こんにちは、デザイナーの戸塚です。
先日若手デザイナーボード「わかめ」のメンバーで企画したGoodpatch x CyberAgentの社員向け勉強会「苦難を乗り越えるチームとプロセス」を開催しました。当日は両社から80名近い参加者が集まり、想定以上の大盛況の中終えることができました。
クローズドな社員限定の勉強会でしたが、今回は皆様にも内容をかいつまんでお届けします!
まずは、今回の勉強会を企画し、当日司会もつとめてくださったGoodpatch國光さんと弊社の山幡から、両社の会社説明やデザイナー組織についてプレゼンを。
その後は“苦難を乗り越えるチームとプロセス”をテーマに、各社2枠ずつ登壇していただきました。
Goodpatch | UXデザイナー/プロジェクトマネージャー 野田克樹さん
クライアント・ユーザーを巻き込んだ新規事業開発プロセス
まずは、靴売り場向け接客支援サービスの新規立ち上げに関わられた、野田さんのお話からスタート。
3Dスキャナでお客さまの足のサイズを測るという画期的なサービスで、Webのみならず実店舗の体験を含めたデザインを担当されたということでした。
野田さんは、クライアントとGoodpatchが一体になれるよう、1週間のうち10時間はクライアントと過ごす、ユーザーアンケートを一緒に行うなど様々な工夫をされているそう。
またリアル店舗の体験をプロトタイピングするという課題は、野田さんも経験のない領域だったそうです。新しいユーザーテストの手法を使い、小説形式でユーザーがどれくらい共感しているかのアンケートを実施し、何度も製品のアップデートを繰り返したとのこと。
そして、立ち上げ後もクライアントが自ら同様の改善サイクルを実施できるよう、ユーザーテストのフォーマットまで納品したというお話は、野田さんが本気でクライアントと良いものを作ろうとしている熱意が伝わってきました。
弊社のメディア事業はインハウスの仕事が大半であり、クライアントワークならではの大変さ、面白さは私も非常に勉強になりました!
CyberAgent | 「REQU」プロジェクトマネージャー 樋口一裕さん
人が欲しがるプロダクトのつくり方
二人目は、6月にリリースされたAmebaの新規事業「REQU」の樋口さんからお話して頂きました。私も「REQU」でデザイナーをしており、リーダーの話を改めて聞くことをとても楽しみにしておりました。
スキルシェアリングサービスである「REQU」は、もともとAmebaのブロガーがモノを売れるようにするためのAmebaブログの一機能としてリリースする予定でした。しかし開発を進めていく中で「このアイデアを必要としている人は本当にいるのか?」と疑問を抱いたそう。
デザイン思考のアプローチに則り、「人々の有用性」「技術的な実現可能性」「ビジネスの持続可能性」の三つが揃わないとイノベーションが生まれないと考えていた樋口さんは、デプスインタビュー行って「REQU」の価値マップを作った結果、ただモノを売るのではなく「自分が持っているスキルで誰かの役に立つ価値」がユーザーのニーズにあることを導き出しました。
ここで大きな方針転換を決断し、インフルエンサーのショップからスキルシェアリングサービスに変更したそうです。「必要があれば大きくピボットする」とおっしゃっていたところが、普段の開発での樋口さんの姿勢を改めて感じました。
また機能ベースの開発ではなく、あえて体験ベースで進めるなどユニークな開発手法を取り入れており、チームがいかに主体的にプロダクトに向き合えるかを考えてマネジメントされているとのことでした。
もともとはデザイナーだった樋口さん。リサーチやUXの領域をみるプロジェクトマネージャーは、デザイナーのキャリアパスの一つだとおっしゃっていたことが、私個人としても新しい発見でした。
Goodpatch | UXデザイナー/プロジェクトマネージャー 神一樹さん
苦難はみんなで解決!チーム基礎固めのための事例紹介
三人目は、タスク管理ツールのリニューアルに携われた神さんのお話です。新規立ち上げについてお話くださった前半のお二人とは異なる、リニューアルならではの面白さや課題をテーマに語っていただきました。
