top1200x630_Vol6-2 (1) 弟子:松尾 省吾  師匠:竹田 彰吾

 

サイバーエージェントのクリエイターが一人立ちするまでの成長記録を、新卒当時の師匠と共に振り返る【クリエイター師弟対談】

前回に続き今回は、2010年に新卒で入社した竹田と、2017年に同じく新卒で入社した松尾の二人をご紹介します。

 

ゲーム事業部クリエイティブ責任者を担い、株式会社アプリボットCCOの竹田と、入社1年目から新規プロダクト「BLADE XLORD」のリードイラストレーターを担当する松尾。

松尾がイラストレーターとして働き始めたころは、なかなか師匠からOKが出ずもどかしい想いをしたそう。その師匠の真意とは?当時のエピソードから振り返ります。

 


「あれ、褒められない」初めて出会うタイプの師匠

 

ーお互いの第一印象について教えてください。

 

松尾:就活中のオフィス見学で初めて会って、そこでポートフォリオを見てもらう機会がありました。大学生のころからイラスト制作のお仕事をフリーランスとして受けていたので、作品のフィードバックを受ける機会が多く、正直褒められ慣れていました。でも唯一、彰吾さんだけ最初に褒めてくれなかったんです。

 

初めは「大丈夫かな」と不安になったのですが、指摘された点が自分がなんとなく納得していなかった部分と合致していて。高い水準で、ここまで率直にフィードバックをもらった経験が初めてだったので、嬉しかったことを覚えています。

 

竹田:優秀なアーティストは、サイバーエージェントには国内外含めて沢山いたのでただ造形力が高い、絵が上手いだけの作品は正直見飽きていました。松尾は学生という点では確かに実力がありましたが、一番ポテンシャルを感じたのは考え方の部分です。

 

ーどのような考え方に可能性を感じたのでしょう?

 

竹田:クリエイターの場合、「誰にも負けたくない。一番になりたい。」という強い意思がとても大切です。自分の作品に対しての恥ずかしさとか、悔しさみたいなものをきちんと受け止めることで、クリエイターとしての今後の器が変わります。松尾の場合、その気持ちがとにかく強かった。

 

ユーザーから見れば「好き」とか「嫌い」とか、魅力的に感じるかどうかは純粋にアウトプットだけで比べられるので、描いた人が有名なクリエイターかどうかは一切関係ない。

シビアな環境のなかで、愚直に高いものを目指そうという意思が大事で、松尾は口だけではなく、それに対して本気で足掻いている様子もありました。ここに一番ポテンシャルを感じましたね。

何分か話してすぐに分かりましたよ。あ、素直に話せている子なんだなと。

 

松尾:恐縮です(笑)。

そこからご縁があって内定をいただくことになり、そのまま彰吾さんのもとで内定者アルバイトを始めました。

 

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最高のアウトプット以外は許容しない

 

ー育成で意識していたポイントはどこですか。

 

竹田:高い要求をすることです。

最高レベル以外のものは基本認めないスタンスでいくこと。松尾だからこそ、特に厳しくしていたのはあります。

 

松尾:内定者バイト時代はカードイラストを担当していたのですが、なかなか彰吾さんからOKが出なくて毎日ヤキモキしていました…。

1つのイラストでラフを2~30体くらい描いても決まらないものもあって。本当にここまで細かくこだわる意味があるのか?と疑心暗鬼になったり、投げ出したくなることもありました。

 

あるとき、自分の使える時間を使えるだけ使って絞り出したのに、一瞬だけ見て「ん、違うな。やり直し。」とぱっと戻されたことがありました。「ここまで頑張ったのにその対応か!!」と思って、ムカついてしまって。あとで彰吾さんや先輩も入っているチャットで、一方的に感情的なことを書いてしまったんですね。そこで先輩はフォローしてくれるんですけど、それに対しても「いや、俺には俺の考えがある!わかったこと言うな」と思っていました。

 

竹田:そんなことがあったね(笑)。

その時の僕の気持ちとしては、むしろこの悔しい気持ちとか、自分に対してや周りに対してのもどかしい想いとか。そういう気持ちが出てくること自体はいいことだなと思って見守っていました。

 

