2019年2月22日(金)セルリアンタワーにて、サイバーエージェントの2,000名を超える技術者に向けた全社技術カンファレンス『CA BASE CAMP』を開催しました。
本ブログでは、『CA BASE CAMP』にて行われたセッションの一部を、登壇スライドと共に順次公開していきます。

▼開催レポート
全54セッション。”技術のサイバーエージェントを加速させる” 全社技術カンファレンス『CA BASE CAMP 2019』レポート
https://developers.cyberagent.co.jp/blog/archives/19910/

※当セッションは三者対談のため、スライド掲載はなく書き起こし形式の記事です。

 

【セッション紹介】

広告クリエイティブの変化や事例を交えながら、CG×広告の今後の可能性についてお話をしたいと思います。

 

【スピーカー】

二宮 功太(Kota Ninomiya)
株式会社サイバーエージェント
インターネット広告事業本部  ブランドクリエイティブ部門

桐島 ローランド(Rowland Kirishima)
株式会社AVATTA  代表取締役

芦田 直毅(Naoki Ashida)
株式会社CGチェンジャー  代表取締役

 

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二宮)僕はサイバーエージェントに入社して16年目になります。ずっとインターネット広告事業本部でプランナーとしてやってきました。

 

芦田)私は今、CGチェンジャーという会社をやっておりまして、その前は二宮さんと同じく、インターネット広告事業本部のクリエイティブ部門にいましたので、元々はCMの制作やサイトやアプリの制作をしていました。そして2017年の6月にCGに特化して広告のクリエイティブを作るという会社として、株式会社CGチェンジャーを設立しています。

 

桐島)AVATTAの代表の桐島ローランドと申します。AVATTAは立ち上げて5年くらいの、3Dスキャニングの会社なんですが、主に物、人、建物、街までを今は簡単に3Dスキャニングができるようになりました。AVATTAはフォトグラメトリという技術を得意としています。、今こそこういうスタジオが増えてきてはいますけど、AVATTAは第一人者であるかなと。今までCGって難しいとか高いとか時間がかかるというイメージがあったと思うんですが、確かに正直大変ではあるんですけど、スキャニングのおかげで工程がとても減って、広告とかの事例にマッチするような状態になりました。そして去年2018年4月1日にサイバーエージェントとリマージャーして今に至ります。

 

二宮)ありがとうございます。ではCGチェンジャーとAVATTAの説明をお二人からお願いします。まずはCGチェンジャーからどうぞ。

 

顧客のCGアセットを作り、バリエーションを増やす

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芦田)CGチェンジャーは2017年6月に設立しまして、最初は映像制作をしていたので、CGのプロダクションさんも知り合いがいてお話をさせていただいていたんですが、やはり広告ですと、制作の期間だったり、作ろうとする映像がちょっとフォトリアリスティックな方面に寄りやすくなってきます。

それでいろんなプロダクションさんとお話させていただいたんですけど、どうやら既存のCGプロダクションだと、組織の作り方だったり、ワークフローだったり、今本業でされている案件とハマりが悪くて、社内のCGクリエイターを増やさないと僕たちがやろうとしているインターネットの広告でCGを活用するということができなさそうだということで、設立3、4ヶ月後くらいにCGクリエイターをどんどん採用する方針にシフトしました。そして今、CGチェンジャーとCGのR&Dチームも含めて全体で20名ほどのCGクリエイターがいます。

 

なので、クライアントワークでコンテンツ作っている方もいますし、R&Dとしてやっている方もいます。

今、早稲田大学の森島先生という方が2Dの静止画から3Dの人間のモデルを生成するだったり、2Dの写真でモデルを生成してかつ、写真なので前側しかないんですが、その後ろ側をディープラーニングとかで作るという研究をされています。3Dのモデルを作るだけではなくて、2Dの静止画から3Dのモデルを作るという幅広い切り口で、R&Dとか共同研究をさせていただいています。

 

普段の本業と言いますか、インターネット広告で活用している点で言いますと、広告って結構雑多と言いますか(笑)、商材やブランドさんによって多種多様なルックを作りたい!となりますので。我々はいろんなビジュアルを作っています。

ただ、日本のCMでいうと、タレントさんやモデルさんが出演することが多いので、フォトリアルなCGの人が登場するというバリエーションだったり、キャラクタリスティックなキャラクターがアニメーションしたりしてコンテンツにする。あとは広告だとメーカーさんも多いので、メーカーさんの商品も作らせていただいてます。あとは、映像構成上、バックグラウンドが発生するので、そのシーンを作らせていただいてコンテンツを作っていくということが大きな部分です。

 

二宮)CGプロダクトって多くなってきましたよね。

 

芦田)そうですね、これは多くなってきました。

 

二宮)僕も飲料業界でも関わらせているんですが、他はどんなところがあるんですか?

