こんにちは!Amebaブログにてディレクターをしている17入社新卒の奥田です。

先日、世の中の先輩ディレクターから学ぶために、UX生トークvol.6に参加してきました。今回のDevelopers Blogでは、新卒なりに噛み砕いたUX生トークでの学びをご紹介します。

UX生トークとは?

UXを生み出す現場の創り手達が、刺激を与え合う場を作ることを目的として開催しているサイバーエージェント主催の勉強会です。
 (詳しくはコチラ:https://cyberagent.connpass.com/event/60978/)


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(会場には100名以上の方が来場されました)

 


 ディレクターとは、ものづくりのスペシャリストである

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一人目の登壇者は樋口 一裕さん。

プロフィール
樋口 一裕(ヒグチ カズヒロ)
株式会社サイバーエージェント プロダクトマネージャー/ディレクター

 

樋口さんがお話してくださったのは、『Ameba Ownd』というサービスのアプリ版リリースのエピソードです。

今、樋口さんが所属するディレクターのチームで設定している「ディレクターの6つのスキル」があります。

 

▼ディレクターの6つのスキル
1.設計力
2.技術理解力
3.プロジェクトマネジメント
4.品質管理力
5.運用力
6.企画力

 

今回お話してくださったのは、その中でも企画力・設計力についてです。

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(以下樋口さんのお話より)

 

そもそもどうしてAmeba Owndはリニューアルすることになったのか?それは、USE評価で突きつけられた、「実用性が低い」というユーザーからの評価がきっかけでした。

・HPで実現したいことがあるが、PCを使う習慣がない、スマホでできるならやりたい

・HPがほしいが、何から手をつけたらいいかわからない

など、ユーザーのニーズに答えられていないことに気がついたのです。その評価を打破すべく、開発メンバー全員参加で分析を行い、至った結論は、

  • PCではカスタマイズ性が高い細かな機能も提供しているが、スマホにおいては優先度が高くない。
  • ユーザーが最も求めているのは、知識がない人でも簡単に作れるということ。

これらをアプリで実現させることに決まりました。

デザイン性をコアな価値として考えていたため、開発フェーズはデザイナー・エンジニア主体で進めてもらい、その傍でディレクターは成功条件の設計等を行いました。

そして来たるリリース。最初に定義した2軸に対して、どうなっていたら実現できていると言えるのか?しっかり設計しておく必要があります。プロダクトの成功定義を行い、そのために必要なことは必ずやる。しかしNice to haveといった、「やった方がいいこと」はやらないと決め、評価が必要な最小スコープで、最短リリースの実現を意識しました。

全体を通したディレクションに関しては「自分たちの決断を正解にしていくためにチームをリードしていくこと」が大切です。その分野に関するスペシャリストが、ディレクターです。

 

ディレクターの仕事が明確になったとともに、リニューアルまでの段取りを具体的に知ることができました。


UXは、いろんなチームの“繋げ役”

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2人目の登壇者は、保坂 浩紀さん。

プロフィール
保坂 浩紀(ホサカ ヒロキ)
Tigerspike株式会社 UXデザイナー

 

保坂さんがお話してくださったのは、LEOMOにてモーションセンサーと連動するウェアラブルデバイスのUXデザインを担当したときのエピソードです。

今回の4名の中で唯一、ハードウェアのUXデザイナーを担当していた保坂さん。感じていたこととしては、UXデザイナーがディレクターと役割が似ているということでした。UXに関わるあらゆる部分を、チームで協力して突き詰めながら、プロダクトの方向性を決めるという点です。

ハードウェアのUXデザイナーとして大切にしていた3つのことを教えていただきました。

(以下、保坂さんのお話より)

1.コミュニケーション

小さい組織こそ、情報共有の徹底が大事。情報共有がおろそかになると、モチベーションの低下が発生します。議事録の徹底や、ポジティブなフィードバックの共有など、コミュニケーションを大切にするよう心がけています。

2.プロセス

デジタルではないフィジカルなプロダクトをローンチするまでには、2つの壁があります。
Hardware Lockdown
ハードウェアは、1回作ってしまうとほぼ変えられない。(金型変更に莫大なコストがかかる)
Software Lockdown
ソフトウェアは、ローンチギリギリまで開発できない。(バグをゼロにして出荷する必要がある
そんなウォーターフォール的な状況の中でも、これら2つのマイルストーンを意識することで、アジャイル的に仮説・検証サイクルを回すことができます。ゴールまでにいかに仮説・検証を繰り返して間違ったものを作ってしまうリスクを減らせるか?が大切です。

3.ユーザーエクスペリエンス

ハードウェアを開発していたときは、使用中のエクスペリエンスももちろんですが、ユーザーのプロダクトを箱から取り出す「開封」体験も大切にしていました。BluetoothやWi-Fiといった目に見えない通信の設定も必要なため、“購入→開封→初期設定完了”までを細かく設計し、ユーザーテストも念入りに。開封体験がおろそかになってしまうとユーザーサポートがパンクしてしまいます。