劣等感や悔しさみたいな負の感情って、クリエイターとして自分自身を引き上げるためには大事な要素だと思うんです。

 

松尾:そのあとすぐに、態度もアウトプットも良くないし、こんなことで信頼が落ちるのは良くないなと頭を冷やしました。。正直最初は感情を飲み込む形だったんですけど、だんだん本質が分かってきた。

 

ゲームにおいては人への見せ方も含めてデザイン。いいと思うポイントがずれてるなんてことはよくあることで、その合致点を探すまでは苦労するのはしょうがないし、むしろ必要だと思いました。。

 

それからは、まずは見せ方と伝え方の部分を考えました。

ただラフを並べただけで、いきなり「どうですか?」と聞かれても、どれにも響かなかったら全部イケてないと思われてしまう。キャラクター設定をちゃんと腹落ちさせて、デザインの理由をすべて言語化できるようにしてから、提案するようにしました。

例えばこの子はこういうキャラクター設定なので、このブランドが合うと考えて、こういう恰好にしましたとか。そこから徐々に意見が摺り合って、決まるようになっていきました。

 

竹田:自制と内省ができるタイプなので、自分でちゃんと気づいて変わっていきましたね。

 

ゲーム市場でNo.1を取るために大事なこと

ーなぜそこまで厳しくしていたんですか?

 

竹田:松尾は世界を目指せるクリエイターになると思っているからです。

 

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それにふさわしい仕事を提供し続けることが、僕の責任だと思っています。なのでそこに到達するために必要なものを本人に要求するし、任せる。それにこの会社ってそういうものだと思うし。

 

新卒1年目から新規サービスのメインイラストレーターを任せました。チームで結果を出すことの大切さを、まずは実体験として学んで欲しかったからです。そのために今すべきことは、チームでインパクトのあるプロダクトを創ること。その中で自分が担うべき部分が、アートや最上級のクリエイティブを提供すること。一人では何もつくれないし、組織も完結しない。

 

組織のことを理解せずに、自分の技術力をあげることばかり考えていると、自分なりのサイズ感で、責任も小さくなってしまう。採用など、組織貢献の機会もたくさん作るようにし、組織の中で自分が成長していくことを覚えてもらうようにしていました。ここの視点を松尾は理解していたので、大きく成長したんだと思います。

 

松尾:最初はいちイラストレーターとして、目の前の仕事に対応するスタンスでした。しかし全体を俯瞰して見ないと、分からないこともある。自分から希望してアートディレクションをやらせてもらう機会をいただきました。

 

自分で希望したものの急にスケールが大きくなり、焦ってしまった部分はありました。でも焦っても何も進まないと気付いて、とにかくアウトプットでいいと思わせるために愚直に向き合うようにしましたね。特にデザインすべてに理由をつけて、向き、位置、色、角度などほぼ言語化できるように努めました。

 

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竹田:責任が増えるタイミングで、当人からしたら背負うものが大きくなって、プレッシャーとか、現状に対して足りないものや、色んな葛藤が生まれたと思います。

でも答えはあまり言わないようにしていました。遠回りしたとしても、本人が答えを出して責任をもって進んでいかないと。それによって悩む人が多いと思うけど、それでいいと思っています。自らの頭で考えて自走できる組織にしていかなきゃ市場でナンバーワンは目指せない。

 

ー新規プロジェクトを任されて一番大変だったことはどんなことでしたか。

 

松尾:絵のテイスト決めですね。しんどかった。。

ユーザーに魅力的と思ってもらうために、何を売りにして、どういう作り方をしていくかというイラストの絵作りです。

 

竹田:一見では分からない裏側のクリエイティブの緻密さと、松尾の最終的に伸びるであろうという技術ポテンシャルも加味しつつ、クオリティの高さを決めるというものです。できるだけ高いところを目指すので、時間との闘い。そこが決まるまでは結構大変だったし暗中模索感あったね。 

 

松尾:一か月ぐらいかかったと思います。何度も見直して描き直して、ラフもいれたら4~5体描き直しました。デジタルイラストの中で、アナログっぽい要素をどういう風に表現するか。でもアナログっぽく軽くするのではなくて、質感もこだわって入れるなど。 造形と遊びとのバランスをどのくらい精度高く取り入れるか。

