はじめに
スタジオテクニカルゼミの近藤です。(@NobuteruKondo)
業務では、サイバーエージェント スタジオ戦略室に所属をして、メディア系のスタジオ映像技術の運営などを行っています。
スタジオテクニカルゼミは、各事業部で分かれて存在している動画関連スタジオの、ノウハウ共有・横軸連携を目的に活動をしている社内ゼミ組織です。
今回は、各スタジオで行われている業務の中で、NDIという技術を活用している例をご紹介します。
IT企業内でもビデオ信号を活用するシーンが増えていると思いますので、何かのお役に立てれば幸いです。
NDIとは
NDI(ネットワークデバイスインターフェイス)は、米国NewTek社によって開発されたIP利用における新しいライブビデオ制作ワークフロー支援プロトコルです。このNDIテクノロジーを活用することで、一般的なギガビットイーサネット環境においても、映像、音声、メタデータを、NewTek社TriCasterやIPシリーズなどのシステム間だけでなく、NDI互換のさまざまなシステム、デバイス、PCなどとのリアルタイムによる相互伝送を可能とします。
https://tricaster.jp/ndi-central/
簡単にまとめると、下記の点になるかと思います。
- 有線LAN環境で、手軽に映像・音声信号のやり取りができる。
- 比較的高画質で、低遅延である。
- ソフトウェアやプラグインも充実していて、異なる製品での相互接続性も高い。
公式サイトから入手できるNDI Toolsを利用すれば、LAN内でのScreenCapture伝送などすぐに試すことができます。ただ、伝送速度は100Mbps前後であったり、セキュリティ設定で止められているLANでは利用できないことなどに注意をしてください。
スタジオでの利用例
利用例 | 主なツール | 本素材での利用 | |
極AIお台場 | イベント時の複数スタジオ内でのモニター利用 | OBS Briddog (hardware) |
なし |
極AIお台場 | スタジオ状況の把握 | TouchDesigner | なし |
極AIお台場 | LED撮影のための照明連動映像の送出 | OBS MadMapper |
なし |
Zstudio | カメラ映像の取り込み | Tricaster NC2 | あり |
Zstudio | ゲーム配信画面送出ツール | 他社製独自ツール | あり |
Zstudio | テロップツール | Charactor Works | あり |
シャトーアメーバ | リアルタイムCGの送出 | Adobe Premiere Panasonic Kairos |
あり |
ここでは各スタジオの担当者のインタビューを元に、利用例を紹介したいと思います。
極AIお台場スタジオ
津田 信彦 (ツダ ノブヒコ)
課題
・スタジオ入口にタリーシステムがない 収録中に扉開閉をされるリスクが有る
・スタジオメンバーが常に撮影につきっきりではないため、状況の把握が必要。
利用内容
・タリー/スタジオ俯瞰カメラ/システム状況/STypeの状況を、iPadから確認することができる。
・信号はサーバ室に設置してある1つのPCに集約を行っている。
・Touch Desinerで制御を行っている。タリー(スタジオ内の状況)もここで選択をしている。(収録中・休憩中などの表示)
このシステムを導入してからは、スタジオから離れた場所でトラブル対応をしながら、変更の反映を確認することができるようになり、スタジオとの行き来が減り、トラブル対応の短時間化もすることができています。
Zstudio
廣中 愛子 (ヒロナカ アイコ)
利用内容
・カメラ映像を変換してスイッチャーに取り込む利用をしていることもある。
・ゲーム配信では素材も多く、画面の切り替わりも多いため、様々なソフトウェアを利用している。
・チームロゴや、カード/クラス どちらのデッキが勝ち抜けたかなど、リアルタイムに情報更新を行っていく
・ゲームの特性や演出に合わせて、コントロールパネルのカスタマイズも行っている。
・予算が少ない番組では、Charactor Worksというソフトウェアを利用し、少人数でも運用できる仕組みをを整えている。
配信番組と規模によりソフトウエアを使い分けています。本線の信号としても利用しているので、安定性には特に気をかけています。
シャトーアメーバスタジオ
近藤信輝(コンドウノブテル)
利用内容
・Winticketミッドナイト競輪という公営競技の生中継番組での利用
・出演者の的中ポイントを、すぐにアニメーション付きCGテロップとして送出したい。
・出演者は、複数人であり、その結果をすぐに反映する必要がある
・textの入力はPhotoshop、即時にPremiereに反映される。効果音とともに再生される。
NDI信号は映像スイッチャー KAIROSに入力される。
クリアしたかったこと
・KAIROSへの映像信号入力数を減らすために、IPでの入力をしたかった。
・放送系の専用ハードウェアを利用すると、制作での運用柔軟性に難があった。
・デザイン/出演者数/仕組みなどが変わる想定があり、専用ソフトウェアを作ることが躊躇われる。
上記の画像でも点数ではなく、文字を急遽取り入れる演出がされれている。
メンテナンス性能も考えると、汎用ソフトウェアのみで満足できているのであれば、十分だと思われる。
SDI信号で入力しようとすると、Fill Keyの2つの入力が必要になるため、NDIで済ませることができるのは大変メリットです。ノートPCで運用しているので、特番でのスタジオ変更や機材の追加もしやすいです。
まとめ
NDIの利用は、単に映像信号をIPに変えることではなく、リアルタイムデータやソフトウェアと組み合わせて、オペレーションを変革して価値を作り出す制作環境のアップデートである、と考えています。
これからもスタジオ技術からの発案で、映像作品やプロダクトに貢献できるように、日々の成果を積み重ねていければと考えています。