 

普段webアプリやスマホアプリを担当している身としては、特に3番が印象的でした。表現は違えど、ユーザーのことを思って丁寧に仕上げて行くところは共通なんだなあと思いました。

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 UXディレクターとして成功する秘訣はずばり!信頼関係の構築

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3人目の登壇者は、馬場 沙織さん。

プロフィール
馬場 沙織(ババ サオリ)
株式会社リクルートテクノロジーズ UXディレクター

 

馬場さんがお話してくださったのは、社員がグループの様々な会社に散らばる、株式会社リクルートテクノロジーズだからこそ体験できたお話です。

(以下、馬場さんのお話より)

既存プロダクトのUX改善において、大切にしていたことは、

1.会社・部署・役割の違うメンバーと協働し、

2.与えられたリソースで解決可能で、解決時にインパクトのあるカスタマーやクライアントの課題を発見・解決する。

 

という2点です。

 

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こちらは「リボン図」です。左側がカスタマーで右側がクライアントになっていて、この双方のマッチングを高めることがUXディレクターのお仕事。今担当している採用管理系のアプリケーションにおいて、右側の視点から、クライアントの利用動機の、促進要因を見つけて強化したり、阻害要因を減らしたりすることでCVRを改善し、マッチング率の最大化をはかっています。

そのためにしていることとして、

  • 過去のKPIモニタリング資料、戦略資料、市場調査資料などを読み込み、事業コンディションを把握する。
  • 事業・プロダクト・プロセスの課題感などをヒアリングする。過去の施策の実行状況の確認も行う。
  • プロダクトの現状分析を行い、KPIを設定し、改善白地を見立てる。類似プロダクトのベンチマーキングもする。
  • これらをもとに施策立案をし、施策ごとの改善効果・調整難易度・開発工数で優先順位を決める。

があります。

 

このあと事業会社側の承認を得たら施策を推進していき、実行後は効果測定をABテストなどで行い、KPIモニタリングをし、期末に結果報告をします。

このように、課題単位でスケジュールを組んでいます。

何よりも、着任後の関係構築が一番大切!色々なことを駆使することで関係構築できます。

  • 接触頻度を高め、プライベートも含め自己開示する。
  • 成功が一番の潤滑油、前倒しで小さな成功を作る。

 

いかにしてチームといい関係を築いていくかが大切だと学びました。

 

 


 お客様やメンバーなど、相手のことを想像しながらコミュニケーションをとる

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最後、4人目の登壇者は、江辺 和彰さん。

プロフィール
江辺 和彰(エベ カズアキ)
株式会社コンセント ディレクター/プロジェクトマネージャー

 

江辺さんがお話してくださったのは、大規模プロジェクトを進めるためのディレクション術です。

(以下、江辺さんのお話より)

そもそも大規模プロジェクトの特徴とは・・・?

  1. 情報量が多くて複雑。
  2. プロジェクトに関係する人が多い。
  3. 案件の期間が長い。

ここで大切なのは、一人で全てをしようとするのではなく、成功のためにはチームメンバーとの協力が必要不可欠であるという点です。

では、大規模プロジェクトを成功させるための4つのポイントを紹介します。

 

1.プロジェクトの目的を把握する

ここで印象的だったのは、プロジェクトの目的は「サイト/サービスを作ること」ではないこと。これらは目的を達成するための手段の一つにすぎず、これらを駆使して何をしたいのか、が一番の目的です。クライアントにちゃんとヒアリングをしたら、サイト作らなくてもいいのでは?ってなることもあります。

2.プロジェクトの関係者を知る

プロジェクトに関わる人ごとに、役割はもちろん持っている知識や意見も違います。相手の立場を踏まえてコミュニケーションを取ることが大切です。

3.自発性のある環境作り

メンバーの自発的な動きによってプロジェクトの品質は決まります。指示されて作業するだけだと人を介すごとにクオリティが下がってしまうので、自発的に動いていってもらって、クオリティをあげる!
例)メンバーのキャラクターをいかせるよう、一次情報を受け取れるようにする。
プロジェクト内でのメリハリ。1つが終わったらちゃんと休みとる。

4.複雑な情報は可視化する

webは物理的には見えないことを扱うので、専門知識がない人にとっては可視化してもらった方が話が進みます。カスタマージャーニーマップ、ユーザーフロー、モジュール、コンポーネントなど、手書きでもいいので、お客さんに見せるようにすると良いです。

 

いつか大規模なプロジェクトを任せてもらえるときが来たら、絶対参考にしたいです!

 

 


パネルディスカッション

ここからは、パネルディスカッションにて印象に残っている受け答えを紹介いたします。

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Q.ディレクターはビジネス職?技術職?どちらと捉えていますか?

