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師匠:鷲山 優作 弟子:角田 導晃

サイバーエージェントのクリエイターが一人立ちするまでの成長記録を、新卒当時の師匠と共に振り返る【クリエイター師弟対談】

前回に続き今回は、2011年に中途で入社した鷲山と、2017年に新卒で入社した角田の二人をご紹介します。

 

ゲーム事業部子会社「株式会社グレンジ」取締役でUIUX Lab代表の鷲山と、リリース6年目を迎えるスマホゲーム「ポコロンダンジョンズ」のリードデザイナーを入社3年目で務める角田。

プライベートでも良く遊ぶという本当に仲の良い二人ですが、当初はよそよそしかったそう。新卒時代尖っていたという角田を、師匠の鷲山はどのように受け入れ、育成してきたのでしょうか。当時のエピソードから振り返ります。

 


意見を聞き入れない弟子がやってきた

 

ーお二人の師弟関係はどのように始まったのですか?

 

角田:初めてちゃんとお話ししたのは、新卒研修中の社員との懇親会でした。少し話しただけで鷲山さんの男気に惚れてしまったんですよね。彼が語るゲームUI開発現場の話は、ユーザーがハマる仕掛けなど、デザイナーが考える領域が広くとても難しいけれど、それを本当に楽しそうに話していて魅力的でした。「僕もここで力をつければ、この人のようになれるかも」と憧れと期待を抱いて、鷲山さんのもとで働く希望を出したのが始まりです。

 

鷲山:初めの印象は、いい意味で自分に自信があるタイプだなと。自分の頭でしっかり考えられるので物事の良し悪しの軸を自分の中に持っていました。ただ他の人の言うことにあまり耳を貸さない。

 

 

ー配属当初の弟子はどうでしたか?

 

鷲山:制作物1つを仕上げるのにも、すごく時間がかかっていました。しかし他にもたくさん挑戦してみたいことがあり、もっと効率よく制作したいという葛藤が彼の中にあって。そこで僕がアドバイスしても「いや、僕はこういう風にやりたいです」と、なかなか僕の意見を聞き入れようとしませんでしたね。ただ自分で考えて言っていたので、まずは賛同して「じゃあやってみようか」と本人の方法で試させてみました。

 

最初の段階ではまず、僕を信じてもらうために、本人が気付いて納得してもらうことが大事だと思っていました。なので僕がリカバリーできる範囲で任せて、まぁきっと失敗するだろうなぁと思いながら見守っていました(笑)。失敗してしまったら僕があとは何とかすればいいだけのことですし。

 

そして1週間後に面談で「どうだった?」と聞いたら、案の定全然うまくいっていない。「じゃあこうしたら良くなるんじゃない?」ともう一度、今度は違う角度からアドバイスをしてみました。ここで本人がちゃんと気づいて、僕の意見を取り入れ徐々にうまくいくようになっていきましたね。

 

角田:初めから現場でもできると思ってたんですよね。なのに全然できなくて正直しんどかったです。今思い返すと、僕の気づかないところでうまく天狗になっていた鼻を折ってもらった、みたいなところはあると思います(笑)。 

 

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技術よりも何よりも一番大切なことは「心持ち」

 

鷲山:最初はメンタル面もそんなに強くなかったよね。。一度自分のやり方で失敗してからはどんどん落ち込んで、自分で抱え込んで暗くなっちゃう。提案に自信がなくなったり、すぐにふてくされた顔しちゃうこともあった。

 

角田:あれ!?ふてくされた顔してました?(笑)

 

鷲山:してたよー(笑)。全部顔に出るんですよ。でも裏表がないので分かりやすいんですけどね。正直初めの頃はずっと落ち込んだ感情が全面に出ていました。

 

―そこから変わっていったきっかけなどあったのですか?

 

角田:僕がまた仕事のことで落ち込んでいるとき、突然鷲山さんからLINEで、有名なマンガの1ページが送られてきたんです。そこにはこんなことが書いてあって。

 

“言ってしまえばシャーマンは心持ちひとつで誰にでもなれる。まずは信じること。そして強くできると思うこと。シャーマンに限らず全てのことはできるという想い一つでことをこなす” 

(※注 『シャーマンキング』より一部抜粋)

 

この言葉を見たときに、ふっと気持ちが楽になりました。それまでの学生時代と社会人になってからのギャップで、自信をとことん失いかけていたのですが、また頑張ろうと思えた。

 

鷲山:要は、気持ちの持ちようなんです。技術的な部分は、今日「1」のものが、明日からいきなり「100」になることなんて絶対にないですよね。でも気持ちの部分は変化が大きい。自分次第でどうにでもできる。

 

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まずは彼自身に自信を持ってもらうことが大切だと思ったので、小さなことからコツコツ成功体験を積ませるため細かく状態目標を決めて、徐々にジョブサイズを広げていくことを意識しました。でも本人には気付かれないように(笑)。

 

角田:「あれ?なんかどんどんできるようになってる、、!」と、分かりやすくみるみる自信をつけていきましたね。あれは作戦だったのか…(笑)

 

あとは隣にいて、鷲山さんの人間味を感じていた部分も信頼に大きくかかわっていたと思います。この頃からよく、プライベートでもご飯にいったり飲みに連れていってもらったりしていたのですが、常にかっこつけてるだけじゃない、素の部分をたくさん見れたんですよね。こんな後輩の僕にも心を開いてくれるんだと。

 

鷲山:プライベートでは仕事の話はほとんどしないです。関係ないくだらない話をしたり、恋バナをしたりしますよ(笑)。

 

