先日開催された CA DATA NIGHT #9 の様子についてご紹介いたします。
イベント概要

connpass: https://cyberagent.connpass.com/event/389754/
CA DATA NIGHT とは、サイバーエージェントが主催するデータサイエンスに特化した技術者向けの勉強会です。機械学習や統計学、コンピュータビジョン、情報推薦など、さまざまな専門分野のエンジニアやデータサイエンティストが、日々の技術や取り組みを紹介しています。
2026年5月21日に当社オフィスで開催した9回目の今回は、「スポーツの現場を支えるAI・データ活用の最前線」をテーマに掲げました。WINTICKET の競輪 AI 予想、スポーツ映像を支えるデータ基盤、そして J リーグのクラブ現場でのデータ活用と、扱う対象や立場が異なる3名にご登壇いただきました。
以下、各発表の様子をお伝えします。
発表内容
競輪 AI 予想モデル:観測できない勝率にどう近づくか
サイバーエージェント/Data Science Center 所属の ML エンジニア 杉山 雄大より、WINTICKET の競輪 AI 予想モデルについて発表されました。AI が買い目の候補を提案し、ユーザーの投票を支援する機能を題材に、競輪予測ならではの難しさと、その乗り越え方が語られました。

競輪予測が難しい理由は2つあります。1つは、同じレースが二度と行われないため、選手の「真の勝率」を直接観測できないこと。もう1つは、市場のオッズが勝率そのものではなく支持率にすぎず、人気馬ならぬ人気選手ほど過小評価される Favorite-longshot bias による歪みを含むことです。オッズをそのまま勝率とみなすと、この歪みごと取り込んでしまいます。
最終オッズとレース情報を入力とした機械学習モデルで、支持率を勝率に近い確率へ補正するアプローチを採りました。さらに難所となるのが、ラインの駆け引きが効いてくる3連単の予測です。9車から3着までの並びをまとめて言い当てようとすると組み合わせが膨れ上がるため、これを単勝・2車単・3連単へと段階的な条件付き確率に分解しました。問題を解ける単位までほどいてから積み上げる設計に切り替えたことで、モデルの性能改善につながったとのことです。
なお本発表のスライドは、予想モデルの詳細を含むため外部公開はしておりません。
サーバレスで作る動画データ管理基盤
サイバーエージェント/WINTICKET でバックエンドと基盤を担当する茨木 啓瑚より、データ基盤「DAM」について発表されました。スポーツ映像から CV/ML モデルを生み出すための土台となる基盤です。

出発点は、足元の困りごとでした。競輪 WINLIVE などで日々たまる映像が、ローカル PC・Google Drive・個人の EC2 へと散らばり、「どの動画がどこにあるか」が担当者の記憶頼みになっていたのです。DAM はこの状況に対して、元動画・メタデータ・実行履歴・副産物を一箇所へ集約します。S3 に置くだけで Collection へ自動的に整理される仕組みにより、所在の属人化を解きほぐしていきます。
アーキテクチャは入口・取込・Pipeline・保管・検索の5ブロックで構成され、全体をフルサーバーレスでまとめています。土台には AWS 公式 OSS の「Guidance for Media Lake on AWS」を採用し、コアには手を入れず拡張ポイントだけを自社実装する方針をとりました。これにより upstream の更新へ追従しながら、自社の事情に合わせて伸ばせる構成になっています。GUI でのパイプライン組み立て、CVAT を使ったアノテーション連携、セマンティック検索まで備え、これまで個人の工夫に閉じていたモデル開発の土台を、基盤へ移していく姿が示されました。
FC町田ゼルビアでのデータ活用
FC町田ゼルビアのデータアナリスト 木下 慶悟より、J1 サッカークラブの戦術領域におけるデータ活用について発表されました。

クラブの現場には、データが部署ごとに分断されるサイロ化と、サッカー特有の複雑さゆえにデータだけでは意思決定を下しづらいという二つの壁がありました。木下が所属するデータ&テクノロジーグループは、現場が求める情報を過不足なく一気通貫で届けるデータプラットフォームを構築し、この壁に向き合っています。
戦術領域では、昨シーズンの分析をもとに現場と方向性をすり合わせるところから始めました。「戦術と紐づくか」「結果と相関するか」「直感的にわかりやすいか」という3つの観点でチーム独自の戦術評価指標を策定し、それらを他のスタッツと統合したダッシュボードの開発を進めています。
こうした長期的な取り組みと並行して、試合単位でもデータの因果関係を解析しています。現実的に改善できる介入点を特定して現場に提案することで、検証のためのデータが仮説を生み出すデータへと変わり、チームの目線を揃え、より良い意思決定を後押ししつつあるとのことです。
発表のまとめで強調されたのは、何よりも信頼関係の構築でした。単なる技術者ではなくチームの一員になることが、データを現場に活かすための土台になります。その土台の上で、今後は AI を活用した対戦相手分析の支援や、リアルタイムでのデータ取得・分析に向けた実証実験を進めていく予定です。
CA DATA NIGHT #9 / 発表スライド
J1サッカークラブにおける
データ分析と現場実装の最前線
スマートフォンでは資料のプレビューが正しく表示されない場合があります。
下のボタンから全画面でご覧ください。
おわりに
発表のあとに開いた懇親会も盛り上がり、登壇者と参加者が分野を越えて語り合う時間になりました。ご参加いただいた皆さま、登壇者の皆さま、ありがとうございました。
今後も事例紹介のイベントを開催していく予定です。ご興味をお持ちの方は、ぜひ connpass の CyberAgent グループ をチェックしてみてください。
