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弟子:早坂 千尋さん 師匠:鬼石 広海さん インタビュアー:桐山眞由さん

 

“クリエイター師弟対談”と題してスタートした本連載では、サイバーエージェントの先輩クリエイターが一人立ちするまでの成長記録を師匠と共に振り返ります。

 

今第一線で活躍する先輩クリエイターは、入社からこれまでをどのように過ごし、何を学んできたのか?

 

インタビュアーは、今年サイバーエージェントに入社した新卒クリエイターが務めます。

 

第3回目は、複数のコミュニティサービスを経て、現在新規サービスの立ち上げを担当している早坂 千尋さんと、その師匠であり『AbemaTV』でクリエティブディレクターを務める鬼石 広海さんのお二人。インタビュアーは、新卒デザイナーの桐山 眞由さんです。

 

【過去の連載記事はこちら】

▶︎社会人3年目のある日、師匠に言われた「デザインしてくれ」の意味。ークリエイター師弟対談vol.1

▶︎師匠からは見て盗め。教わらずとも成長していく弟子 ー クリエイター師弟対談vol.2

 


「なぜ1位じゃなかったの?」常に走り戦い続ける師匠の背中

 

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桐山:本日はよろしくお願いします!早速ですが、お二人の師弟関係の始まりを教えていただけますか?

 

鬼石:僕がサイバーに転職して2年目の時に、早坂が新卒で入社してきました。早坂は同期の中でも実力が長けていたので、早期配属という形で当時僕が担当していたコミュニティサービスに配属されてきたのが始まりです。

 

桐山:早期配属というのは、研修には参加されなかったのでしょうか?

 

早坂:新卒研修は受けていたのですが、研修が全て終わる前に早期で現場に配属されました。配属面談でしゅがーさん(クリエイティブ執行役員の佐藤)から、「鬼石さんの下につくということの意味がわかるよね?」と言われ、良いプレッシャーをいただいたのを覚えています。(笑)

 

鬼石:当時は新規サービスがどんどん立ち上がってきている時期だったから、会社的にも早く現場で働きながら成長して欲しいという考えがあったんだよね。

 

桐山:配属されてからの鬼石さんは、どういった印象だったのでしょうか?

 

早坂:あの頃の鬼石さんは、目がギンギンでしたよね。そして常に走ってました。(笑)常に走り作り続けている上司の背中を追って、捕まえてはデザインを見てもらっていた覚えがあります。

 

鬼石:ギンギンだったよね。(笑)サイバーに転職してまだ1年で、サービスデザインをするのも初めてだったから、自分自身もとにかく必死な時期だった。あと早坂は、僕がサイバーで初めて持つトレーニーだったね。前職で僕を育ててくれた師匠はすごい厳しい方だったんだけど、早坂に伝えてきたことの多くはその方に自分が言われてきたことだったかな。やっぱり自分が師匠に言われてきたことというのは、自然と体に染み付いてるみたいだね。

 

早坂:私は鬼石さんに叱られた記憶はないのですが、要所要所でぐさっと来る言葉をもらっていました。新卒の時に社内で開催されたアメブロスキンのコンペで優勝できなかった時、「なぜ1位じゃなかったの?」「落ち込んでる暇は無いよ。」と言われた時は、胸に突き刺さりましたね。

 

鬼石:僕が落ち込むと手が止まるタイプだったから、きっとそれも自分が言われてきたことだったんだと思う。(笑)

 

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鬼石:あとコンペの時に「なぜ1位じゃなかったの?」と言ったのは、1位を取れなかったことを問いただしたわけではないんだよ。僕は一番良いと思ってたから、純粋になぜ1位じゃなかったんだろうという疑問があった。

 

早坂:そうだったんですね!詰められているのかと思いました。(笑)

 

鬼石:違う違う。(笑)あと社内コンペというのは、他のデザイナーの目に触れる場でランキング付けをされて、デザイナーとしての評価と認知をされる場。早坂がそもそもデザイン能力が高い子だからこそ、そういうところで勝っていかないともったいないと思ったんだよね。コンペで勝つことだけを目的にするのは本質的では無いけど、ここで目立って周囲に認められることは、後々良い仕事をもらえることにも繋がる。だから勝って欲しくて自然と出た言葉だった。

