AmebaブログでUXディレクターをしている大塚です。どうも。

サービスをつくる事業会社のディレクターとしては、ユーザー体験(UX)と向き合うのは当然の事だと思います。ところが、ネット上の記事などを見ていると、案外「UX」とかとかよくわからないとか、難しいという認識になっている方も多くいらっしゃるようなので、サービスにおけるユーザー体験とはどういうことなのかを私が周りの人にポツポツ伝えている話をまとめてみたいと思います。

サービス = 「体験」+ 「結果」

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上の図は近藤隆雄教授のサービスマネジメントの考え方を参考に描いてみたのですが、サービスにはサービスを受けたことで得られる「結果」の部分とその過程で得られる経験部分の「体験」があります。「結果」とは、たとえば、ニュースサイトであれば情報であり、ECサイトであれば商品であり、マッチングサイトであれば出会いにあたります。「体験」とは、その結果を得るまでに経験したことで、たとえば、知りたい情報が素早く見つかり好奇心満たされたり、商品をよく知ることで安心する事ができたり、新しい出会いのすれ違いざまのドキドキ感を感じることができたりといった”こと”が「体験」の部分になります。

サービスは「結果」の数値だけでは全体を捉えられない

事業であれば「結果」を求められるので、当然数字を追っていくことになります。次にその数値を分析することになります。ですが、数値はあくまでもサービス上で発生していることを集約して、人が理解できるところまで削ぎ落とした情報です。なにが実際発生しているのかを包括的に理解していることとは異なります。サービスで発生している「体験」に関しての情報が足りないと、適切な問いや課題がたてられない事に遭遇します。
当たり前の事かもしれませんが、サービス上の「体験」は、サービス内のアクション(数値)だけでなく、サービス外の影響、個人の経験や価値観、によって成り立ちます。それが、事業のとある「結果」だけに視野を狭めすぎると、ユーザーからの視座が抜けた施策になり、リスクや失っているものがなんなのか見えない状況になってしまいます。

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状況を把握するためには「結果」の数値と「体験」のストーリーの両方が必要

Disruptive Innovation のクレイトン・クリステンセン教授が「How Will You Measure Your Life? 」で、「神は統計学者などやとわない。人間の思考には限界があるから、ものとごを数値を集計しないと理解できないんだ。すべてを追うことができないから、債権、債務、収入などの数字に集計して理解する。それが私たちの世界の理解の仕方なんだ。」といった話をしています。この話を聞いたときに、同様に「体験」も同じことではと考えました。人が「体験」を認知できるようになるには、なにかに集約される必要があります。そのフォーマットとして適しているのがストーリーだという考えに至りました。そう捉えると、UXデザイナーと呼ばれるような人達が、体験をチームで認識できるようにシナリオを作成したり、カスタマージャーニーマップを作成することの意味がわかると思います。
スウェーデンの統計学者で「事実に基づいた世界観」を促進しているハンス・ローリングさんのプレゼンテーションをみると、世界でなにがおこっているのかを数値とグラフで説明しつつ、その途中途中にその現場で発生しているストーリーが差し込まれています。包括的に理解するためには両方の理解が必要なことがよく分かる良い例だと思います。

良い体験の設計は、良いストーリーを描くことから始まる

本来、ストーリーとは、価値観や教訓は、もちろん、社会、文化、歴史などの背景を伝承するためにあります。ルールや数字には集約出来ない情報を伝えるためのフォーマットです。内容を良くしたければ、良い取材してリアリティを持ち込んだり、人の好奇心をそそる仕掛けを入れたり、読後感が良くなるような結末やエピローグを提供する必要があります。
現場にリアリティを持ち込む手法として、ユーザービリティテストやインタビューをすることも一つです。自分たちが作っているサービスについて話が聞けたり、観察ができる大切な機会です。また、自ら体験することや、チームで一みんなで体験する機会を積極的に設けることも重要なインプットになります。アクセシビリティの課題などは、実際に開発者が目の前でみてもらうのが一番発見が大きいです。そうやって、リアリティのあるインプットを入れることが良いストーリーを描くための土壌になると思っています。

良いストーリーだけでは売れないが、良いストーリーが無ければロングセラーは難しい

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もちろん、良いストーリーを書いたからといって、事業成果が即あがるということはありません。こういう事をいうと誤魔化しみたいな感じにも聞こえて嫌なんですが、よく私がたとえに使うのが本です。良い文章を書いたり、文学的に優れたものを書いたからといって、本が売れる保証はありません。本が売れるためには、タイミングだったり、本の体裁や、時代のニーズや市場規模などいろいろなマーケティング要因も必要です。だからと言って、本の内容が雑であれば、一時期売れたとしても、ロングセラーになることは難しいと思います。また、文章の細かいところを整えたところで部数が増えるものでもありませんが、そういった細かいところのこだわりの総体が本のクオリティとなってロングセラーのヒットに結びつくと考えます。こういったことは、仕事を進める上での捉え方だと思います。そうやって捉えない限り、忙しい職場では、細かい数値成果の上がらないようなものなど一生完了しません。クオリティや視線をあげることに自らコミットすると決断して、分断せず織り交ぜてやるしかないのです。

まとめ

サービスをつくるディレクターとしては、実際にサービスを立ち上げたり、運用を行ったりして事業貢献を求められます。そういった諸々の仕事の中で、なぜ、それを行わないといけないのか、どうやって人を巻き込むのか私自身も日々悩みの中に身をおいています。そういうときに、自分の考えが整理されていないと、もやもやとしてしまう事もあります。そういう意味で、こういった整理を自分なりにしておく事という事が、私にとっては意味のある事でした。サービス =「体験」+「結果」というこのシンプルなフレームは、意外と自分の考えに馴染むところがあり、いつも拠り所にしています。

というところで、そろそろ、終わりにしますが、今回はフレームの話に終始してしまったので、今後、機会あればもうちょっと掘り下げた課題について、また書いてみたいと思います。

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2004年サイバーエージェント入社。Amebaブログの立ち上げから、リニューアル、Ameba関連サービスの立ち上げ、改善など多数行い、ディレクショングループマネージャーなどを経験。その後、ソーシャルゲーム開発を担当し、農園ゲームファーミーなどを立ち上げ、運用する。2014年から育成やデザインスプリントなど、UXデザイナーとしてコンサル的な活動していたが、昨年からAmebaブログのUXディレクターとして奮闘中。人間中心設計専門家。