”データを武器に事業を成功に導く” をビジョンに掲げている当社のメディアマーケティング本部。
インターネットテレビ局「AbemaTV」や映像配信プラットフォーム「FRESH!」、定額制音楽配信サービス「AWA」、「アメブロ」などサイバーエージェントが提供するメディアサービスを担当しているコンサルタントやデータサイエンティストが所属する横断組織です。一般的に 「マーケティング」というと、商品やサービスの販売を促進するための活動や仕組みという意味合いが強いかと思いますが、ユーザーデータを元にユーザーのニーズに即したプロダクトに成長させていくことを目的として、当社メディア事業管轄では「メディアマーケティング本部」としています。
2017年4月、メディアマーケティング本部では各メディアサービスへの事業貢献度をこれまで以上に高めるべく、約10年間広告事業で活躍していた備前を本部長に新体制をスタートさせました。
新体制スタートから約1ヶ月半、組織改編に至る経緯や具体的な取り組みなど備前に話を聞きました。
備前 光隆 メディアマーケティング本部 本部長。2006年サイバーエージェント新卒入社。入社後はインターネット広告事業本部で代理店営業を担当し、入社3年目で営業マネージャー、入社5年目以降SEM局局長・ディスプレイ戦略局局長に就任しコンサルティング業務に従事。2014年よりアドテク本部に異動し、事業責任者としてスマートフォンに特化したダイナミックリターゲティング広告「Dynalyst」を立ち上げる。2017年4月より現職。
――広告事業から、メディア事業のマーケティングチームに異動したきっかけを教えてください
約10年間広告事業に在籍していまして営業やコンサルティング、エンジニアとゼロからプロダクトを作る事業責任者と、幅広い経験をさせていただきました。そんな中で、30代のまだまだ足腰が強いうちに全く新しい分野で勝負してみたいと思ったことがきっかけです。
全社的にも「AbemaTV」に最も注力しているタイミングということもあり、この機会にメディア事業のマーケティング組織という新たな挑戦をさせてもらえたことを大変有難く思っています。
同じ会社といっても広告事業とメディア事業では拠点ビルも違いますし、やはり雰囲気は全然違うなと思いました。当然日頃業務で使用している用語も異なりますし、広告事業のようにクライアントとの直接的なやり取りを通じて業務が進んでいくのとは違い、誰かに期日を決められる訳ではないのでクオリティやスピードを自分たちで担保しなければならないのだと感じました。ユーザーに支持されるサービスを運営するために、自分たちに厳しい姿勢がクオリティを追求していく上で必要なんだと、メディア事業のメンバーを見ていて思いますね。
――2017年4月からマーケティング本部の組織改編を行ったそうですが、どういった経緯だったのでしょうか?
私自身は2017年1月にメディア事業に異動してきまして、最初の3か月は「AbemaTV」専任のコンサルティング業務を行っていたのですが、その間に現在のメンバー全員と主要な事業責任者に、マーケティング組織が抱えている課題を教えてもらいました。
そこで出たのは大きくふたつで、ひとつは事業責任者やプロデューサーが、日々のファクト把握や簡単な分析までを行えるような環境が決して十分に整備されているとは言えず、マーケティング組織のメンバーはデータを出せること自体がバリューになっていたという点。いわゆる “データ出し屋” のようになってしまっていたということなんですね。依頼のあったデータを出すことでいっぱいいっぱいになってしまって、それだとメンバースキルも上がっていかないし、何よりマーケティング組織として本来やるべき深堀や気付きを与えるための分析に十分に時間をかけられていないという状態でした。
ふたつめは、一口にメディア事業といっても、動画サービスや音楽配信サービス、マッチングサービスと様々なメディアサービスを展開しており、マーケティング担当者は各事業に入り込んでいくので、横断組織である強みが醸成しにくいこと。それぞれのサービスは種類も違えば追っているKPIも違うので、どうしても個別最適になってしまって、マーケティング組織全体の強みとして昇華できていなかったのが実態でした。
もちろん課題のない組織なんてありませんし、課題を抱えながらもメディアマーケティング本部のメンバーはこれまで一生懸命頑張って事業に貢献してきました。ただ、自分のこれまでの経験も生かして皆の力を借りながら事業貢献度合いをさらに加速できればと思い、今まさに組織強化に向き合っているところです。
事業内容は違えど、広告事業在籍中に担当役員に徹底的に教わった、ビジョンや目標を掲げ、それを達成するための戦略を考えて、実現できる実行体制を組織するという原理原則はどこでも同じだと思っているので、当時の経験は今も活きています。
営業やコンサルティングを通じて、人に物事を分かりやすく伝えることや社内のフロー・仕組みを作ること、また、「Dynalyst」をゼロから立ち上げた経験から、プロダクトや組織を作る大変さも理解しているつもりなので、異なる分野に異動してくるときの心理ハードルはありませんでした。活かせるスキルも多いと思っています。
――組織の強化というと具体的にどういったことに取り組まれているのでしょうか?