 

芦田)コスメの会社さんや製薬会社、CGをもともと使っている会社だと親和性も高くハードルも高くないので一緒にやらせていただいています。

リアルなCGだと社内で勝手に作ったり、先ほどお話したキャラクターのもので言うと、某小売系企業さまで機能性衣料の商品を広告するに当たって、商品が発売されてだいぶ経っているので、今のタイミングで「機能性衣料だよ」と説明しても大きな売上増に繋がり行くいので。「ここ最近、暑くなってきましたよね、そんな時にこの商品を着ると快適です!」とかを100バリエーション作るとなると、撮影がとても大変になってしまうので、キャラクターを作ってそこでバリエーションを作るということをやらせていただいています。

 

二宮)これは誰でもない誰かをキャラクタライズして、モーメントを現すような感じなんですね。

 

芦田)そうですね。あとは、メーカーさんだと商品を綺麗に見せたいという要望があるので、某電化製品メーカーさんの案件だと、カラーと素材が特徴的でスタイリッシュなエアコンなので、エアコンのカラーを色々変えて作らせていただいて、あとはいろんなお部屋にハマりますよっていうのを作らせていただいています。

 

エアコンの色によってハマる部屋っていうのは全然違うので、例えば、スカイブルーのエアコンならこんなお部屋が合うよね、とか今まででは感でしかできなかったところを今はCG化して配信させていただいています。

 

二宮)ありがとうございます。では次はAVATTAの紹介を桐島さんからお願いします。

 

一度スキャンしたアバターで映像・スチル、そしてゲーム展開へ

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桐島)AVATTAは今10人くらいでやっているんですが、基本的にはスキャニングとCG制作をやっています。今まではどちらかというとスキャニングの下請けだけしていたんですが、サイバーエージェントと一緒になってからCGのクリエイターもたくさん入って、今は完全たるCGプロダクションとなりました。

スキャンが強みであり、スキャンができると工程が減るんですよね。例えばフルCGでキャラクターをゼロからハイクオリティのものを作るとなると、1年くらいかかっていたんですが、今だと2週間で作れますし、実際に最近そのような事例もありました。

 

AVATTAのスキャナーには、体用のスキャナーと顔用にスキャナーがありまして、体用のスキャナーは140台の一眼レフのカメラで360度いろんな角度から同時撮影することで、その人の3Dデータを作ることができます。

 

顔用のスキャナーは60台のカメラで撮影します。これは毛穴までスキャンすることができるので、かなりハイクオリティの3Dスキャンです。じゃあこれをどんなことに使うのかってことが、一番の課題なんですが、弊社は特にタレントさんのスキャニングが多いので、例えば50とか100バリエーションが欲しいという話になった時に、タレントさんを長時間拘束することはできないですよね。今だとスチルとムービーを合わせて1日でやるということが多くて、僕も元々カメラマンで映像も撮っていて、昔はタレントさんを1週間拘束していたりしてたんですけど、もうそれは過去の話で、今は3時間とか短い時間でやって欲しいという要望も多いです。

 

芸能人を起用した某通信会社さんの事例では、CGでその芸能人を作って、声と顔の動きは本物のプロのアナウンサーを使って、その動きを彼女に反映しました。最近はこういう事例が多いです。あとは、実際に存在しない人を作ったり、有名人のそっくりさんをスキャンしてもっとリアルにして使う、などをしています。

CGの他のメリットとしては、マルチユースができる。例えば、一度スキャンしたアバターを作ってしまえば、映像にもスチルにも使えるし、ゲーム展開とかもできます。

 

また、担当した競輪の事例でいうと、背景も人物もCGで作っているので、フィギアも作れてしまうし衣装とかもCGで全部作れちゃうんですよね。実写とCGとどっちが安上がりかっていうとまだ実写の方が安上がりなのかもしれないですけど、こういった色んな展開ができるっていう部分は、時間の拘束ができないタレントがいると、撮影や衣装合わせ、許可を取ったりする時間が省けますし、この技術は活かせるのではないかなと思います。

 

この競輪スタジアム自体もドローンを使ってスキャンして、VRを使って実際にこの競輪スタジアムのドームの中を競輪選手と走る、というようなゲームコンテンツまで作りました。これがある意味、理想のCGの事例ではないかなと感じます。

 

最近CGを早くかつ安く作れるようになって、僕たちも世界初の広告でアバターを使おう!っていう目論見はあったんですけど、もちろんCGチェンジャーさんやCygamesさん、他のゲーム会社や世界中のCG制作会社も同じことを考えていたとは思います。

