サイバーエージェントのクリエイターが一人立ちするまでの成長記録を、新卒当時の師匠と共に振り返る【クリエイター師弟対談】。
今回は2012年に中途で入社した佐藤と、同時期に新卒で入社した山幡の二人をご紹介します。
【過去の連載記事はこちら】
▶︎社会人3年目のある日、師匠に言われた「デザインしてくれ」の意味。ークリエイター師弟対談vol.1
▶︎師匠からは見て盗め。教わらずとも成長していく弟子 ー クリエイター師弟対談vol.2
▶︎独り立ち後も、共に戦う“同志”として続く師匠との関係 ー クリエイター師弟対談vol.3
二人が入社した当時は、サイバーエージェントが全社としてスマホ事業へシフトしていく風潮のなか、多くの新規サービスを立ち上げていた激動の時代でした。
今ではクリエイティブ領域の執行役員を務める佐藤と、多くの後輩をもち、シニアクリエイターとして新規事業をリードする山幡。
入社時期は同じで、”師弟関係”として始まった二人はどのように信頼関係を築き、弟子は師匠から何を学んだのでしょうか。
コミュニケーションには自信があった。真逆なタイプの師匠との出会い
ーお互いの第一印象について教えてください。
シュガー:「本当にデザイナーなのか?」というのが第一印象でした(笑)。
最初に会ったのは新卒研修の課題発表の時。「トレーニーはどんな子かな」と思って発表を見に行ったら、実装にばかり手をとられていて、肝心のデザインが全くできていない。正直「大丈夫かな」と不安でした。
山幡:「何日でデザイン作ったの?」と質問をされたので、「1日で作りました!!!」と堂々と答えたんです。「ふーん」とたった一言。半日くらい経ってやっと、「違う、あれは褒めてるんじゃない」と気づいて、とても焦ったことを覚えています(笑)。
その質問が印象に残っていたので、最初挨拶にいったときにはめちゃくちゃ緊張しましたね。口数も少なかったので。
シュガー:覚えてるよ。一言二言としか交わさなかったよね(笑)。
ー最初に一緒にやった仕事はどんな仕事だったんですか?
山幡:当時「Simplog」というブログサービスを一緒に担当していました。配属早々、「明日までに某事務所のタレントのみなさんが全員ブログを開設するかもしれないから、ブログのカバー画像を全員分制作してほしい」という依頼が来ました。定時ギリギリの依頼だったので、「これはシュガーさんが断ってくれるだろうな。」と思っていたんです。そうしたら、すでに顔色ひとつ変えずに淡々と作業を始めていたんですよ。「文句言わないんだ…!」と思ってびっくりしました。
シュガー:クリエイターって追い込まれないと成長しないんですよね。こういう場面に遭遇したときに、トレーナーである僕が動じたら、トレーニーはもっと動揺してしまう。もちろん、言われたことをそのままやれということではないですよ。ただ、この時はサービスのことを考えればこの依頼はチャンスでしかなかった。一旦ぐっと飲み込んだら、ものごとって進む気がしてるんです。
山幡:この「余裕」。一番最初にかなり効きました。
もし当時のトレーナーが愚痴っぽくなってたら、僕も「ですよねー」と同調していたと思う。でもシュガーさんは違って「まずはちゃんとできる方法を考えよう」というタイプ。
もともとシュガーさんは口数が少なめ。一方、僕はわりとよく喋る性格なので、当初は性格が合わないんじゃないかと思いました(笑)。ただ一言一言がロジカルで納得できるものが多く、対話の仕方が本当に上手いんです。少ない言葉で淡々とさしてくるんですよね。疑うことなく、この人のもとで学びたいなと思いました。
シュガー:とても省エネだね(笑)
背中で語り、得意なデザインはやらせない。
「自分らしさはまだ早い」
ー育成するうえで心掛けていたことはありますか?
