こんにちは。サイバーエージェントでマッチングアプリ「タップル」のPMをしている田中です。
先日、DMM・サイバーエージェント・グッドパッチの3社合同で開催された 「PdMオフレコ会議:キャリアの壁編 〜次のステージに進む人は何を手放したのか〜」 に参加してきました。7月の「AIの壁編」に続く第2回目の開催です。
PMとして数年働いていると、「このまま今の延長でいいのだろうか」「次のステージに進むには何が足りないのだろう」と悩む場面が増えてくる方も多いのではないでしょうか。他社のPMはその壁をどう乗り越えてきたのか。綺麗なキャリア論だけではない、本音の話を聞きに行ってきました。
PdMオフレコ会議とは?
「PdMオフレコ会議(#OffRecPdM)」は、DMM・サイバーエージェント・グッドパッチの3社が主催するPdM向けの有志コミュニティです。少人数かつクローズドな場だからこそ話せるリアルなナレッジの共有や、会社を超えたつながりをつくることを目指しています。
名前のとおり「オフレコ」が前提の会なので、当日は撮影・録音は全面禁止。このレポートも、登壇資料の範囲で書いています。

今回のテーマ:「キャリアの壁」
シニアPdM・CPO・事業責任者といった「次のフェーズ」を意識し始めたとき、多くのPdMが“キャリアの壁”にぶつかります。今回はその壁について、3社のリアルな実体験を共有し合いました。
運営からは、以下のような悩みを抱える人に向けた会であると紹介がありました。
- 次のフェーズを意識している — シニアPdM・CPO・事業責任者へのキャリアアップを考えている
- キャリアの進め方に迷いがある — このままでいいのか、もやもやを抱えている
- 本音と失敗を聞きたい — 成功談より、意思決定の裏側を知りたい
サブタイトルの「何を手放したのか」という問いが、LT(ライトニングトーク)を通して何度も立ち返るキーフレーズとなっていました。

全体の流れ
当日は、3社のライトニングトーク(LT)と、その後の懇親会という2部構成でした。
- 19:00〜 オープニング
- 19:10〜 LT① 田口 恭平さん(グッドパッチ / AI駆動開発ユニット GM)
- 19:25〜 LT② 山本 周平さん(サイバーエージェント / AWA PM)
- 19:40〜 LT③ 伊藤 圭司さん・奥野 達也さん(DMM.com / アルファ室 PdM)
- 20:00〜 懇親会(自由参加)
- 21:00 終了
LTで語られた3社の「キャリアの壁」
同じ「キャリアの壁」というテーマでも、3社でぶつかった壁の形はまったく違いました。
- グッドパッチ|田口 恭平さん ── 評価の壁
- 正しいことを全部やったのに、A評価(期待どおり)から上がれない
- サイバーエージェント|山本 周平さん ── 役割の壁
- 「ここまでが自分の担当」という、誰も引いた覚えのない線
- DMM.com|伊藤 圭司さん・奥野 達也さん ── 転職・異動の壁
- キャリアを移るときに立ちはだかる、理想像や領域へのこだわり
田口さん(グッドパッチ)|正しいことを全部やった。それでも、上がれなかった。
田口さんのお話で特に印象的だったのは、「プロセスを正しく回すだけでは、評価は上がらない」ということでした。ユーザーインタビューを重ね、課題を整理して機能をリリースしても、事業KPIが動かなければ評価は「期待通り」にとどまってしまう。プロダクトが成長するほど単純な勝ちパターンは枯渇していくため、その先は自分で賭けるポイントを見極め、追うべき数字を決める覚悟が必要だというお話でした。
田口さんは、PdMの仕事を次の4段に分けて整理していました。
- 自分で動かす
- 仕組みを作る
- 賭ける先を選ぶ
- 追う数字を決める
ご自身も②の「仕組みづくり」で満足してしまい、その先へ踏み出せていなかったことが評価に伸び悩んだ要因だったと振り返られていました。
最も心に刺さったのは、冒頭の「直近リリースしたその機能、事業KPIは動きましたか?」という問いかけです。自分自身の働き方を省みるきっかけになりました。田口さんが手放したのは「プレッシャーのない、居心地の良い環境」。「自分の決めた選択を正解にするために、全力で組織を動かす」という力強い言葉が深く心に残っています。

