サイバーエージェントでマッチングアプリ「タップル」のPMをしている、田中です。

 

先日、DMM・サイバーエージェント・グッドパッチの3社合同で開催された 「PdMオフレコ会議:AIの壁編 〜AIはなぜうまくいかないのか〜」 に参加してきました。名前のとおり「オフレコ」、つまり成功事例のきれいな発表ではなく、うまくいかなかった話や本音を持ち寄る会です。

 

私自身、最近は「1人のPMとしてAIをどこまで使いこなせるか」に加えて、「チーム全体へのAI浸透をどう進めるか」にとても興味をもっています。AI活用の途中でぶつかる壁を、他社のPdMはどう越えているのか。その本音を聞いてきました。

 

PdMオフレコ会議とは?

 

「PdMオフレコ会議」は、複数社のプロダクトマネージャーが集まり、成功談ではなく失敗や本音を起点に実践知を共有する コミュニティイベントです。今回は「AI」がテーマ。生成AIをプロダクト開発にどう活かすかは各社の関心事ですが、いざ現場に入れてみると「思ったほどうまくいかない」場面も多いのが実情です。その正直なところを持ち寄ろう、という趣旨でした。

 

PdMオフレコ会議:AIの壁編〜AIはなぜうまくいかないのか〜【DMM/CA/Gp合同】

 

今回のテーマ:「AIはなぜうまくいかないのか」

 

イベントの入り口として、運営から次の4つの問いが投げかけられました。どれも「AIを入れれば解決」では済まない、現場のもやもやを言語化したものです。

 

  • 「AIを活用できている状態」がそもそも曖昧 — どこまでやれば「活用できている」と言えるのか
  • 全員がAIを活用する必要はあるのか — 一律に使わせることが本当に正解か
  • AI導入で責任範囲が曖昧になる — アウトプットの最終責任は誰が持つのか
  • セキュリティと利便性のジレンマ — 守りを固めるほど使いにくくなる

 

この4つが、LTと懇親会を通じて何度も立ち返る「共通の壁」になっていました。

 

全体の流れ

 

当日はライトニングトーク(LT)と、その後のテーブルトークという2部構成でした。

LTは各社1名、合計3本。発表の尺は短めで、そのぶん後半のテーブルトークでじっくり深掘りするという、対話重視の設計でした。

 

  • 18:30〜 開場・受付
  • 19:00〜19:10 オープニング
  • 19:10〜19:50 ライトニングトーク
  • 19:50〜20:50 懇親会・テーブルトーク
  • 20:50〜21:00 クロージング

 

LTで語られた3社の「AIの壁」

 

今回はAIの壁というタイトルでしたが、AI活用が進む組織が順番に踏む「壁」になるよう、3つのテーマに分けられた構成になっていました。

 

  • グッドパッチ|福田 智也さん(PdM)── ガバナンスの壁
    • 「AIに何を入れていいか」問題。安心して使うためのルールの壁をどう埋めたか
  • サイバーエージェント|池垣 隼介さん(MG-DX PdM)── 価値創出の壁
    • AIは浸透したのに成果が変わらない。「価値が出ない」壁をどう超えたか
  • DMM.com|渡邊 麗子さん(アルファ室 PdM)── 組織浸透の壁
    • 「なぜ、AI活用は組織に広がらないのか」。組織に広げようとしたときにぶつかる壁の話

 

福田さん(グッドパッチ)|ガバナンスの壁

 

テーマは「AIに何を入れていいか問題」。「これ入れていいやつ…?」と毎回不安になる、機密情報の定義がふんわりしている——そんなモヤモヤを、福田さんは 「組織が悪いんじゃない。不安要素が多くて安心できないだけ」 と整理されていました。

 

安心感を自分で埋めるための3つの工夫も、とても興味深いものでした。

  • ①ルール:AI用の機密レベルを定義し、置き換えるべき情報を明文化する
  • ②仕組み:ローカルLLMで固有名詞・数値を自動マスキングし、外に出すのは機密ゼロのテキストだけにする
  • ③説明:「これ大丈夫?」への答えを先に用意しておく

