AI事業本部の中澤です。

今回は AWS re:Invent 2023 に現地参加してきたので、その中で感じたことなどをレポートします。

【写真】 AWS re:Invent 2023

全体の所感

AWS re:Invent 2023は、AWSが主催する世界最大規模のクラウドコンピューティングに関する「学習型」カンファレンスで、毎年ラスベガスで開催されています。今回の会場は5つの場所に分かれており、全体で5万名以上の参加者が集まり、そのうち1700名以上が日本からの参加者でした。

カンファレンスでは、5つのKeynoteをはじめとして、多岐にわたるトピックについてのプレゼンテーションが行われるBreakout Sessionや、小規模なグループに分けて行われるBuilder’s Sessionなど、多様なセッションが提供されていました。また、Expoでは、多くのスポンサーブースが設置され、サービスの説明を聞いたり、開発者に対して質問を行うことができました。さらに、セッション以外の時間でも、AWSや協賛企業主催のネットワーキングイベントが多数開催され、多くのエンジニアと新たにリリースされたサービスを含めた情報交換を熱量高く行うことができました。

【写真】 re:Invent Expo会場

生成AI周辺の強化と最高峰のエンジニアの思想に触れたKeynote

Keynoteは5つ開催され、その中の二つを実際に会場で聴いてきました。

一つ目は CEO のAdam Selipsky のKeynote です。ここでは、新しいS3のストレージクラスである、Amazon S3 Express One Zoneの発表や、Amazon Aurora PostgreSQLやAmazon RDS for MySQL, Amazon DynamoDBから Amazon Redshiftに対する zero-ETL機能のプレビューが発表されました。Amazon Aurora MySQLに関しては、先行してGAになっていたので、他のデータベースにも zero-ETLが拡張された流れです。また、AdamのKeynoteの中で一際、会場が盛り上がったのは Amazon Qの発表でした。Amazon Qでは、AWSのサービスを利用したアーキテクチャの提案だけでなく、トラブルシューティング用のアシスタントとしても機能してくれるようです。それ以外にも生成AIを中心とした新サービスや新機能のリリースが複数ありました。

【写真】 AWS CEO Adam SelipskyのKeynote

二つ目は、Amazon の VP兼CTOのDr.Werner のKeynoteです。WernerのKeynoteは、新サービスの発表が中心ではなく、20年の経験から作られた「THE FRUGAL ARCHITECT」という法則について、事例をもとにプレゼンがありました。

THE FRUGAL ARCHITECT では、DesignとMeasure, Optimize という3つの軸を中心に、7つの法則が紹介されていました。

特に Measureに含まれる「Cost Aware Architectures Implement Cost Controls」が印象的でした。アプリケーションの各コンポーネントを分解し、それぞれを重要度の階層構造にし、それぞれの階層の重要度に応じたトレードオフを行い、全てをコントロール可能にするという考え方を学びました。

実際にAmazonでは階層を、以下のようにTIER1とTIER2, TIER3に分けているようでした。

  • TIER1: それが無いとビジネスが成り立たないコアな機能
    • 検索、閲覧、ショッピングカート、チェックアウト、レビュー
  • TIER2: 製品を見つけるために重要なものだが、コアでは無いもの
    • レコメンデーション、パーソナライゼーション
  • TIER3: 数分間動かなくても、ユーザー体験に影響のないもの

機能の重要度については様々な場所で言われていますが、コアな機能ではないと判断するのは難しいと思います。今回のKeynoteを聞いて、自分自身が本当に向き合っているのかをもう一度考える良い機会になりました。

【写真】 Amazom VP兼CTOのDr.WernerのKeynote
(AWS re:Invent 2023 – Keynote with Dr. Werner Vogelsより引用)

WernerのKeynoteからは、これ以外にもコストと持続可能性についてなど、多くの学びがありました。KeynoteはYoutubeで公開されているので、まだ見ていない方はぜひ一度ご覧いただくことをお勧めします。

AWS エコシステムの強化

今年の re:Invent 発表されたサービスや機能では、AWSのエコシステムを強化するようなものが多かった印象です。プラットフォームとして、メインでAWSを利用しつつ、データウェアハウス(DWH)や、監視には、別のSaaS製品を選択されているプロダクトも多いのではないでしょうか?

例えば、データウェアハウス(DWH)では、Amazon Redshift があったものの別のDWHを選択しているプロダクトが多い印象でした。今回 zero-ETL周りの強化で DWHへのデータ取り込みがより簡素になり、利用を検討するプロダクトも増えそうです。また、Cloud Watch Application signalsやmyApplication in the AWS Management Consoleによってアプリケーションのパフォーマンスやコストの一元化が容易になっていくと思われます。

これらの新サービスにより、AWSコンソールの利用機会が増えると予想されます。私自身、業務ではInfrastructure as Code (IaC)を用いてインフラを構築することが多いため、限られた目的でしかかコンソールは触らないのですが、Amazon QのトラブルシューティングやObservabilityの強化により、コンソールの利用機会が増えそうです。これに伴い、従来の開発スタイルは変化していき、開発生産性の向上につながりそうです。

まとめ

今回のAWS re:Invent 2023を通じて、現地でしか体験できない独特の雰囲気を味わうことができました。また、日本からも参加されていた方々との交流を通じて、普段は聞く機会のない話を多く聞くことができました。新たにリリースされたサービスや機能についても検証を進め、良い部分は積極的に活用していきたいと思います。

現地で交流した皆さん、そして今回のAWS re:Inventへの送り出してくださったAI事業本部の皆さん、ありがとうございました!

それでは最後に Dr.Werner の言葉で終わらせていただきます。

「There’s never been a better time to be a builder」

「Learn and be curious 」

【写真】 Dr.WernerのThere's never been a better time to be a builder

【写真】 Dr.WernerのLearn and be curious