 

早坂:確かに以前、“デザインセンター試験”の結果が出た時に、自分が思っている以上に周りの方から「すごいね!」「おめでとう!」と声をかけていただくことが多くて、周りの方はこんなにも見てるのかと驚きました。

 

独り立ちして3年。時にはメンターとして、時には同志として続く師匠との関係

 

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鬼石:師弟関係でいた期間は実質数ヶ月だったよね。優秀な子は早く独り立ちさせて、事業の核になる人材になっていって欲しいという考えだったから、他のサービスでリニューアルの話が上がったタイミングですぐ送り出すことになりました。

 

桐山:それだけ早いタイミングで送り出すことに、不安はなかったのでしょうか?

 

鬼石:不安はなかったね。彼女に実力があるということもあるけど、サービスがどんどん立ち上がっていてどれが成功するかも分からない中、とりあえず飛び込んでこい!と。

 

早坂:私は心配でしたが、大丈夫だから!と背中を押してもらいました。

 

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桐山:そうやって背中を押してもらえるのは、クリエイターとして憧れます。私もどんどんチャレンジして行きたいタイプなので、チャレンジできる環境のあるサイバーエージェントを選んだんです。

 

鬼石:若手にどんどん光を当てるというのはサイバーの文化の一つだしね。

 

早坂:誰かの下で育ててもらうことは始めのうちは大事だけど、師匠と離されて一人になってから初めて見えるものの方が多くて。早めにその経験ができたのはすごい大きかったですね。

 

鬼石:上司がいる安心感より、追い込んで自分ゴト化する方が本当に色々なことを考えなきゃいけないし、自分がやらなければいけないという責任感が出てくるから成長できるよね。

 

早坂:はい、本当にそう思います。でもそれと同時に、2年目のデザイナーが一人で作れるもののレベルに限界を感じたこともありました。そして限界を突破するためには、他の方に引き上げてもらえる環境がないと厳しいと感じたので、とにかく色々な意見をもらうようにしました。そしてその中から「より良くするためには、どの意見を活かすべきか?」と取捨選択をしていく力が大事だと感じましたね。

 

鬼石:独り立ちしたとしても、フロアにいる様々な職種の方達から意見をもらえる環境があって良かったよね。

 

早坂:ありがたい環境でしたね。あと独り立ち後も、鬼石さんとは良く一緒にランチをしてもらっていましたね。

 

鬼石:息抜きみたいなものだったけどね。(笑)ほとんど仕事の話をした覚えはないけど、同じデザイナーとして働き、サービスを当てるというミッションを抱えている同士、師弟関係というものを取り払って対等な立場で話をしたいと思ったんだよね。僕自身がデザインの正解を常に持っているわけではないし、それを押し付けることは違うと思うから、フラットに話せる時間はよかったなと。

 

サービスデザイナーとして活躍するために、問われる能力とは

 

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早坂:最近「サービスデザイナーとして成長するためにはどうしていくべきか?」と考えることが多いのですが、鬼石さんはどう思われますか?

 

鬼石:仕事をしていてよく思うのは、デザイン能力だけではなくチーム開発能力が問われている気がするね。あとは、クリエイティブディレクターを目指す時に、UIデザインだけではなくもっと幅広くグラフィックやアートワークを学んでいく必要性を感じてる。僕が今携わっている「AbemaTV」がまさにそうで、プラットフォームが醸成されたら、あとはコンテンツが肝になってくる。そうなるとUI以外のデザインについても何でもやらなければならないから、今原点回帰でグラフィックや映像について再び学び始めてるところだよ。

 

早坂:確かにデザインスキルの幅を広げる必要性は感じています。今までやったことがないデザインなど、常に難しい課題に向き合い続けることが大事ですよね。

 