組織改編に先立って、まずメディアマーケティング本部として3つの目標を決めました。1つは“戦略パートナー” になること。単なるデータ出しだけにとどまらず、サービスが進むべき方向を示し、その実行と成果にコミットするためです。
2つめは “データ&テクノロジー” 。テクノロジーを駆使して、各プロジェクトが自走できる環境を整備すると同時に、私たちはもっと深いデータ分析を行っていき、バリューを感じてもらえるようなコンサルティングをしていきたいと思っています。
最後は “スケールメリット” 。これほど様々なメディアサービスを横断的に見れる組織や環境は、世の中にもそうそうないのではと思っています。メディアマーケティング本部から生まれていくナレッジやフレームワークを組織の強さとして昇華させていきたいと考えています。
2017年4月から改編した組織では、AbemaTVグループ、「Amebaアプリ」や「アメブロ」を担当するプラットフォーム戦略グループ、「タップル誕生」や「CROSS ME」を担当するマッチングサービス戦略グループ、立ち上げたばかりのサービスを担当するスタートアップ戦略グループの4つのチームに分けました。それぞれのグループが、コンサルタントと秋葉原ラボの分析スペシャリスト、いわゆるデータサイエンティストで構成されています。
ーー組織改編でどのような点が改善され始めたのでしょうか?
これまでは、コンサルタントとデータサイエンティストがそれぞれ別のチームに所属していたのですが、ワンチームとして各サービスに向き合えるようにしました。そうすることで、コンサルタントはデータサイエンティストの力を借りながらより深い分析にも入っていけるようになり、一方でデータサイエンティストはこれまで見えづらかったサービス状況についてコンサルタントを通じて細かく把握できるようになりました。
目に見える成果を挙げるにはもちろんもう少し時間はかかると思いますが、それぞれがより本質的にサービスに貢献できるようなチームビルドができるのではないかと初速の手応えを感じています。
――これまでの課題で解決の兆候が見えてきたというものがあれば教えてください
着任してすぐにtableauとesaの導入を進めました。
tableauの導入により、これまで一部属人化していたデータ分析を自動化できたので、メンバーはより深くサービスを考えられる時間を捻出できるようになると考えています。各サービスでKPIが異なるのでそれに伴って処理するデータ量も膨大になりますが、どんな初心者が見ても直観的で分かりやすく、リアルタイムに状況が把握できるような活用を目指しています。
esaでは各サービスで得た事例やナレッジを日々蓄積しています。事例だけにとどまらず、フレームワークや業務を効率化するための仕事術など、最近になって幅広く記事が上がってくるようになりました。チームで仕事を進める上で共有や蓄積が大事だというのは誰もが感じていることだと思いますが、一方で、強制的にやらされても良いものは貯まらずそのうち形骸化してしまう。あくまで自発的に取り組むことが大事なので、習慣化させることを今は目指していますが、その空気感は醸成できてきたのではないかと感じています。
また、ささいなことなのですが月一回の定例会で、1つサービスを決めてその戦略や良かった事例を共有してもらっています。これは、他サービスの理解や概況把握を促進させる狙いもありますが、各コンサルタントのプレゼンテーション能力やコミュニケーション能力向上につなげることも目的の一つ。特にコンサルタントは事業責任者やプロデューサーと対話することが多いため、アウトプットする能力は全体的に高めていきたいと考えています。
――逆に苦戦している部分はありますか?
サイバーエージェントではもう10年以上もメディア事業を開発、運営してきた歴史があり、且つこれだけサービスの種類が幅広いと組織サイズも大きく関わる人も多くなります。そのため、何かを意思決定して動かしたり改善していくことにおいては、やはりそれなりのパワーが必要になるなと感じています。
また、これは横断組織に往々にして起こる課題かもしれませんが、メンバー個人の事業貢献度を評価したり、そのためのスキルアップをどうサポートしていけばいいかはいつも頭を悩ませています。メディアマーケティング本部のメンバーは事業サイドからも認められないといけないし、コンサルタント、データサイエンティストとして個人の市場価値も高めていかないといけません。成長を遂げた企業に優秀なNo.2がいるのと同じで、頼られる存在でなければならない。そのためにやれることは無限大にある一方で、一歩間違えると便利屋にもなってしまう。
新生メディアマーケティング本部の目標として掲げている “戦略パートナー” としての要件を満たすのはなかなか難易度が高いなと思っています。
ーー最後に、今後のメディアマーケティング本部の展望を教えてください
まず短期的な目標としては、これまで培ってきた資産を活かしながら、メディアマーケティング本部が組織にとってなくてはならない存在になること。
多くのユーザーにサービスを使ってもらうことが最も大事ですが、そのためにユーザーがサービスやその魅力を理解し、利用し続けてもらうための打ち手や仕組みを私たちで考えていかなければなりません。そして、それら事例やナレッジをメディア事業全体の強みとして昇華させていく必要があります。
また、メンバー個人としても、プロジェクトリーダーとなって主体的に事業貢献していけるよう、目標達成に向けた戦略の立案、その実行と成果に対する強いコミットメントとリーダーシップを培っていきたいと考えています。
中長期的には、サイバーエージェントのメディアマーケティング本部が、常に最先端のデジタルマーケティングに取り組んでおり、マーケットの中でも最も多くのデータを取り扱って事例やナレッジを創出している状態を作り出していきたいです。
そのためには、常に新たなテクノロジーや手法をキャッチアップしたり生み出し続けて、これまで以上に効果的に事業を成長させられる組織にできればと思っています。
サービスが進むべき方向を示し、その実行と成果にコミットできる “戦略パートナー” への第一歩を歩みはじめたばかりのメディアマーケティング本部。
当ブログでは今後もメディアマーケティング本部の取り組みや奮闘を紹介していきます。