こんにちは、株式会社サイバーエージェント 秋葉原ラボの高野です。2020年4月20日から24日に行われた「The Web Conference」(通称WWW)の論文読み会をお届けします。この論文読み会は2017年から開催しており、今年で4回目になります。
今回は非同期オンライン(つまりブログ)にて開催いたします。

The Web Conference (通称 WWW) は情報系トップカンファレンスのうちの一つで、その名の通りWebに関する国際会議でシステム・検索・機械学習から社会問題まで幅広いトピックを扱っています。 発表された全ての論文は以下のサイトで公開されています。

この論文読み会は後述の弊社秋葉原ラボのエンジニアの6名がWWW2020の発表論文から各自のテーマに沿っていくつか選び、興味深いと感じた論文をいくつかご紹介するものです。論文紹介はテーマごとにスライド形式でまとめてあります。

この論文読み会は、Webの最前線を把握し、Web業界のエンジニア・研究者として目指すべき方向を考えることを目的としています。

このブログでは各発表者の概要をスライドともにご紹介いたします(五十音順)。

Webと経済学: A Feedback Shift Correction in Predicting Conversion Rates under Delayed Feedbackの紹介

  • 紹介者: 數見 拓朗

クリックからコンバージョンに至るまでの時間を考慮したコンバージョン予測問題を扱った研究を紹介します。この研究では、定式化したコンバージョン予測問題で推定量の性質に注目をしています。具体的には、一致性を満たすような重み付き推定量とその導出方法を提示しています。

WWWにおける社会科学

  • 紹介者: 高野 雅典

社会科学的な動機に基づく問題設定に対してWebデータをうまく用いてアプローチする研究を2つ紹介します。1つはOSSコミュニティという組織の成長について知るためにGitHubデータを用いて分析する研究、もう1つは差別に抗議するデモ(論文では移民差別@US)におけるオンラインでの偏見表出に与える影響(表出を減らす/増やす)を評価する研究です。

User Modeling セッションから
 コンテンツに関連するダイナミクス研究紹介

  • 紹介者: 武内 慎

User Modelingセッションからコンテンツのダイナミクスを調べた2つの研究を紹介します。1つはコンテンツを生成する行動(例えばStackOverflowに質問・回答する、Twitterに投稿する、論文を執筆するなど)の戦略という直接観測できないものをモデル化し分析した研究、もう1つは音楽サブスクリプションサービスにおける(一見本業と競合するように見える)Podcast機能が本業に与える効果を評価した研究です。

クラウド活用最前線: Crowdsourcing セッションつまみ食い

  • 紹介者: 角田 孝昭

Crowdsourcingセッションからアノテーションに関する2つの論文を紹介します。1つはアノテーションラベル・アノテータをタスクにできるだけ依存しない形でモデル化する研究、もう1つはデータセットに内在する未知の偏りをクラウドソーシングによるアノテーションによって発見する枠組みを提案する研究です。

ユーザ行動分析とオンライン実験で推薦のユーザインタラ
 クションの深まる理解へ

  • 紹介者: トリヴィッタヤシル ウィパウィ

User Modelingセッションからレコメンデーションの影響を調査した研究を2つ紹介します。1つはユーザの音楽の消費(聴取)の多様性を評価する手法を提案し、多様性が課金や継続利用に与える影響の評価やその多様性に与えるレコメンデーションの影響を調査した研究、もう1つはoffice.comにおける資料のレコメンデーションの実装とそれの効果検証をした研究です。

WWW2020で見る解釈性の研究と分析事例の紹介

  • 紹介者: 山本 悠二

WWWの論文の中から解釈性に関するの研究と分析事例についてそれぞれ紹介します。1つは対極となる2語間を分析することで埋め込みベクトルに解釈性を与える手法を提案する研究、もう1つは数多く存在するスマートフォンアプリの利用変遷を6年間に渡って調査し技術革新などの影響を考察する研究です。

おわりに

この読み会では上記のように発表者が自身の興味のあるテーマを設定して、それに沿って論文をご紹介いたしました。WWWはアイデア・切り口が興味深い論文が多く、読んでいて/紹介を聞いていてワクワクする研究が多くありました。

WWWは非常に幅広いトピックを扱う国際会議ですので、自分の業務・研究とは少しズレた、普段読まないような論文も読むことになりました。これによって自身の業務・研究の幅を広げることができそうです。上記の紹介資料を御覧頂いた皆様の幅を広げるきっかけにもなれば幸いです。

参考

秋葉原ラボ 発表論文一覧