江辺さん)
ビジネス職も技術職もピンとこないですね。最終的には満足していただくことが重要なので、接客などのサービス業に近いイメージをしています。ビジネスも技術もわかってないとだめですよね。

馬場さん)
大学でデザインの勉強をしたあと、UIデザイナーをしていたということもあり、専門領域としての強みは捨てたくないです。バリバリのビジネスマンと比較をしたとき、「何に時間を費やしてきたか」が違いますよね。カスタマーやクライアントの課題やプロダクトの課題を可視化することで、説得しやすいことなどがデザインを知っている身の強みです。ただ、もちろんビジネスのこともわかってないと太刀打ちができないですね。

樋口さん)
明確に言いますと、ディレクターは専門職と考えています。専門性のある知識がないと進めていけないですし、ディレクターは一種のスペシャリストである!というのを布教しています。

保坂さん)
ビジネスと技術を繋ぐひとがディレクター・PMなのではないでしょうか。どっちの視点も必要ですよね!そもそも、大学受験のときに選択する、文系・理系っていう分け方があまり好きではないです。その真ん中があったらいいのにな〜って。それと同じで、ビジネス職・技術職の真ん中の職種があってもいいと思います。

Q.関係者とのコミュニケーションが大切という話が多くありましたが、新しく入ってきたメンバーとうまくコミュニケーションをとる方法を教えてください。

江辺さん)
先輩から教わってすごい参考になったのが、その人の立場になりきれっていう話でした。例えば、この人には子供がいて最近買ったばかりのマイホームもあって、仕事では普段こんなミッションを持っている人がこんな話をしているんだな〜と思って想像しながら聞くと、その背景がわかり、コミュニケーションが取りやすくなりますね。そしてそれに合わせた返答をできるようになりました。そういう自分なりのアドバイスも伝えていきたいです。

馬場さん)
単純にビジネスマナー的になってないところは普通に伝えます。その他は、OJTをしながら修正していきます。さらに深いコミュニケーションだと相手のキャラを理解することが重要です。わたしもここまで、何かとコミュニケーションでは事故りながら歩んできましたが、今となれば「まあ馬場さんだから」とか思ってもらえています。(笑)つまり単にコミュニケーションの内容の問題ではなく、全体的に相手とどう向き合うかという姿勢。ユーザーリサーチの技術を応用したりもします。この人はこういう人でこういうニーズだ、みたいなのを考えてコミュニケーションのPDCAまわしてみたりしてはどうでしょうか。

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Q.ディレクターという立場上、メンバーに無理のあることを言わなきゃいけないときもありますよね。信頼関係が崩れて向こうからアクションしてきてくれなくなったとき、どうするのがよいでしょうか?

樋口さん)
あまりそういった経験をしてきていないですが、1回プロジェクトがうまくまわらなくなったときは、半日かけてKPTを行いお互いをフルボッコにしました(笑)メンバーに思いっきり発散してもらって、僕が軌道修正していました。

保坂さん)
コミュニケーションで失敗したときは、まずは自分の手を動かして見せる。伝わらないのなら伝わるまでやりましょう!

Q.ディレクションを始めたばかりの頃の一番重大な失敗と、ネクストアクションを教えてください。

江辺さん)
一番辛かった失敗は、いつでも自分が原因で起こしてしまった失敗だと思います。そのときは、一人で悩みがちですが、無理に一人で解決しようとせず、チームや会社を巻き込みながら解決するよう心がけています。プロジェクト全体にとってはそっちの方がいいときもありますよ。自分の失敗は、自分の力でどうにか解決したい気持ちもありますが、お客様のことを考えた時、どうするのがベストか考えることが大事だと考えています。

馬場さん)
デザイナーからディレクターに変わる時が一番失敗を経験しました。自分の理想の完成像を作りすぎてて、チームに強要してしまっていたんです。ビジネスゴールを明確に持ちつつ、途中経過はどうなってもいいという心構えで、完璧主義になりすぎないことが重要。ビジネスゴールはもちろん達成するし、自分の精神的なすり減りも軽減されました。

保坂さん)
デザイナーとしての自分の理想像に合わせてプロダクトを進めようとすると、理想が大きすぎて、スタートアップに向いていないことに気がつきました。小さく回していくべきなのに、最初から大きすぎることにを周りから指摘してもらい、当初予定していた機能を大きく減らしました。日程遅延しちゃったりと、そこに気づくまでが大変でした。ばさっと切ることが大切だと学びました。

 


最後に

今回初めてイベントに参加してみて、ディレクターという仕事に対する熱意を登壇者の皆様はもちろん、会場にいらっしゃった参加者のみなさまからも感じました。全員が大切にしていらっしゃった、「チームメンバーとのコミュニケーション」。マスターするのは相当な難易度であると思われますが、わたしも一人前のディレクターになるべくそこから始めようと決意をしたのでした。

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素敵なお話をありがとうございました!