一つ目は、一番最初に行った「エグゼクティブインタビュー」という手法について。リニューアルを行うに当たって、デザインや機能要件以前に、クライアントが「なにを大切にしているか?」を知ることが重要だとお話されていた神さん。クライアントのトップと直接1:1で話す機会を設け、サービスの意思決定をする人の本音を伺ったそうです。クライアントに寄り添う姿勢を教えていただきました。
次に取り組んだのが、「サービス自身の強みを言語化する」ということ。Goodpatchさんがクライアントと一緒にユーザーインタビューを行い、サービスの価値マップを作っていったそうです。
その結果をプロダクトのKPIに繋げ、どこを改善すればよりユーザーに使われるかという仮説に導いていったそうです。
最後に「プロジェクトの進行スピードは保ちつつ、クライアントにデザインの考え方をインストールする」ということ。クライアントワークで陥りがちな罠として、時間をかけて報告資料を作ったものの、大事なことがクライアントに伝わっていなかったという事があるとのこと。そういった両社のすれ違いを無くすため、全プロセスを一緒にワークするようにしたそうです。またそうすることで、デザインの考え方自体をクライアントにもインストールしてもらい、プロジェクト終了後も自走できる状態を目指したとのこと。
私の中でクライアントワークというと、少なからず分業制のイメージがありました。ですが今回のお話を聞いて、クライアントと一つのチームとなって問題を解決していく姿は、Goodpatchさんのデザインに対する強い思いを感じました。
CyberAgent | 「AbemaTV」デザイナー松本俊介さん・ディレクター加納謙吾さん
AbemaTVのドリブン丼ぶり
最後はAbemaTVの松本さん、加納さんのお二人によるAbemaTVの開発秘話をお話いただきました。終始楽しい掛け合いや、聞き手を楽しませてくれる仕込みがありとても賑やかなセッションとなりました。
AbemaTVは大人数での開発をしており、様々なドリブンでプロダクトの改善が行われているそうです。
例えばA/BテストドリブンでUIの良し悪しを比べたい、という話が上がればA/Bテスト用のツールを作り、何パターンものUIを試すそうです。しかしA/Bテストで差が出なかった時、初めに追っていた指標以外でも検証しようとし、多重比較になってしまい失敗しかけた経験をお話しされました。指標は一つに絞るべきだとチームで気づかれたそうです。
他にもデザイナードリブンでのUI改善が着実に行われているとおっしゃっていました。デザイナー発信の改善は優先度が落ちがちという話は、私もかなり共感してしまいました。しかし松本さんはスプリント内で対応するUI改善タスクの数を決めるなど、開発全体の動きまで見ているとのこと。「賛否はあるかもしれないが、変化を恐れないことが大事。必要とあればガシガシ変えよう」という言葉に、大規模な開発チームでも、スピード感を持ってよりよく進化していく秘訣がわかった気がします。
また、あらゆる案件が各方面から来ても目的は明確に、というプロダクトの芯をぶらさない姿勢がAbemaTVが大きくなり続ける理由なのかもしれません。
最後に
Goodpatchさんとの合同勉強会は初めてでしたが、クローズドだからこそ話せる話がたくさんありました。クライアントとワンチームでデザインを作り上げていくGoodpatchさんと、自社サービスをデザイン、開発していくCyberAgentのデザイナーの仕事は一見異なるように見えますが、デザインへの熱い思いは同じなのではないかと感じました。
その後の懇親会もとても盛り上がり、私自身もたくさん質問やお話をさせて頂きました。社員同士が新しい気づきや繋がりを得るきっかけになったのではないかと思います。
Goodpatch Blogで公開されたレポートはこちら! https://goodpatch.com/blog/team-process-event/