「あれをもっとこうしたほうがいいと思ってたんだよね」みたいなことは飲み会で言われたくない。僕だったら職場でその場で言ってほしいと思うんです。

 

純粋に僕のスタンスとしては、ひとりの人間として「仲良くなりたい」というのがあったんですよね。もちろん部下と上司の関係はありつつも、フラットに思っていることを言い合いたい。もし、「こういうことを言ったらこの人怒っちゃうんじゃないかな」とビクビクして、お互いに本音が言えなくなってしまっては意味がないですよね。だからわざと隙を見せている、というわけではないですけど、その方が自分も楽なんです。

こうして普段から本音を言える関係性を築けていれば、もし仕事で何か問題がおきたり、悩むことがあっても、対話によってすぐに解決の糸口を見つけることができると思うんですよね。
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角田:正直初めのころは緊張もあり、面談でも本音を言えていなかったり、取り繕っていた部分ってあったと思います。でもプライベートでも仕事でも裏表なく、等身大で接してくださっているとわかってからは、僕も臆せずに鷲山さんに相談できるようになりました。仕事でのアドバイスもすんなり受け入れられるようになりましたね。

 

 

一か八かで後輩に任せた大役。「ダメなら僕が責任をとればいい」

 

―二人で乗り越えた困難はありますか?

 

鷲山:彼が2年目になりたての頃、担当していたゲームタイトル「ポコロンダンジョンズ」のリードデザイナーが異動することになったんですね。次のポジションを決めるうえで、ここで彼をリーダーに据えるか、かなり悩みました。まだ時期尚早かなと思ったり…。

しかし順調に成長してきて、彼の強みである「打たれ強さ」が軸足となってきた頃だったので、ここで大きな勝負に出てみようと思ったんです。もしダメだったら、その時に僕が責任をとればいい。

本人に打診してみて、自信がなさそうなら任せるのは正直やめようとは思っていました。中途半端な気持ちでは到底できない目標だったので。

 

そんな葛藤のなか、お願いしたときに「やります!」と力強く言ってくれた時は嬉しかったですね。内心、彼ならどうにかなるんじゃないかなとは思っていましたから。そこから一気に覚醒した感じがありました。
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―リーダーを任されたときはどうでしたか?

 

角田:正直初めは「無理かも、、」と思っていました。でもスケジュールをみたらそんなことも言っていられない状況で。他部署からリーダーを探してくるより、今までのメンバーで制作した方が絶対にいいものができるし早い。退路を絶たれた状況で、僕が今、やるしかないなと思ったんです。しかし一番は、鷲山さんの真剣な想いに応えたい、と思ったことが自分の気持ちを押し上げたのかもしれません。

結果、かなりしんどかったですが、夢中でやってみたら乗り越えることができた。

 

鷲山:彼の強みである粘り強さが最大限発揮できた結果だと思っています。やっぱり彼を信じて任せてよかったと思いましたね。

 

角田:「あ、できるんだ、できた、、!」と自分でも驚き、自信につながりました。次にもっと大きい山が来ても、この経験があったら何でもできるんじゃないかなって思いました。振り返ると、いつもちょっと高めの目標を設定してもらっていて、そこに必死に食らいついていたら、気づいたらできるようになっていることが多いんです。

 

 

師匠の教えを受け継ぎ、後輩に伝えていく

 

鷲山:チームをリードする立場になってからは「本当に大事なものは何か」本質を捉えるようにアドバイスしていました。

 

角田:僕が焦って相談に行くと、その度に鷲山さんからは「大丈夫だから、大丈夫だから。落ち着いてその先の本質をしっかり見極めなさい」とポジティブなことをたくさん言ってもらいました。

表面的なコミュニケーションでうやむやにせず、その問題の根幹には何があるのか、問題の本質ととことん向き合う。この鷲山さんからの教えは、今でも身に染み付いていますし、現場のメンバーとコミュニケーションをとる際や、特に後輩の育成の場面では大事にしている考えの一つです。
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鷲山:覚醒してからの彼は、いろんなことに積極的にチャレンジしてくれるし、全社横断の横軸の仕事などを頼んでも嫌な顔ひとつしないで、「わかりました!」と率先してやってくれます。絶対に仕事を断らない。そしてその度に、いろんなことを吸収して帰ってくる。いまだにそういう成長をすごいスピードで繰り返していて、純粋に人として「すごいな」と尊敬しています。

なんでも安心して任せられ、背中を預けられる存在になってきたのがうれしいですね。彼なら土壇場でもなんとかやってくれるだろう、という信頼があります。そんな頼もしくなった彼にだから相談できることもありますしね。今では彼の下にもたくさん後輩が入ってきて、一緒に育成しています。

 

角田:僕が鷲山さんにしてきてもらったように、下の代にも受け継いでいきたい。そういう想いで後輩を育成しています。そしてその同志たちと、これからもいいモノづくりをしていきたいですね。

 


 

▼師匠からもらった思い出のプレゼント。

「うれしくて毎日被りすぎていたら、日焼けして黒から茶色になってしまった(笑)」キャップ。

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https://cyberagent.snar.jp/entry.aspx?entryid=5f159933-450a-4ef9-9bd8-cd20ee831e99

 

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【過去の連載記事はこちら】

▶︎社会人3年目のある日、師匠に言われた「デザインしてくれ」の意味。ークリエイター師弟対談vol.1

▶︎師匠からは見て盗め。教わらずとも成長していく弟子 ー クリエイター師弟対談vol.2

▶︎独り立ち後も、共に戦う“同志”として続く師匠との関係 ー クリエイター師弟対談vol.3

▶︎師匠に教わった、やりたいことを実現するために大事なこと。ー【クリエイター師弟対談】vol.4