こんにちは。東京科学大学 修士一年の一瀬達矢です。
AI事業本部 極TD事業部で2026年5月から3ヶ月間、ミッション型インターンシップに参加させていただきました。
このインターンでは「広告効果の予測精度を上げる」というミッションを与えていただき、さまざまなアプローチを試しました。今回はその中でも特に、「広告の効きやすさ」に着目した手法が精度向上につながるのか検証した取り組みについてお話しいたします。
極予測TDとは
極TDはAIを活用して広告テキストの自動生成や事前予測を行っています。その機能の一つにRSA広告の効果予測があり、私はその精度改善に取り組んでいました。RSA広告は、主に見出しと説明文からなる検索連動型広告で、ユーザーがGoogle等で検索した際に表示されます。

RSA広告の特徴は、広告文を1本だけ用意するのではなく、見出しを最大15個・説明文を最大4個まで登録しておく点にあります。検索エンジンは、ユーザーが検索するたびにその中から見出しと説明文を数個ずつ選び出し、1つの広告として表示します。上の画像に表示されている見出しと説明文も、登録された候補の中から自動的に選ばれたものです。
極予測TDでは、この「見出し最大15個+説明文最大4個」のセットを1つの組み合わせ(=入稿単位)として扱います。この組み合わせがどれくらい広告効果を出せそうかをAIで見積もり、いま最も効果が出ている組み合わせを上回ると予測されたものだけを広告主に納品します。
参考: 極予測TD、効果予測機能をアップデート ―レスポンシブ検索広告における、広告見出し・説明文の組み合わせ効果予測が可能に―
この事前予測が重要なのは、試せる組み合わせが膨大だからです。近年は大規模言語モデル(LLM)による自動生成で候補がさらに増えましたが、本当に効果が出るかは配信してみないとわからず、すべてを試すには時間もコストもかかります。だからこそ「配信前に有望な組み合わせを見抜く」予測の精度が、運用効率を大きく左右します。この予測精度を上げることが、今回の私のミッションでした。
課題
これまでの予測モデルは、登録されたすべての見出し・説明文を平等に扱い、1つの広告として評価していました。
しかし実際の配信データを見ると、効果が出ているものは一部の見出し・説明文に偏っていることがわかりました。下のグラフはその偏りを示したもので、見出しは最大15個登録できるにもかかわらず上位4個だけで見出し全体の約8割を占め、説明文も最大4個のうち上位2個で説明文全体の約8割を占めていました。
だとすれば、すべてを平等に扱うのではなく、「効いている見出し・説明文ほど重視して評価する」ことで予測がもっと当たるのではないかと考えました。

解決策
「よく効く見出し・説明文を選んで入力する」のが理想ですが、広告効果は配信してみないとわからないため、そのままでは本番で使えません。そこで、「組み合わせの中でどの見出し・説明文が効きそうか」をテキストだけから予測できるようモデルを学習させる方針を取りました。仕組みは次の2段構成です。
- シェア率の予測(図の「シェア率予測器」): 組み合わせ内で各見出し・説明文がどれくらい効きやすいか(シェア率)を重みとして予測する。学習時には、この予測値が実績シェアに近づくよう損失関数に項を追加する。
- 重みによる加重平均: 予測した重みで見出し・説明文のベクトルを加重平均し、広告全体の代表ベクトルを算出する。

※ このモデルは仮説検証用に新しく構成したもので、現行の本番モデルで使用されているものとは異なります
学習の損失関数に関して、主目標は「ランキング損失(RankNet)」で、同じ広告グループ内で効果の高い広告ほど高いスコアが付くようにします。そこに、効きやすさに基づく重みを実際のシェア率へ近づける補助項(交差エントロピー損失)を小さく加えました。
結果
この仕組みが本当に精度向上につながるのかを確かめるため、モデル構造は変えずに、効きやすさの補助項を損失関数に加えなかった場合と加えた場合で、どの程度広告効果の予測精度が変化するのかを確認しました。
| 指標 | 補助項を加えたことによる変化 |
| 同じグループ内で、どちらの広告効果が高いか当てる正解率 (pairwise accuracy) | +2.4 pt |
| 同じグループ内で、広告効果1位を当てる正解率 (top-1 accuracy) | +2.6 pt |
結果として、効きやすさの補助項を与えることで、順位付け・勝敗判定のいずれも改善する傾向が見られました。「効きやすさ」という切り口を考慮することが、予測精度の向上に寄与したと考えています。
また、個々の見出し・説明文が組み合わせ内でどの程度のシェアを獲得するかについても、予測精度を検証しました。その結果、損失関数にシェア率の補助項なしでは効きやすさをほとんど学習できず、加えて初めて実際のシェアと強く相関するようになったことが確認できました。広告全体の効果だけでなく、見出し・説明文という細かい粒度の情報を学習に組み込んだことが、精度向上に効いたと考えています。
まとめ
効果予測の精度向上は、配信前に候補を絞り込み、検証コストを有望なものに集中できるという点で非常に重要だと考えています。
さらに今回のモデルは、副次的に、入稿組み合わせの中でどの見出し・説明文が効くかまで予測できます。そのため、組み合わせを構成する段階での活用も期待できます。例えば、新しく生成した見出しを既存の好調な広告に組み込む際、その見出しが本当に効きそうかを事前に検討する、といった使い方が考えられます。
インターンで感じたこと
このインターンで何より貴重だったのは、実際の現場で本物の課題に挑戦できたことです。学生という立場でありながら、社員の方々と同等の裁量で多くのことを任せていただき、その一つひとつを手厚くサポートしていただきました。
技術面では、現実の環境は教科書のようにきれいにはいかず、データに潜む分布の偏りに目を向けることの大切さを学びました。うまくいかないことも多くありましたが、実データと向き合いながらさまざまな仮説を立て、何度も検証を重ねられたことは、貴重な経験でした。週次のミーティングで毎回的確なアドバイスをくださった社員の皆さまには、心から感謝しています。
また、業務外でもチームの一員として温かく迎えていただいたことも印象に残っています。歓迎会やお疲れ様会、BBQにも呼んでいただき、自然にチームへ溶け込めたように思います。勤務日ごとにさまざまな部署の方とのランチを設定していただき、多くの社員の方と直接話す中で、サイバーエージェントの事業の幅広さと、分野を越えて挑戦できる環境の魅力を実感しました。
最後になりましたが、サポートしてくださったトレーナーやメンターの方々、極TDのみなさんをはじめとする社員の皆さまには、大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