最近話題のアバターでいうと、初音ミクは皆さんご存知の方も多いと思いますが、他で言うとSayaというのは、日本で初めて作られたアバターです。あとはShuduと言うのは海外でInstagramで話題になったアバターで、元々は存在するモデルというテイで、Instagramのアカウントを始めたんですけど、実際はこれはCGで、今はグローバルのアドキャンペーンに出演したりしています。

 

なので時代はこっちの方に来ていると思います。SayaにしてもShuduにしてもリアルタイムで動かせるんですよ。でもこれってすごく重いCGなので、実際にテレビで生放送とかいうのはまだ無理なんですけど、5年後、10年後には今の流れだとそれが可能な時代が来ると思います。リアルタイムで動かせるVtuberでいうとキズナアイが一番キャラクターでは有名だと思います。こんな風に徐々にアバターを使っていくビジネスが普及しています。

 

二宮)ありがとうございます。このままいくと1時間くらい話しちゃいそうですね(笑)

こんな風に、強力な子会社がサイバーエージェントグループにできてきて、それをいろんなところで活用していくという方向性に移っていくと思います。

 

広告クリエイティブは今変化の真っ只中で、特に2020年に向けて大変革ということで、いよいよインターネットが日本でもNo.1のメディアになると予想されています。もうUSやUKではテレビを抜いてNo.1のメディアになっているんですけど、いよいよ日本でも2020年にはその時代が来る。

テレビに載せるクリエイティブとインターネットに載せるクリエイティブは違うものであると思っていて、電通さんや博報堂さんは基本的にはテレビCMということで、テレビに載せるクリエイティブを生業にしている会社さんで、そこからなかなか脱却できないっていう市場感がある中で、我々サイバーエージェントとしてはデジタルに載せるクリエイティブのど真ん中にいる会社だと思っているので、その辺りの可能性を突き詰めていく数年になるのではと思っています。なのでCGに関してもどんどん取り入れていっているのが現状です。

技術的な側面では、皆さんもご存知の通り5Gというものが登場しているので、追い風も多いのかなと思います。

 

TO ALL から TO YOU へ

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二宮)というところで、テクノロジーとコンテンツの時代というのが、広告の領域でもどんどん取り入れていく時代になっていくと思うんですけど、それがCGだったりAIだったりがあるんだと思います。

そこの1つのキーワードとして、今までのマス広告って基本的には企業が発信するクリエイティブをより多くの人に見せるというのが役割だったんですが、インターネット上では、ターゲティングの技術とかInstagram、Twitter、Facebookのような色々なプラットフォームで彼らが独自のルールを持ってしまっているので、いいコンテンツや広告クリエイティブを入稿し続けないとなかなかターゲットに届けてくれないという独自のルールがあったりします。

 

なので今までのマスメディアとは完全に変わってきてしまっていて、そういうことをきっちり理解した上で、プランニングとかクリエイティブをしっかり作らないといけないというところが大きな違いであると思います。そこで、パーソナライズとリアルタイムが非常に重要になってくると思います。

TO ALLだったものがTO YOUになって、ここにいる全員に当たる広告って違うはずなんですね。それがまだまだプランニングとかクリエイティブの領域でなかなか実現できていないのが市場感で、我々サイバーエージェントがそこに向かって、どうにかしてパーソナライズでリアルタイムなクリエイティブを作れるかというところにチャレンジをしているフェーズかと思います。

こんな感じで、子会社を作ったりとか、パートナーさんをグループ会社として迎えたりとか色々な取り組みをしているというところが現状であります。

 

このような広告の流れの中で、CGがどういう状況になっていて、これからCG×広告で起こりそうなことを今から話していきたいんですが、ここから事例を交えながらお伝えできたらと思います。

まず先ほど桐島さんがお話されていたShuduのInstagramの話ですが、こういう展開って今後増えていくと思いますが、広告でいうとどのような活用方法が考えられそうでしょうか?

 

桐島)マーケットがアバターだらけでサチュレーションされたら、またそれはそれで1つの問題になってくるかと思うんですが、まだ現時点ではソーシャル力もあるのでここ数年間はやる価値は十分あるのではないかなと思っています。

何よりもCGなので、後からどうにでもできるし、本人を撮影しなくても待たなくても、どんなポーズでもどんな服でも着させることができるので。ただやはりCGなので作るにはそれなりの時間と工数もかかってきてしまう。じゃあどっちがいいのかという話ですよね。

コストとかが見合うのであれば、フルCGでShuduのようなものを作っちゃうってこともできますよね。Shuduって実際いないんですけどね(笑)

 

二宮)面白いですよね。

 

桐島)ただ個人的にShuduを見てて思うのは、正直クオリティがまだ写実レベルじゃないんですよ。なのでこのクオリティで先にVRとかやられてしまったことが残念だなと思ったりします。

その辺りは、芦田さんはどう思います?