シュガー:前職では、僕も先輩の背中を見て成長させてもらいました。なので、自分が後輩を持ったら同じように後輩の手本でありたいとおもっていました。
山幡:とある制作で手こずっていた時に、横で一緒に作業をしてくれて、僕が数日かかったものをたった10分で作ってしまったことがありました。「あー、作ってもらっちゃったな。。」と思っていたんですが、やり方だけ見せると一瞬でその作ったデータを消してしまったんです。それで、「はい、やって。」と一言。僕のものに直接手をつけずに、最後まで自分で手を動かさせることに驚きました。
シュガー:手を出して作っちゃうのは簡単なんだけど、それだと意味がない。やり方は教えるけど、彼自身にやり切らせるということには当時こだわっていましたね。
シュガー:また、クリエイティブの幅を広げるために、あえて得意分野以外のデザインの仕事を渡していました。
彼は入社当時、装飾的なデザインが苦手で、ユーザーの目を引くグラフィックアイデアの引き出しが少なかったんです。それなりに綺麗には仕上げてくるんだけど、何を作らせても、大体アウトプットが似てくるんですよ。
山幡:実は「自分らしさ」にまだ自信があったんです。
学生時代って、「山幡くんっぽいね」をある種の褒め言葉として受け止めていました。「個性があっていいね」というか。それなりに成果を出して周りにも認められてきた自負があったので、社会に出ても「自分らしさ」を出すことが大事だと思っていました。でもそこでシュガーさんに「自分らしさはまだ早い」と一蹴されて。
シュガー:どうしても自分の色を出そうとして、サービスの色を反映できなかったりしていましたね。なのであえて、フリーフォーマットの世界観で仕上げなきゃいけない「きいてよ!ミルチョ」というサービスを任せてみました。
山幡:はじめは僕のことを全然理解してくれてないのかなと思いましたよ(笑)。
ただこのサービスを担当して、自分らしさをだすことはユーザーのことを考えていなくて、独りよがりだということに気付けました。
そして半年後はじめての後輩をもち、「綺麗なだけじゃ伝わらない」とか「もっと文字に勢いをつけたいから、傾けてみよう」とか自然にフィードバックしている時に、あ、幅広がったんだなって時間差で感じましたね。
ー師匠からの独り立ちのタイミングはいつだったんですか?
シュガー:配属されて3か月後くらいのときに、ミルチョのリードデザイナーに据えました。当時、誰よりもミルチョのことを考えてサービスにコミットしていたし、エンジニアともうまく連携しながら、デザインで先回りして開発をリードできていた。
山幡:結構ドラマチックでしたね。ベストクリエイター賞を取らせてもらった授賞式の帰り道に、「このままミルチョのデザイン責任者やってもらうことになったから」と言われました。モチベーションが1番上がってるタイミングで任せてくれたので、緊張しましたがやれるかもと思いましたね。
でも数日たった時に急に怖くなってしまって、こっそり相談したら「周りはみんなお前のこと見捨てたりしないよ。だから気負わずやってみたら?」と言われたのをはっきり覚えています。
独り立ち後。できると思ったのにできない、その理由が分かったとき
ー独り立ち後はどうでしたか?
山幡:任せてもらったからには一人でちゃんとやらなきゃと思っていましたし、できると思っていました。なのに、最初は本当にうまくいかなかったんですよ。
コミュニケーションには自信があったので、当時のプロデューサーにバンバン施策の提案をしていました。しかし、同じアイディアでも僕が提案すると全然通らず、シュガーさんが間に入るとあっという間に決まるんです。あまりに腹が立ってシュガーさんに相談したら、「シュガーが良いって言った」ってためしに使ってみたらどうなる?と。。そこで本当に「事前にシュガーさんに見てもらってて」と言ったらすんなり提案が通ったことがあって。「え、うそだろ」と思いましたよ(笑)。
でも同時に気づいたことがありました。
以前から、、「信頼残高を積め」と言われていたのですが、これがそうかと。本当に信頼が得られるまでは、泥臭く説明しなきゃいけない。そして、説明ができてこそデザインなんだと気づきました。
自分がやりたいことを実現するためには、「信頼残高」を勝ち取ることがすごく大事なんだなと実感しました。すごく悔しかったですけどね。
ーそこで自ら「信頼残高」を得られるようになったのはいつですか?
