こんにちは、私がサイバーエージェントのアクセシビリティおじさんこと、ますぴー (@masuP9) です。普段はFRESH!でフロントエンドの実装を担当しています。

サイバーエージェントは、先月、5月18日(木)のGAAD(Global Accessibility Awareness Day)に開催されたアクセシビリティの祭典に協賛しており、弊社の佐藤が登壇してきました。合わせて他のセッションも聴講してきましたので、気になったセッションを中心に当日の様子をレポートしたいと思います。

アクセシビリティの祭典2017の会場となった神戸商工貿易センタービル24階から外を眺めた風景
高いビルから外を眺めた写真。天気が良く、神戸の山々が見えている。

アクセシビリティの祭典とは

アクセシビリティの祭典はNPO法人アイ・コラボレーション神戸さんが主催しているアクセシビリティ関連のお祭り(カンファレンス)です。今年で3回目の開催ですが、毎年参加される方やセッション、展示の数も増えておりアクセシビリティの盛り上がりを感じます。

自治体・企業・制作会社・障害者支援施設などに属する方々、障害を持つ当事者など様々な立場の人が、新しいアクセシビリティ技術に触れて体感できるお祭りです。今年はアクセシビリティの普及を世界全体で考える「Global Accessibility Awareness Day(GAAD)」に合わせて開催します。

ソフトやデバイスが多様化する現在・未来のアクセシビリティをご覧いただけるような展示や、ウェブアクセシビリティに関するセッションを通じて、アクセシビリティについて語り、考え、学ぶ日にしたいと思っております。

アクセシビリティの祭典ウェブサイトより引用

最新の支援技術の展示

このお祭りの特徴の一つが、セッションだけでなくセッション会場に隣接したところで、AR・VRやロボット、脳波や筋電スイッチによる最新の支援技術の展示が行われていることです。

CYBERDYNE株式会社様の世界初のサイボーグ型ロボットHALの展示ブース
ロボットHALの展示ブースの写真。下半身のみのロボットが立てかけられている

システムデザインラボ様のテンプラー筋電車椅子の展示ブース
テンプラー筋電車椅子の展示ブースの写真。電動車いすの座席に頭にセットするギアが置かれている

日本アクセシビリティ普及ネットワーク/ニューロスカイジャパン株式会社様の脳波で感情がわかるnecomimiの展示ブース
necomimiの展示ブースの写真。カチューシャに猫耳を模したものを付けたようなガジェットが置かれていて、付けた人の感情によって猫耳が動くという説明がされている。

兵庫県情報企画課様のVR展示
兵庫県情報企画課様のVR展示の写真。実際にVRヘッドセットを装着して試している人の様子が写っている

最新の支援技術を見ていると、機械が人間の能力を拡張することでさまざまな情報や人の感情にアクセスできるようになる未来が見えるようです。エンジニアとしては、新しい技術にワクワクすると同時に未知の支援技術(マシン)に対してフレンドリーなコンテンツやUIを提供していきたいと思います。

セッション

セッションはなんと9:30 〜18:25までで合計9つものセッションが行われました。ここで全てのセッションのご紹介をすることできませんが、登壇されている方が登壇資料を公開されています(最後のまとめにリンクを掲載しています)ので、セッション/アクセシビリティの祭典の一覧をご覧になって気になったものがあればご覧になってはいかがでしょうか。

以下に、弊社が担当したセッションと個人的に刺激を受けたセッションをご紹介します。

神戸市のWeb担当者&関係者が語る公式ホームページの"真実"

最初のセッションは、2016年2月にリニューアルした神戸市のウェブサイトに関して神戸市のウェブ担当者の方や開発設計に関係された方による裏側をお話されるセッションでした。

神戸市のウェブサイトトップページのスクリーンキャプチャ。大きな写真と画面中心に設置された検索窓が目立つ

神戸市:トップページ

昨年のアクセシビリティの祭典でもリニューアルのお話をされていましたが、今回はリニューアル後の運用や昨年話せなかったガイドラインなどのお話が中心で、10万ページを超えるページのメンテナンス、アクセシビリティ確保の困難さ、サイト内検索のチューニングなど興味深いお話がたくさん聞けました。また当事者ならではの本音や現在の率直な課題なども伺うことができ、神戸市さんの議論をオープンにされるマインドに感銘を受けました。