 

竹田:最高のアウトプットのためには達成しなきゃいけない要素がたくさんあった。でも技術的にも難しく、松尾のスキルを追いつかせないと表現が出来ないので、何度も成長とセットでトライさせ続けました。ゴールのイメージはお互いに摺り合っていたので、着実に積み上げていった結果、二人で納得できるものができた。

 

プロセスより、結果を残すことに意味があるので、かなり高めの要求をしていましたが、ちゃんと着地させたこと自体が大きかったです。1年目の終わり頃でしたね。

 

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世界を目指す“同志”として共に戦う

 

ー今のお二人の関係はどんな関係ですか?

 

竹田:今は同じクリエイターとして仕事をしている感覚ですね。コツコツ積み上げて成果を出してきたし、松尾が自分で考えてPDCAを回せるようになってきたので、課題に気づいてもらうコミュニケーションしかしません。

 

クリエイティブ責任者の立場からすると、高い次元で切磋琢磨できる環境を用意し、松尾ができることをいかに提供し続けられるか、を常に考えています。今は周りにもっとすごい人がいる環境を作れているので、今度はその人たちを越えられればいいんじゃないかな。

 

松尾:僕のことを信頼して、議論できるようになったので、最近はよりクオリティを上げるための会話ができるようになったと思います。僕も本当にブラしたくないところだけを相談するようにしています。

 

ー弟子に今後期待しているところはどんなところですか。

 

竹田:そこもずっと変わらなくて。最初から、世界で活躍するクリエイターになると思って一緒に仕事をしています。そのために会社として全力でサポートしながら一緒に切磋琢磨しています。彼の成長と共に会社の成長もある。その先にプロダクト自体も世界で評価されるものを創ることができればいいと思っています。それを引っ張っていくのは松尾だと思うし、サイバーエージェントのゲーム事業部としても、日本を代表するクリエイターを1人でも多く輩出していかなければいけない。彼も「その一人に必ずなる」という目線で仕事をしているので、引き続きそこに対してのチャレンジをし続けて欲しいですね。

 

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ーそこは断言するほど期待されているんですね。

 

竹田:「日本一に”なればいいな“」と夢物語になっていると絶対無理だと思う。本当になると決めることには相当な覚悟と勇気がいる。そこに成りうる人材だと思っているので、期待しています。 

 

松尾:恥ずかしいですね…(笑)。

彰吾さんのメッセージは基本的にずっと一緒です。「組織の成長」と、「クリエイターとしても世界でも戦えるようになる」という目線があって、常にその軸でしか会話をしていないので、大体いつも同じような軸の話になる。ただそのことをどれだけ理解できたか。理解度が徐々に上がってきて目線が追い付いてきていることは、自分の中では大きい変化です。

彰吾さんの想いがブレないので、こちらも死ぬ気で食らいついていけば、そこに至れるのではないかという気持ちは、僕も初めからありました。世界で戦うにはまだまだですが、とにかくアウトプットで良いと思わせ続けていきたいです。


 

▼入社当時、松尾がひたすら練習していたクロッキーや、フィードバックをメモしたラフ画

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二人のもとに弟子入りしてみたい方はこちらのインターンで弟子募集しています!

 

▼竹田へ弟子入り

https://www.cyberagent.co.jp/careers/students/creativedojo/instractor/id=23401

 

▼松尾へ弟子入り

https://www.cyberagent.co.jp/careers/students/creativedojo/instractor/id=23404


 

【過去の連載記事はこちら】

▶︎社会人3年目のある日、師匠に言われた「デザインしてくれ」の意味。ークリエイター師弟対談vol.1

▶︎師匠からは見て盗め。教わらずとも成長していく弟子 ー クリエイター師弟対談vol.2

▶︎独り立ち後も、共に戦う“同志”として続く師匠との関係 ー クリエイター師弟対談vol.3

▶︎師匠に教わった、やりたいことを実現するために大事なこと。ー【クリエイター師弟対談】vol.4

▶︎自分流を貫く弟子と、あえて失敗させる師匠の懐。ー【クリエイター師弟対談】vol.5