ゲーム・エンターテイメント事業部(SGE)では、グラフィックスエンジニア・テクニカルアーティストを育成するための研修「グラプロ」を実施しました。
本記事では、約3ヶ月にわたり、1回8時間・全8回、計64時間の業務時間を使って実施した講義の概要について紹介いたします。

「グラプロ」実施の背景

モバイルゲーム市場では、近年のスマートフォンデバイスの性能向上に伴い、3Dグラフィックスによる表現の重要性が増してきています。
クオリティが高い3Dグラフィックスをつくる上では、3DCGアーティストのスキルに目がいきがちですが、グラフィックスエンジニアやテクニカルアーティストのスキルが不足していると最終的なクオリティはあがりません。
このように、ゲーム開発の現場においては、より高度で専門性の高いエンジニアリングが求められるようになっており、グラフィックスエンジニアやテクニカルアーティストの需要が高まっています。

しかしながら、弊社ではこれらの技術をもつ人材が不足しているという課題がありました。
また、幅広く高度な専門知識が必要で体系的な学習が必要にもかかわらず、興味のある人が独学で習得しているケースが多く、組織として戦略的に育成を行えていないという状況がありました。
このような課題感から、業務時間の1割を技術獲得に当てて、体系的にスキルアップを行う本施策の実施を決定しました。

なお、この施策の開催はゲーム・エンターテイメント事業部(SGE)で実施している経営会議にて決議されました。
SGEでは、自分たちの組織は自分たちでつくるという考えを大事にしており、このような事業部の方針や方向性を決めるための経営会議を年に1〜2度実施しています。
各職種、専門分野に長けた人材を選抜して6名程度のチームをいくつか作り、各チームがさまざまな施策を提案し、その場で決議が行われます。

カリキュラム

隔週で業務時間内に1回8時間、全8回のオンライン講義を実施しました。
カリキュラムは、アーティストが何を考え、どういう仕事をしているのかをエンジニアが理解するという観点で作成し、最終的なゴールは、アーティストが行っている業務をエンジニアの力で効率化できる、そのための土台となる知識を得るというところに設定しました。
講師は株式会社スタジオブロスの深野暁雄氏に依頼させていただきました。

1日目〜3日目は主にアーティストがDCCツールを使う上でのワークフローを理解することを目的とし、DCCツールの基本的な使い方を演習を交えて学びました。
具体的には、リアルタイムCGを作る上でのワークフローと周辺ツールの概要からはじまり、PBRの理論、モデリング(ノードベース・スカルプティングも)、テクスチャリング、アニメーション、プラグインなどについて学びました。
下図は2日目の講義の演習において、こちらのBlenderのチュートリアルを参考にモデリング、テクスチャリング、ライティングを行ったアウトプットです。

2日目のアウトプット

4日目と5日目はSubstance 3Dについて学びました。
具体的にはSubstance Samplerで画像からPBRテクスチャ一式を作成し、Substance Designerでマテリアルを作成し、Substance Painterで3Dペイントを行い、Unityにインポートするところまで行いました。
下図はSubstance Painterのサンプルモデルを使ってテクスチャペイントをする演習のアウトプットです。

4日目アウトプット
6回目〜8回目はUnityに関する講義を行いました。
レイトレーシングやパストレーシングの仕組みからライトマップのベイク、ポストプロセスについて学びました。
またShader GraphとVFX Graphについてもそれぞれ1日かけて講義を行いました。
演習では、Shader Graphで作成したシェーダを使ってVFX Graphで簡単なエフェクトを作成しました。
またその後に、下図のようなUnity公式のサンプルアセットを使って複雑なエフェクトの作り方を学びました。

VFX Graphサンプル

 

まとめ

今回の講義で触れたようなアーティストの使っているツールは、普段エンジニアが使わないものが多く、また業務上の優先順位を考えても、体系立てて学ぶ時間を取りづらいのが現状です。
しかしながら、これらのツールの概要だけでも理解をしておくと、プロジェクトに新しい技術やワークフローを取り入れるきっかけになったり、アーティストとして時間のかかる作業を把握し効率化したりできるようになります。

今回の講義では、それらの要点を短期間で学習できる良い機会になりました。
事後のアンケートでも概ね良好な反応をいただきました。

アンケート結果

SGEでは、今後も本研修のような、技術力向上のための施策や仕組みづくりを積極的に行っていきたいと考えています。

 

 

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2012年新卒入社、一度退社し2021年再入社。ゲーム事業部のUnityエンジニアとしてプロジェクト横断で使用するライブラリの開発などを行なっています。