このセッションで個人的に感じたのは、ウェブサイトのアクセシビリティを考える上でゴールよりもプロセスが大事だという点です。ウェブサイトやサービスは日々更新され新しいコンテンツが産まれていきます。それらのアクセシビリティを担保し続けるには、ある特定の日時においてある基準を満たしているという状態よりも、常にアクセシビリティが高いコンテンツを生み続けられる体制が作られていることの方が大切です。

ガイドラインはゴールではなくツールという言葉は、現在ガイドラインを作成・展開している自分にとって意識し続けないといけない言葉だと感じました。

Liveユーザビリティテスト

二つ目のセッションは、株式会社インフォアクシアの植木さんと神戸ライトハウス澤田さんによるLiveユーザービリティテストです。

生まれつき目の見えない澤田さんに普段お使いのスクリーンリーダー(NetReader)を使ってユーザーテストをしてもらうというセッションでした。特定のサイトのテストをするのではなく、「今週末の東京の天気と最高気温を調べる」と言ったシナリオを実行してもらいました。

Liveユーザーテスト中の画面。NetReaderでYahoo検索を利用している画面が映っている
会場からユーザーテストの様子を写した写真

作る側にいると忘れがちなユーザーの目線を思い出させてくれると同時に、スクリーンリーダーユーザーの使用方法から学ぶべきことがたくさんありました。

特に感じたのは、UIのラベルや説明などのテキストの重要さでした。スクリーンリーダーに限らず、マシンは基本的にテキストでしか理解できません。よって視覚的な差別化のみでコンテンツのコンテキストを表している箇所に関しては、誤解されてしまっているところが幾つか見られました。(例:検索結果のすぐ上に例示される他の検索キーワード候補)

ラベリングを分かりやすくすることは、マシンのみならずヒューマンリーダビリティも向上することができるため、より分かりやすいラベルを考えていく大事さを認識しました。

私たちがアクセシビリティに取り組む理由

セッションの5つめは弊社を含む今回の祭典に協賛している企業さんたちが、なぜアクセシビリティに取り組むか、というテーマでそれぞれお話しました(されました)。

それぞれのセッション内容は前述のリンクから読んで頂ければ幸いです。印象的だったのは、弊社を含む事業会社は、会社や事業部などのミッションから動機づけされるトップダウン的な理由と、現場のサービスの品質というボトムアップの理由、その二つから取り組んでいるという点が共通していたことでした。どちらかが欠けてもプロセスや体制が維持できないため両輪が大事だと。また現場にいる人間としては特にトップダウンを忘れて組織に働きかけるアクションが疎かになりがちなのを反省しました。

アルファサードの野田さんは創業者で「アクセシビリティをやろうと思って会社を作った」、「技術的な好奇心をビジョンにできることが起業するメリット」とお話されていて、自分も技術的好奇心からアクセシビリティに取り組み始めましたこともあり、とても勇気づけられました。

まとめ、その他のセッション資料、懇親会

ここではご紹介できなかったセッションも大変興味深く、笑いの絶えない?セッションが盛り沢山で、最後にはライブも開催されるなど、まさにお祭りを楽しむことができました。懇親会でもアクセシビリティに取り組む皆さんの熱量を感じ取ることができ、とても勇気づけられる思いがしました。

我々サイバーエージェントとしても、コンテンツを広くあまねく届けるため、また我々のコンテンツだけでなくブログやFRESH!における生配信のような、ユーザーの方が発信するコンテンツの価値を高めるプラットフォームとなるべく、アクセシビリティの取り組みを続けて行きたいと改めて決意しました。


最後にこの記事では紹介できなかったセッションの資料や写真などをご紹介しますので、雰囲気だけでも感じて、次回は参加されてみてはいかがでしょうか。次回も来年のGAAD(5月17日)に神戸で開催されることが決まっているようです。

Togetterまとめ:アクセシビリティの祭典2017 #accfes

セッション8 トークバトル 60分一本勝負「アクセシビリティ vs IA/UX」で準備するミツエーリンクスの木達さん、ネットイヤーグループの坂本さん、レフェリーのビジネス・アーキテクツの伊原さん、リングアナ植木さんの様子。
セッション8の様子の写真。手前に手話通訳されている方が映っている

懇親会後のアクセシビリティライブで演奏するSawada Standard Designの澤田さん
自作のスライドを前にギターを引きながら歌う澤田さんの写真

来年は神戸でお会いしましょう!


記事中の写真の幾つかはアクセシビリティの祭典実行委員会さまより提供いただいたものを掲載しています。