 

何より、締めの 「待たない。足りない部分は自分で埋める。それがPdMの仕事」 という言葉が記憶に残りました。ロールにとらわれず、プロダクトをよくするために必要なことは全部やる、そんなPdM像そのものだと感じたからです。

 

池垣さん(CA)|価値創出の壁

 

同じCAの池垣さんのLTは、ひとことで言うと「AIを使う”前”の考え方がいちばん重要」というお話でした。3ヶ月でAIエージェントを50体つくり目標も達成したのに、数ヶ月後「思っていたほど成果は変わっていない」と気づき、部署に”AI疲れ”が漂い出したという、ご自身の部署の失敗から始まる話でした。

 

原因は 「AIで何ができるか?」から始めてしまったこと。個別タスクを速くしても、全体のスピードは一番詰まる工程(ボトルネック)で決まるので変わらない。そこで順番を逆にして、成果最大化 → ボトルネックを探す → その一点にAIを当てるに変えた、とのことでした。

 

実例では、要件定義MTGの中でも時間を使っていた「懸念点の出し合い」だけをAIに任せて共通論点シート化することで、要件定義の時間が1/3になったそうです。「何を撃ち抜くかを決めるのがAI時代のPdMの仕事」という締めが刺さりました。

 

渡邊さん(DMM)|組織浸透の壁

 

渡邊さんは 「あなたの組織は”導入している”だけ?それとも”活用できている”?」 と問いかけ、最大の壁はスキルの差ではなく「前提知識の格差」だと指摘されていました。

以下の3つの土台がバラバラだと、優れたプロンプト集を配っても一部の上級者しか使えないと定義されており、非常に納得感がありました。

  • ①AIで何ができるかの想像力
  • ②セキュリティの安心感
  • ③業務を分解して任せる力

これを踏まえて、共有すべきは便利プロンプトではなく 「何を考え、なぜAIに任せたか」という判断のプロセス だ、とされていたのも印象的でした。そもそも全員が同じ水準で使える必要はなく、本当に目指すべきは「使う人を増やすこと」ではなく 組織として価値を再現できる状態 だと感じました。組織のAI活用を一段引き上げていくうえでの指針になりそうです。

懇親会・テーブルトークの様子

 

テーブルトークでは、LTで出た問いを起点に、参加者どうしで「自社ではこうだった」を交換しました。会社もプロダクトも違うのに、ぶつかっている壁が似ている のが面白かったです。特に「1人でAIを使いこなす話」から一歩進んで、「チームや組織にどう浸透させるか」になると、どの会社も同じように苦戦していました。

 

参加してみて、持ち帰った学び

 

今回いちばんの収穫は、AIの壁にぶつかっているのは、どの会社も同じだと知れたことです。「1人で使うのと、チームで当たり前にするのは違う壁がある」その悩みを、会社もプロダクトも違うPdMが同じように抱えていました。

 

しかも各社まだ「正解」は持っていない。「早く浸透させなければ」と焦っていましたが、これは業界全体でまだ答えを探している最中なんだ、と捉え直すことができました。「成果を止めている一点にAIを絞る」「前提知識の格差を埋める」「足りない部分は待たずに自分で埋める」どれも明日から試せるヒントになりました。

 

もともとPdMは、プロダクトや事業をよくするためなら何でもやる仕事。AI活用もその手段の1つとして、お客様の体験をよくするために前向きに向き合っていきたいです。

 

おわりに

 

「オフレコ」だからこそ聞けた本音が詰まった、あっという間の2時間でした。登壇者のみなさん、参加者のみなさん、ありがとうございました。

 

「PdMオフレコ会議」は、複数社のプロダクトマネージャーが集まり、他では言えない悩みの相談や、ここだけのセミナーなどを今後も開いていきます。興味がある方は、まずはSlackコミュニティをのぞいてみてください。みなさまのご参加をお待ちしております!

 

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2024新卒入社のPMです。現在はタップルでものづくりをしています。