山幡:僕には相手に同調しようとする癖があり、いわゆるYESマンだったんです。そこでシュガーさんに「山幡はなんでも良いっていうから、そのうち信用されなくなるよ。」と言われて。入社当時、相手が求めているデザインを考えられていなかったように、今度は本質の部分で本当にサービスのことを考えられていなかったんです。
そこからはデザインもただ提案するのではなく、なぜやるべきか根拠をセットにして、自分が思っていることを相手に伝えきるように意識しました。そうした積み重ねで、プロデューサーと信頼関係ができ、対等に壁打ちができるようにコミュニケーションの質が一段上がりました。
これをきっかけに仕事の進み方も一気に変わって、必要があれば企画にも入るし、自分でも考えるし。本当に信頼関係があれば仕事っていいものになるんだなと思いましたね。
より良い組織づくりのために。今の二人の関係性
ー新卒のころから今になって、二人の関係性での変化はありましたか?
山幡:僕は明確にあって、昔よりもシュガーさんと気を遣わずに話ができるようになりました。
以前はシュガーさんが思ってることを汲み取ったり、どう実現するかということを考えていた気がします。それが尊敬するシュガーさんへの恩返しだと思っていたから。
今は、会社も大きくなりデザイナーも増えてきたので、例えばシュガーさんが気付いてなさそうなことがあったら、指摘したり提案をするようになりました。
組織を本当に良くするため、成果を出すためなら、遠慮せず良いことも悪いことも率直に話さないといけない。
シュガー:多少気を使ってくれてもいいよ(笑)。
でもこれも「信頼残高」の話だと思っています。彼に自信も経験もたまり、ちゃんと僕と対等に話ができるようになってきた。後輩からは慕われ、先輩からは一目置かれるデザイナーとして、最近では頼もしさがでてきたなと思います。
山幡:この間、昇格会食で二人きりで飲んでいた時に、ずっと組織と仕事の話をしていたんです。これまでそんな飲み方したことなくて。
その時、おこがましいけど、シュガーさんの組織の話で共感できることがいくつかありました。意見交換とまでいかないけど、思ってることを伝えさせていただいたりして。。話す内容が変わってきました。
シュガー:僕がハッとすることをたまに言ってくるんですよ。
ベテランに中途が多いなかで、いよいよ新卒入社で彼みたいなサイバーエージェント生え抜きのシニアクリエイターが育ってきた。彼は先頭でそこを担っていくだろうという期待があるし、でもまだまだ信頼をその分積み上げる努力も必要。彼なりの新しいキャリアが出てくると面白いと思います。
組織を運営するうえで、僕だけですべての決断をするというのは危険ですよね。
僕自身が決断していかなきゃいけない部分もあるけど、フォローしてくれる人が周りにいないと。僕一人でできることなんてたかがしれているから。そういう意味では、僕の周りはタレント揃いですね。僕のできないところを補ってくれる人たちが集まってくれている。そのひとつを彼が担ってくれている。そういうところが信頼につながっています。特に新卒採用に関しては、彼に相当助けてもらっています。学生からの信頼が厚いんですよ。学生に対してまっすぐ真剣に向き合ってくれるので。
山幡:助け合いですからね(照笑)
▼山幡が大事にとってあった新卒当時のノートを見て懐かしむ2人
二人のもとに弟子入りしてみたい方はこちらのインターンで弟子募集しています!
▼佐藤へ弟子入り
https://www.cyberagent.co.jp/careers/students/creativedojo/instractor/id=23402
▼山幡へ弟子入り
https://www.cyberagent.co.jp/careers/students/creativedojo/instractor/id=23406