山本さん(サイバーエージェント)|越境しよう、役割の外へ
山本さんの登壇では、「役割の壁は、越えていい」という言葉が非常に印象的でした。壁の正体は、自分で勝手に作り出していた「担当範囲」という無意識のライン。その枠を越えて踏み出した分だけ、防げるリスクも生み出せる成果も大きくなるというお話でした。
興味深かったのは、担当外の領域に手を出す理由が「巡り巡って自分の本業が楽になるから」という視点です。他チームの負担になる業務を先回りして引き受けることで信頼関係が構築され、結果として本業で通したい企画がスムーズに進むようになる。明日からすぐに実践できる具体的なノウハウまで共有していただき、非常に学びが深まりました。
- 叩きやPoCを、AIで先に作ってしまう
- 面倒そうな仕事を、自分から引き取る

伊藤さん・奥野さん(DMM.com)|キャリア移行時に立ちはだかる、壁の正体
お二人が強調されていたのは、「転職や異動の際に直面する壁は、自身のこだわりが形を変えたもの」であるということです。伊藤さんにとっては「当時の目指すべき理想像」、奥野さんにとっては「現在所属している領域」が壁になっていたそうです。
お二人とも、移るたびに「手放したもの」と「残したもの」を並べて見せてくれました。
- 伊藤さん:営業の経歴や自由な時間は手放しても、「根性」だけはずっと残してきた
- 奥野さん:開発ポジションへのこだわりや、今いる領域へのこだわりを手放してきた
特に印象的だったのは、奥野さんの「壁を越えたのではない。こだわりを手放したら壁そのものが消えた」という言葉です。壁は乗り越えるものと思い込んでいたため、手放すことで解消するというアプローチにハッとさせられました。最後に語られた「今壁を感じていないのは、次の理想やこだわりが、まだ壁として顕在化していないだけかもしれない」という言葉も、深く考えさせられるものでした。

懇親会の様子
懇親会はテーマ別のテーブル形式で進行しました。「キャリアチェンジ」「キャリアアップ」「領域拡大」という各テーブルに登壇者が配置され、参加者は関心のあるテーマへ自由に移動できる仕様になっていました。また、企業交流スペースも設置されており、各社のメンバーと直接意見交換ができる貴重な機会となりました。
参加してみて、持ち帰った学び
最も面白かったのは、3社共通で「キャリアの壁」というテーマでありながら、ぶつかった壁の性質やその突破方法が三者三様であった点です。評価の壁、役割の壁、転職・異動の壁。誰もが直面し得る悩みでありながら、解決へのアプローチは様々でした。多様な事例に触れたことで、自身が現在直面している壁を見つめ直す良い機会になりました。
共通していたのは、「壁の形状は違えど、次のステージへ進んだ人は皆何かを手放していた」ということです。田口さんは居心地の良い環境を、山本さんは役割の境界線を、伊藤さん・奥野さんは理想像や領域への執着を手放していました。壁を乗り越える際には要素を足すことに意識が向きがちですが、「何を削ぎ落とすか」を定義することの重要性を再認識しました。
おわりに
「オフレコ」という枠組みだからこそ得られた貴重な本音が凝縮された、密度の高い2時間でした。登壇者の方々、参加者の皆様、そして共同運営にご尽力いただいたDMM・グッドパッチの運営陣の皆様に感謝申し上げます。
「PdMオフレコ会議」では、今後も組織の枠を超えてPdMが本音で議論できる場を提供していきます。次回は、AIの活用範囲やPMのあり方をテーマに議論を深める 「オフレコ討論会」を今冬に開催予定 です。日常的な情報交換が行えるSlackコミュニティも運営しておりますので、ご興味のある方はこちらよりぜひご参加ください。皆様のご参加を心よりお待ちしております!
