
- サービスデザイナーの中のさらに専門領域を見つけスペシャリストの道へ
など、人それぞれのキャリアを歩んでいます。
また、型同士に優劣はなく、実際は共通しているスキルも多く、中長期でみると複数の型を移動しながらキャリアを形成することも考えられます。
ただ重要なのは、この型の詳細を理解することではありません。
市場は今どうなっていて、現在地がどこで、どこを目指しているのか。今自分がやりたいことを人に説明(プレゼン)できるレベルの解像度に至っているかということだと思っています。
3. キャリアの実現に大切なこと
さて、ここまでは「デザイン×ビジネス」において、分類された5つの型をベースにお話ししてきました。
ここからの内容は、「目指すべきキャリア」が決まった後、「実現する時」に大切だと思っていることについてです。
※登壇アーカイブではキャリア実現について詳しく話していますが、一部割愛します。
キャリアを実現するにあたって最も大切にしていることは「実行する環境」です。
キャリア設計を終えた後、その解像度が高かった場合でも、
- そこに繋がる実務が無い
- 出る杭が打たれる雰囲気
- やる気はあるけど扱う商材(やサービス)にテンションが上がらない
など、気持ちで乗り越えるには重たい課題があったり、逆に解像度がまだ低い場合は、そもそもその環境に身を置いているから、やる気も解像度も上がっていかないという可能性もあります。
このように、「実行する環境」は実現可能性や実現期間を大きく左右する要素となり得ます。
ちなみに、私自身は「ビジネスデザイナー」のキャリアを歩んでいます。
そして、そのための環境として大切な要素と考えているのは下図の3つです。
1つ目:所属する企業の市場に対するプレゼンス
やはり、そこでしか得られない経験や出会える人は貴重だと思います。日々、量的にも質的にも優れた情報や刺激を浴びることができます。
「大企業」はもちろんプレゼンスが高い環境ですが、それ以外にも、急長中の企業や、社会性が高いドメイン(モビリティや医療DX等)を扱う企業、著名な人が属している(ARIGATOBANK )企業、なども含めて考えています。
2つ目:裁量の自由競争
急成長を遂げるとき、成長先の領域が未知であればある程、大小関わらずその領域への挑戦と決断を数多くすることが大切だと思っています。
結果として裁量をもらえるかは別にしても、挑戦したいと声を挙げる同世代等の刺激や、そういった尖りに対して上司が背中を見せないカルチャーが、劇的な成長には必須です。
3つ目:自分や組織の熱量
なりたい自分や、やりたいことの難易度が高いと、達成に時間がかかると思います。長期的にモチベーションを保つためには、組織レベルでマネジメントが効いていることや、個人で練度高いセルフマネジメントをし続けることが必要です。
特に後者に関して、「商材(サービス)や組織を愛せるか」、「愛を注いでいる人が多いか」の2つを満たせていると、セルフマネジメントが恐ろしく楽になります。
以上が、私自身が大切にしている環境です。これらの環境を選んだり、時には作ったりします。
また、これはあくまで個人的に、かつ現時点のキャリアを実現する上で大切だと思っていることになります。
4. 最後に
今回はキャリアについてアウトプットしてみましたが、改めて振り返ると、執筆者(登壇者)の指向性によって解釈の仕方に差が生まれてしまいそうな気がしています。
なので最後は、そもそも「キャリア」をどう捉えているか、根底のモチベーションに触れて終わろうと思います。
私はものづくりが好きです。
ビジネスもマネジメントもやりますが、形になる瞬間が一番好きです。
※「形」が「手で触れるモノ」には限りません。
IT業界のデザイナーである私は、「ビジネス」「行政」「エンタメ」「スポーツ」などあらゆるものが、デザイナーとして関われるようになってきたことにワクワクしていますが、一方で期待値も上がっていると感じます。
そんな中で、その期待値を超え続け、常に「新しい分野」や「大きいサイズ」のものづくりに関わり続けること。そしてその過程で「コレ!」というものを残すこと。
それが、私にとっての「キャリア」の意義であり、モチベーションになっています。
この記事の内容は以上となります。最後まで読んでいただきありがとうございます。
また、記事では本登壇の内容を大幅に割愛しています。お時間があれば、是非アーカイブ映像もご覧ください!
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