鬼石:あと運用フェーズのサービスにおいては、結局一番大事なのはスピードなんじゃないかなと思う。いかに早く作り、ユーザーの反応を見て次の施策に移すかというPDCAのスピード感。そこでデザイナーがどう価値を出し成長するかという議論はあるけど、例えばユーザーテストの手法を熟知して、その結果をデザインに反映させるスキルとか。デザイナーの感性だけではなく、ビジネス視点を持って考えられるデザイナーになるべきだなと。

 

早坂:ビジネス視点は必要ですね。私は最近、想像以上に数字と向き合うことの必要性を実感しています。「数字を守らないとサービスが潰れてしまう」という危機感と、デザインのクオリティを天秤にかけながら進めているような状況です。

 

桐山:今研修では自分のデザインと向き合うことに集中していますが、実際のビジネスの現場ではそこまでスケジュールや数字を意識してデザインしなければいけない、ということに驚きました。

 

鬼石:そうだね。言ってしまえば、角丸かどうかはユーザーには関係がない。でも数字第一でPDCAを回すことはもちろんだけど、クリエイティブの力で+αのワクワクを起こしてやる!という思想で作ることも大事だと思う。そこにクリエイティブの価値があるし、そういった意識を持てるかどうかで、自分の感じるやりがいもデザインのクオリティも変わってくると思うよ。

 

早坂:その姿勢は大事ですよね。そして、自分自身もチームメンバーもそこに気づいて理解してくれるかも重要になってきますよね。だからメンバーへの伝え方も意識するようになりました。例えばエンジニアさんにはデザインを論理的に説明するようにするとか、相手の目線に合わせたプレゼンと擦り合わせをするようにしています。

 

桐山:デザインスキル以外にも、デザイナーが活躍するために重要な能力があるのですね。

 

早坂:そうですね。私は以前“デザイナーは裏の開発リーダーになれ”とアドバイスいただいたことがあります。要となる部分を自分でジャッジして、結果的に良いものが世に出ている状態を作るために開発をリードしていく力をつけろと。

 

鬼石:デザインツールはすごい勢いで進化して、簡単になっていってるからね。ただデザインするだけではなく、デザインスキルを持ったビジネスパーソンになっていかないと生き残れないんじゃないかな。

 

クリエイターが大事にすべきは、逃げずに考え抜くこと

 

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桐山:新卒デザイナーが成長するためのアドバイスをいただけますか?

 

鬼石:とにかくたくさんのフィードバックをもらうことかな。自分と高いクオリティを出せる人との考え方の違いを知って、その差を縮めていくしかない。

 

早坂:私もそう思います。新卒の頃って、最初は人に作品を見せるなんてことはすごく恥ずかしいんですよ。(笑)でもそこはもう場数をこなすしかなくて、どれだけ早くどれだけ多くの人に見てもらうか。とにかくそれを繰り返して乗り越えることですかね。

 

桐山:最後に、ものづくりをしてる上でもっとも大切にしてる信条を教えてください。

 

早坂:クリエイターの仕事って手を動かすことも重要だけど、“考えること”が大切だと思っています。「絶対逃げないで考え抜く」。やっぱり話をしていると、その人がどこまで考え抜いているのかという思考の深さは分かるんですよ。私はまだ経験が浅いからこそ、努力すればできる部分は大切にしたいですね。

 

鬼石:僕は目的を大事にしています。クリエイターって、没頭していると自分の作りたいものを作ってしまいがちなんですよ。だから目的を理解して、自分のアウトプットが目的を果たしているかを常に考えています。僕がそうなりがちなタイプだから、自戒の意味も込めてね。(笑)

 

桐山:ありがとうございます。もうすぐ研修期間が終わるのですが、お二人のアドバイスを活かして最後まで悔いのないよう納得のいくデザインをしていきたいと思います!

 


【クリエイター師弟対談】

▶︎社会人3年目のある日、師匠に言われた「デザインしてくれ」の意味。ークリエイター師弟対談vol.1

▶︎師匠からは見て盗め。教わらずとも成長していく弟子 ー クリエイター師弟対談vol.2

▶︎独り立ち後も、共に戦う“同志”として続く師匠との関係 ー クリエイター師弟対談vol.3