MdN Design Interactiveで連載中の
「Amebaクリエイティブディレクターが選ぶ!
今月のオススメアプリ5選」
今月はストア上でも非常に人気の【有料カメラアプリ】にフォーカス!
皆様こんにちは。Photoshopでいつもお世話になっている「コンテンツに応じる」機能ですが、とあるセミナーで「コンじる」と略称で呼ばれていて、会場のお客さんも割と普通に受け入れていたのですが、この呼び名って一般常識でしょうか? 会場で一人ドキドキした、佐藤です。
さて、この連載ではAmeba内でも話題になった気になるオススメアプリを、UIデザインの観点からご紹介させていただきます。今月はストア上でも非常に人気な「有料のカメラアプリ」についてフォーカスし、撮影→加工という基本機能に加えて、「有料ならではのクオリティ」についてUIベースに考察してみたいと思います。
【わ!消えた!!】シンプルな機能で簡単レタッチ
1.TouchRetouch
価格:iOS:240円(2017年3月2日現在)
Android:210円(2017年3月2日現在)
機能のシンプル度:★★★★★
「TouchRetouch」は簡単な操作で手早く写真から不要なものを取り除いてくれるアプリ。冒頭で紹介したPhotoshopの「コンテンツに応じる機能」に似た仕組みで、不要なものを消してその周囲の画像から推測して補完して埋めてくれる機能だが、驚くべきはその簡単さと機能のシンプルさにある。
下部メニューから「オブジェクト除去」を選択し、消したい部分をブラシで塗りつぶすだけでキレイに消してくれるのだが、細かい作業がしやすいように、ブラシで塗りつぶしている間だけ拡大鏡のようなUIが出現して操作をサポートしてくれる。また、色調補正など複雑な加工機能はなく、あくまでも「手軽なレタッチ」にフォーカスすることでユーザー体験をシンプルに設計しているため、体験に一貫性があるため使用時の満足度は高い。
▷iPhone: TouchRetouch
▷Android: TouchRetouch
【くるくる回る!?】豊富な機能をライトに切り替える
2.Musemage―プロフェッショナルなカメラappとビデオ編集ソフト
価格:iOS:480円(2017年3月2日現在)
手ぶれ補正楽しい度:★★★★
カメラ機能だけでなく動画の手ぶれ補正やタイムラプスなど、1つのアプリで便利な機能を凝縮している「Musemage」。画面上のメモリのついているところをいじれば直感的に細かな操作が可能で、特に「マニュアルモード」では焦点を好きなところに合わせたり、シャッタースピードを変えられたりと、簡易的に一眼レフで撮影しているかのような細かな設定ができる。
この手のアプリは機能が多い分操作が複雑になりがちだが、このアプリが優れている点は、横フリックで撮影モードをライトに切り替えることができ、かつ画面毎にできる機能を制限している点にある。「あれもこれも」を1画面に詰め込まず、それぞれの画面に「テーマ」を持たせてユーザーができることを制限することで、このアプリが持つ特性をユーザーに分かりやすく伝えることができ、結果アプリを使うモチベーションへと紐づけているのではないだろうか。
▷iPhone: Musemage――プロフェッショナルなカメラappとビデオ編集ソフト
【撮った写真が多彩に変化】操作部をまとめてシンプルに見せる
3.Afterlight
価格:iOS:120円(2017年3月2日現在)
Android:101円(2017年3月2日現在)
Windows:100円(2017年3月2日現在)
次から次へ加工を重ねたくなる度:★★★★★
「Afterlight」はトリミングや補正などの調整ツール、フィルター、テクスチャーなど、豊富な機能がオールインワンなアプリ。とにかく盛りだくさんな画像加工ができるこのアプリだが、ダークトーンを基調としたUIは品がありつつも控えめな印象で、シンプルなアイコンが機能のライトさを演出している。
また、加工操作が下部のメニュー内で全て完結するため、機能が多い割に迷いが少なく、次に何をすれば良いかが分かりやすいUI設計となっている。豊富な機能を訴求する際、「操作する位置」を一定に保つことで複雑さを軽減することができ、豊富な機能をユーザー自身が「主導権を持って操作している」ような印象を与えることができ、使いやすさへとつながっているのではないだろうか。
▷iPhone: Afterlight
▷Android: Afterlight
▷Windows: Afterlight
【トイカメラ風?】推しの機能を全面に見せる
4.Analog Paris
価格:iOS:120円(2017年3月2日現在)
インスタ映えしそう度:★★★★★
「Analog Film Cityシリーズ」という都市のイメージをベースとしたカメラアプリ群(他にもAnalog Tokyo、Analog Londonなどがある)の1つでもある「Analog Paris」。コントラストやハイライト調整など、基本的な画像加工の機能が備わっているアプリだが、人気の秘密はその「世界観」にある。
それぞれのシリーズに合わせた独自のフィルター機能が特徴的で、アプリを開くとパリで撮られたサンプル写真がデフォルトで設定されており、トイカメラ風のフィルターがすぐに選択できるように訴求されているため、ユーザーはついタップしてこのアプリの世界観を体験してしまうのである。
「あ、こういう風になるんだ」と認識し、ユーザーも手元にある自分の写真で試したくなるのは必然といえよう。
チュートリアルで細かく機能を訴求するアプリも沢山あるが、「まずは推しの機能を体験させる」という訴求の仕方もユーザー体験の向上に繋がるのではないだろうか。
▷iPhone: Analog Paris
【まるでデジカメ】高性能な機能を品良く見せる
5.ProCam 4 – マニュアルカメラ + RAW
価格:iOS:600円(2017年3月2日現在)
iPhoneのポテンシャル再認識度:★★★★★
その完成度から、App Storeのベストアプリを2度も受賞した「ProCam 4」。デジカメ顔負けの性能を誇り、撮影時の細かな設定や、撮影後の画像加工までの全てをこなすこのアプリだが、使用感はとてもライトなものになっている。撮影時に画面上に沢山の表示が出ていて一見難しそうに見えるが、基本的な機能は下部の5つで、デジカメを扱ったことのあるユーザーであればなんとなく機能が理解できるだろう。使いこなすためには設定を細かくいじっていく必要があるが、調整時のメモリが大きく各ボタン間にゆとりがあったり、オートフォーカス設定時に拡大鏡が出現し、どの程度ボケるかが視覚的に分かりやすくなっているなど、安心感のあるUIで「品の良さ」を演出している。機能こそ多いアプリだが、複雑な印象を軽減するためのUI上の工夫が随所に見られる良いアプリである。
▷iPhone: ProCam 4 – マニュアルカメラ + RAW
圧倒的な機能性も独創性も、「魅力」として消化できるかどうかが鍵
ストア上で常に人気の高い「写真/カメラ」カテゴリ。「無料」のアプリがたくさんある中で、「有料」としてユーザーに購入してもらうためには、①機能で突き抜けるか、②独創的なコンセプトで突き抜けるか、がポイントとなってくる。しかし、その難易度は相当高く、専門的になればなるほどユーザー属性はニッチとなり、市場が狭くなってしまう。
今回紹介したアプリは、その中でも「プロダクト」としての完成度が高く、ユーザーが使いたくなる「独自の魅力」として機能やコンセプトを消化しているものばかりであった。今後もより便利なアプリが登場し、流行の移り変わりが激しい市場は変わらないと思うが、「高度な機能」や「他にはない機能」に加えて「複雑に見せないUIデザイン」という点も、「独自の魅力」としては今後も重要になってくるだろう。