 

芦田)やはりCGの会社なので、なるべくフォトリアルのレベルを高めていきたいとは思っているんですけど、ちらほらこれよりクオリティ低いなっていうのが世の中に出てきてしまっていると思います。一般の人は気づいていないなぁと(笑)

 

二宮)そうなんですよね、確かに我々はある意味シビアですもんね(笑)

 

芦田)広告の観点で言うと、直近のメインデバイスはスマホなので、広告主さんとユーザーさんがそれで許容できるのであれば。それはそれで成立するのかなと。

 

二宮)もしかしたらスピードというのも重要なのかもしれないですよね。技術的に発達すればするとクオリティも追いついてくるということもあると思うんですけど、デジタルメディアで魅せるクリエイティブっていうとクオリティとスピードのバランスって重要なのかなと思います。

 

芦田)CGキャラクターを実際に海外へ行かせることもできちゃいますよね。桐島さんはよく実際にお仕事などで海外に行かれていると思いますけど(笑)。忙しいタレントさんをこのやり方で海外ロケ風クリエイティブとして成立させてしまえば、物理的・スケジュール的にロケに行けなくても。クリエイティブとして実現できますし。

例えば、Shuduのように。顔だけCGでフォトリアルに作って制作カロリーを落とすことで、広告企画上、はめることができるといいかなと思いました。

 

二宮)桐島さんに技術的なことをお聞きしたいんですが、CGの髪の毛って作るの難しそうだなと思うんですが・・

 

桐島)まさに一番のハードルって髪の毛なんですよ。どの大手のCG制作会社にしても、髪の毛をCG化するのって難しいんですよね。だから皆さんだいたいCGのキャラクターってすごい髪の毛硬めのショートボブとかで、ロングヘアーでカーリーとか絶対誰もやらないんですよ、バレちゃうんで。

なので、Shuduもいくつかの写真を見ていても顔の角度とかは変わっていなかったりするんですよね。そこら辺をどう誤魔化していくのかっていうのも僕たちの仕事だったりもするので。

 

二宮)広告のプランナーという視点から見ると結構活用しがいがありますよね。芦田さんが言っていたように、どこにでも行かせられちゃうところとか、表情みたいなところとか、普通にモデルさんアサインして撮影するってなるとものすごく工数がかかってしまうんでしょうけど、CGもまだある程度の工数はかかってはいると思うんですけど、これからどんどん進んでいくといろんな可能性が生まれてくるのではと思いますね。

 

桐島)何よりもスキャンダルを起こさないですからね(笑)

 

二宮)そうですね(笑)でも確かにそこが一番大きいかもしれないですね。結婚もしないし、文句も言わないし。

 

桐島)うん、文句も言わない(笑)

 

芦田)怪我と病気もしないですもんね。

 

二宮)確かに、そこは一番のメリットかも(笑)

 

桐島)僕たちAVATTAは映画とかゲームで採用されれば一番いいなと思っていたんですけど、日本の場合、予算的なことと時間的なことのファクターがすごく多くて、なかなか映画でCGを使うことがないんですがCMっていうのは唯一そこと予算がマッチするところだと思うので、皆さんもぜひ興味があれば声をかけてください。

 

広告×CGはまだまだ可能性だらけ

 

二宮)そろそろ終わりに近づいているので締めに入らないといけなくなっちゃったんですが、やはり広告×CGはまだまだ可能性だらけですよね。ハリウッドレベルでかなりのクオリティまでいけるってこともLOGANで分かったんですが、何年後くらいにこのLOGANみたいなクオリティのものが広告に使われるようになるんでしょう?なんか考えるだけでワクワクしますよね。

 

芦田)一応CGのR&Dチームの方で進めているプロジェクトが実現すれば、ある一定の条件下で、広告の制作期間にはまるようなスピード感で実現することは可能だと思います。例えば先ほどのShuduの例であったように、顔だけ入れ替えるっていうことに特化して制作期間を縮められるような、ツールをインナーで作ってしまおうっていう話をしているんですけど、それが実現すれば。

広告って制作期間2,3ヶ月でリリースしないといけない事が多いと思うんですけど、ハマるのかなと思います。ただいま、絶賛半年後とか1年後とかにリリースできるように進めてもらっているのでそれができれば実現可能かと!

 

二宮)色々な事例の含めて語ってきたんですけど、CG×広告は未来しかない!ってことなので、我々一同は突き進んでいきたいと思っています。メディアやゲームサイドの方も桐島さんや芦田さんと絡むべきところはあると思うので、気軽に絡んでいただけたらと思います。

 

一同)ありがとうございました。